FEBRUARY 2025 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its FEBRUARY 2025 slate of 4K UHD BLU-RAY(5)and BLU-RAY(1)releases. They are: PERFORMANCE(1970)CROSSING DELANCEY(1988)DRUGSTORE COWBOY(1989)CRONOS(1993)PUNCH-DRUNK LOVE(2002)and KING LEAR(1987).

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

やがて衝撃は、陶酔にかわる

2月第1週のクライテリオンは、偉才ポール・トーマス・アンダーソン監督作『パンチドランク・ラブ』(2002)をリリース。1990年代に『ハードエイト』『ブギーナイツ』『マグノリア』と着実に監督としてのキャリアを築いてきた寡作家アンダーソンが、21世紀になって初めて演出を手掛けた作品であり、みごと本作でカンヌ国際映画祭・監督賞に輝いている。

幼少期から7人の無神経で口うるさい姉たちに苛まれ、精神的な猿ぐつわをはめられてきたバリー・イーガン。そんな精神不安定なバリーが、バリーの写真を見て一目惚れしてしまったという女性リナと出会い、神経症という垣根を乗り越えて彼女と心を通わせていく。ふたりの新しい生活が始まるかにみえたが、バリーはテレフォンセックス・サービスの悪党たちの餌食となり・・・。本作は古典的なロマンティック・コメディの表層を持つが、内には機能不全の濁流がうねっており、予測不可能なドラマを展開していく。さらに中核には現代人を悩ませる神経衰弱の源泉があり、バリーはその泥沼に沈み込んでいくことになるのだ。

主演はアダム・サンドラー。人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演した彼を観て以来、サンドラーの虜になったというアンダーソンが、「90分のドラマを作る」という公約のもと、サンドラーとエミリー・ワトソンを念頭に置いて脚本を執筆している。ちなみ『ブギーナイツ』は155分、『マグノリア』に至っては187分の長尺映画であった。

United States \ 2002 \ 95 minutes \ Color \ 2.35:1 \ English

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director Paul Thomas Anderson
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • REMIXED DOLBY ATMOS AUDIO TRACK
  • BLOSSOMS & BLOOD, a short 2002 piece by Anderson featuring Adam Sandler and Emily Watson, along with music by Jon Brion
  • Interview with Brion
  • Program featuring behind-the-scenes footage of a recording session for the film's soundtrack
  • Conversation between curators Michael Connor and Lia Gangitano about the art of Jeremy Blake, used in the film
  • Additional artwork by Blake
  • Cannes Film Festival press conference from 2002
  • NBC News interview from 2000 with David Phillips, the "pudding guy"
  • Twelve Scopitones
  • Deleted scenes
  • Mattress Man commercial
  • Trailers
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by filmmaker, author, and artist Miranda July

Released: FEBRUARY 4, 2025
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY)

ジャック・タチの映画や、ハリウッドのミュージカルにインスピレーションを得ている。『バンド・ワゴン』や『雨に唄えば』といったテクニカラーのミュージカル映画が好きな人なら、バリーのスーツの鮮やかな青色を気に入ってくれるはずだ。タチの映画の奇抜さと古典的なハリウッドの精神を融合させた、アートハウス(非ハリウッド映画や芸術映画、ヨーロッパ映画などの上映館)版アダム・サンドラー映画なんだ。(監督ポール・トーマス・アンダーソン)

今年の2月、SONYピクチャーズ(SPE)からコロンビア映画の代表作を収めたUHD BLU-RAY BOXセット『コロンビア・クラシックス・コレクション:VOL-4』がリリースされたが、本作のUHD BLU-RAYもBOXに所収されている。本盤はSPEから提供された4Kレストア/HDRマスター、リミックス・ドルビーアトモス・サウンドトラック・マスターを使用、新たな特典を含めてブラッシュアップしたものとなる。撮影は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でオスカー撮影賞に輝いたロバート・エルスウィット。パナビジョン・パナフレックス/35mm 富士フイルム/アナモフィック撮影。バリーの脳内化学物質分泌の変動を奏でる音楽は、シンガーソングライターでもあるジョン・ライオン。『ハードエイト』『マグノリア』に続くアンダーソンとのコンビ作となる。サウンドデザイン監修とリレコーディングミキサーを務めたのは『ターミネーター2』『ジュラシック・パーク』『タイタニック』『プライベート・ライアン』で4度のオスカー輝くゲイリー・ライドストロム。

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タイトルパンチドランク・ラブ
2002
監督ポール・トーマス・アンダーソン
製作ジョアン・セラー ポール・トーマス・アンダーソン ダニエル・ルピ
脚本ポール・トーマス・アンダーソン
撮影ロバート・エルスウィット
音楽ジョン・ブライオン
出演アダム・サンドラー エミリー・ワトソン ルイス・ガスマン フィリップ・シーモア・ホフマン メアリー・リン・ライスカ 《声の出演》ジェイソン・アンドリュース ドン・マクマナス

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

快楽の限界。

写真家、画家、ミュージシャンであり、インディーズ系映像作家として高い評価を得ているガス・ヴァン・サントの長編監督第2作『ドラッグストア・カウボーイ』(1989)。リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴス共演のロード・ムービー『マイ・プライベート・アイダホ』、オスカー10部門ノミネートのドラマ『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(助演男優賞/脚本賞受賞)、米コロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件をモチーフに描く衝撃作『エレファント』・・・数々の秀作・傑作を放ってきたヴァン・サントだが、主に疎外されたサブカルチャーがテーマとなっており、それが彼の作品の魅力のひとつになっている。脚本は一級品。俳優たちからも最高の演技を引き出している。

1971年、オレゴン州ポートランド。この街の与太者ボブと妻のダイアン、仲間のボブと少女ナディーンは、職にもつかず、街中の薬局荒らしを日課とする麻薬常習者だ。麻薬に溺れることが職業のような若者たちの暮らしぶりが、ユーモラスかつ怖いくらい克明に綴られていく。麻薬中毒者を美化することなく、麻薬反対を唱えることもない。ヴァン・サントの抒情的な語り口にこれ見よがしのところはなく、それどころか社会の底辺を捉える目は極めて鋭い。

撮影は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『グランド・ブダペスト・ホテル』などウェス・アンダーソン監督とのコンビで知られるロバート・イェーマン。音楽は『ヒート』『フリーダ(オスカー受賞)』のエリオット・ゴールデンサールで、オーケストラを使用しないシンセサイザーの楽曲を楽しめる。サウンドデザイン/音響編集監修はのちに『マトリックス』でオスカーに輝くデイン・デイヴィス。

United States \ 1989 \ 102 minutes \ Color \ 1.85:1 \ English

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director Gus Van Sant and director of photography Robert Yeoman, with uncompressed stereo soundtrack
  • One 4K Blu-ray disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
  • Audio commentary featuring Van Sant and actor Matt Dillon
  • The Making of "Drugstore Cowboy," featuring interviews with Van Sant and members of the cast and crew
  • New interviews with Yeoman and actor Kelly Lynch
  • Deleted scenes
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by author and screenwriter Jon Raymond

Released: FEBRUARY 18, 2025
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY)

原作はジェームズ・フォーグルの自伝的小説。最初にフォーグルの小説をヴァン・サントに紹介したのは、本作の脚本家ダニエル・ヨストである。フォーグルは長年にわたり友人のヨストにいくつかの小説や短編小説を送っていたが、ヨスト自らディライトしたにもかかわらず、その内容によって彼の小説を出版することができなかった。長年の麻薬常用者であり、売人であったことも、出版社が二の足を踏んだ理由でもあった。フォーグルの小説はすべて、75年間の生涯のうちほぼ50年を過ごした刑務所で書かれたもので、2012年に獄中死したときには別の自伝を執筆中だったという。

ジム(フォーグル)は刑務所でたくさんの本を読んでいて、素晴らしいストーリーテラーで、会話も上手だった。しかし、6年生レベル(11ー12歳)の教育しか受けておらず、彼の作品には文法の間違いやスペルミスが溢れていた。私がポートランドの映画監督のためにコメディを書くことになった時、初めてガス・ヴァン・サントと出会い、私がディライトした小説原稿を渡した。映画を作っていた時も、ジムの小説は未出版だった。映画が公開された1989年には、彼は刑務所にいた。映画が認められて、ようやく小説が出版されたのは、ジムが釈放された後の1990年のことだ。彼はバロウズのようなアンチヒーロー、もしくはジム・キャロルのような成功した芸術家になることさえできたはずだった。彼には存在を一新し、ちょっとした有名人としての恩恵を享受する機会があった。しかし、何度も清廉潔白な生活を試みたにもかかわらず、友人や家族の苛立ちにもかかわらず、彼の自己破壊的な性質は残り、その機会は失われた。(脚本家ダニエル・ヨスト)

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タイトルドラッグストア・カウボーイ
1989
監督ガス・ヴァン・サント
製作ニック・ウェクスラー カレン・マーフィ
製作総指揮ケイリー・ブロコウ
脚本ガス・ヴァン・サント ダニエル・ヨスト《原作》ジェームズ・フォーグル
撮影ロバート・イェーマン
音楽エリオット・ゴールデンサール
出演マット・ディロン ケリー・リンチ  ジェームズ・レグロス ジェームズ・レマー ヘザー・グレアム ウィリアム・S・バロウズ ビア・リチャーズ マックス・パーリック ジョン・ケリー グレイス・ザブリスキー

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

劇作家で大学教授でもあるスーザン・サンドラーの戯曲をサンドラー自ら脚色、ロシア系ユダヤ人移民を描いた『ヘスター・ストリート』で高い評価を得たジョーン・ミックリン・シルヴァーが演出を手掛けたニューヨーク派インディーズ映画『デランシー・トリート/恋人たちの街角』(1988)。文学界でのキャリアを志すヒロインに、『キャリー』『愛のイエントル』のエイミー・アーヴィングを迎えて贈るロマンティック・コメディである。80年代の女性監督作品、ニューヨーク派インディーズ映画を語る上でも重要な1本とされている。第46回ゴールデングローブ主演女優賞ノミネート。

撮影は『ボルケーノ』『ブレイド』のテオ・ヴァン・デ・サンデ。音楽は『デス・レース2000年』『プリンス・オブ・シティ』のポール・チハラ。挿入曲はザ・ローチェスによるもので、本作でイザベルの友人マリリンを演じているのはザ・ローチェズのサジー・ロッシュである。音響エンジニアは『クレーマー、クレーマー』『オール・ザット・ジャス』のスタン・ボックナー、『カイロの紫のバラ』『アポロ13(オスカー受賞)』のリック・ディオール。

United States \ 1988 \ 97 minutes \ Color \ 1.85:1 \ English

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by cinematographer Theo van de Sande, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • New program on the making of the film featuring actors Amy Irving and Peter Riegert and screenwriter Susan Sandler
  • Audio interview from 1988 with director Joan Micklin Silver
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by critic Rachel Syme

Released: FEBRUARY 18, 2025
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY)

マンハッタンで暮らすイザベル(アーヴィング)は33歳のシングル・ウーマン。独立系の人気書店での仕事も充実しており、書店に朗読会に来たオランダ系アメリカ人作家のアントン(ジェローン・クラッベ)との仲も進行中。そんなイザベルの生き方に気を揉んでいるのが、マンハッタンのローワー・イースト・サイドで暮らすロシア系ユダヤ人移民の祖母バビー(レイズル・ボジック)で、孫娘がまともで正真正銘のユダヤ教徒の男性と落ち着くことを切望していた。バビーは結婚仲介人ハンナ(シルヴィア・マイルズ)を雇い、すぐにイザベルを温厚なピクルス売りのサム(ピーター・リーガート)と引き合わせる。だがイザベルは、ローワー・イースト・サイドで働くサムとでは自分の望むような生活は送れないと、彼を見下すような態度を取ってしまい・・・。

ローワー・イースト・サイドは21世紀に入ってから高級化が進んだ地区であるが、ニューヨーク市の中でも歴史が古く、(本作の舞台となる年代を含めて)長らくは低所得労働者階級の住むエリアであった。アイルランド人、イタリア人、ポーランド人、ウクライナ人など多様な民族がこの地区に住み着き、ことにユダヤ人文化を色濃く残している。

当時のインタビューで「1970年代の初めは、女性の映画製作参入に対する障壁が非常に高く、監督の仕事を得る見込みはまったくなかった。80年代になっても、少しマシになっただけ」とシルヴァーが振り返ったように、80年代後半製作の本作でもワーナーの幹部が注文をつけ、一時プロジェクトは暗礁に乗りかけている。「ローワー・イースト・サイドのルーツ」を主人公が隠そうとする展開が「民族的」すぎるというものだったが、最終的に(当時アーヴィングと結婚していた)スティーヴン・スピルバーグが介入してプロジェクトを支援、無事に映画が完成、公開されたいう経緯がある。

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タイトルデランシー・ストリート/恋人たちの街角
1988
監督ジョーン・ミックリン・シルヴァー
製作マイケル・ノジック
製作総指揮ラファエル・D・シルヴァー
脚本スーザン・サンドラー《原作戯曲》スーザン・サンドラー
撮影テオ・ヴァン・デ・サンデ
音楽ポール・チハラ
出演エイミー・アーヴィング ピーター・リーガート ジェローン・クラッベ ローズマリー・ハリス レイズル・ボジック シルヴィア・マイルズ サジー・ロシェ ジョージ・マーティン ジョン・ベッドフォード・ロイド クラウディア・シルヴァー エイミー・ライト キャスリーン・ウィルホイト

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

存在してはならなかった。

ご存じギレルモ・デル・トロが監督・脚本による初の長編監督作品『クロノス』(1992)。1936年、ひとりの錬金術師によって作り出された、クロノスと呼ばれる金色の奇妙なスカラベ。それは持ち主に永遠の命を与えるという、謎めいた精密機械であった。そして現代。骨董品商のヘススは、店の天使像の中に隠されたクロノスを発見。だが誤って装置を起動させてしまい、昆虫のような脚が広がり、長い針が手に食い込んだ。機械の中には内部の仕掛けと絡み合っている寄生虫が潜んでおり、彼の血液を濾過したのであった。その日からヘススの様子が変貌、次第に若返っていく自分に気づくが、同時に血への渇望も抱くようになる。一方、長年クロノスを探していた病床の大富豪デ・ラ・グァルディアは、甥のアンヘルからクロノス発見の報せを受ける。

United States \ 1993 \ 93 minutes \ Color \ 1.85:1 \ English

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director Guillermo del Toro, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Optional original Spanish-language voice-over introduction
  • Two audio commentaries, one featuring del Toro, the other producers Arthur H. Gorson and Bertha Navarro and coproducer Alejandro Springall
  • Geometria, an unreleased 1987 short horror film by del Toro, finished in 2010, alongside an interview with the director
  • Welcome to Bleak House, a tour by del Toro of his home office, featuring his personal collections
  • Interviews with del Toro, cinematographer Guillermo Navarro, and actors Ron Perlman and Federico Luppi
  • Stills gallery captioned by del Toro
  • Trailer
  • PLUS: An essay by film critic Maitland McDonagh and excerpts from del Toro's notes for the film

Released: FEBRUARY 25, 2025
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY)

40年前、いまではオスカー受賞監督となったデル・トロは、まだ道の始まりにいた。ディック・スミスのもとで特殊メイクアップや特殊効果を学び、10年近くメキシコ映画業界でSFXメイクアップ・デザイナーとして働いていた彼は、1980年代後半にトカゲ人間を描いたストップモーションSF『オムニボア(原題)』のプロジェクトを立ち上げた。3年間をかけて美術セットと約100体の人形を製作。だが深夜に暴漢たちがスタジオへ侵入、すべてを破壊されてしまう。そこでプロジェクトをストップモーション映画から実写作品へとシフトし、長年デル・トロが温めていたプロジェクトのひとつであった本作を監督することになった。この映画の予算は当初の150万ドルから200万ドルにまで超過(当時のメキシコ映画としては大作級の予算)。デル・トロ自らローンや銀行からの借り入れで50万ドルを調達してやりくりし、出演者のロン・パールマンも大幅な給与カットに同意している。

1992年に完成した本作は、1993年のカンヌ映画祭批評家週間でグランプリを受賞。批評家からも高く評価され、評論家のロジャー・エバートは「古典的なホラー映画と、カラフルなラテンマジックリアリズムを組み合わせた傑作」と称賛している。本国メキシコではアリエル賞(メキシコ版アカデミー賞)で9つの賞を獲得、デル・トロは国際的な注目を集めることになった。本作でデル・トロと初めてコンビを組んだ撮影監督ギレルモ・ナヴァロは、その後も『デビルズ・バックボーン』『ヘルボーイ』などの作品に参加。2006年の『パンズ・ラビリンス』でみごとオスカーに輝いている。

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タイトルクロノス
1992
監督ギレルモ・デル・トロ
製作ベルサ・ナヴァロ アーサー・H・ゴーソン
脚本ギレルモ・デル・トロ
撮影ギレルモ・ナヴァロ
音楽ハビエル・アルバレス
出演フェデリコ・ルッピ ロン・パールマン タマラ・サナス クラウディオ・ブルック マルガリータ・イサベル ダニエル・ヒメネス・カチョ

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

1960 年代後半、ロンドンの犯罪組織とロックンロールのカウンターカルチャーが弾けるとき

撮影監督出身で『赤い影』『地球に落ちて来た男』などの作品で知られるニコラス・ローグが、『太陽を盗め(脚本)』『デモン・シード』のドナルド・キャメルと共同監督した『パフォーマンス』(1970)が登場。ローグの初監督作品であり、撮影監督も兼任している。ロンドンの犯罪組織に雇われている凶暴な小悪党チャス(ジェームズ・フォックス)は、組織のボスであるハリーの言いつけに背き、賭博店の経営者を殺めてしまう。殺人事件の面倒に巻き込まれることを嫌ったハリーは、チャスが警察に捕まる前に始末するよう手下に命令する。組織から追われる身となったチャスは、耳寄りな情報をもとにノッティング・ヒルにある邸宅に逃げ込んだ。だがそこには引退したロック・スタアで家主のターナー(ミック・ジャガー)が、ふたりのガールフレンド(ミシェル・ブレトン、そしてアニタ・パレンバーグ!)に囲まれながら背徳的な暮らしを送っていた。はじめは互いに警戒していたチャスとターナーであったが、自分とは正反対の魅力に抗えず、次第に惹かれ合っていく・・・。

United States \ 1970 \ 105 minutes \ Color \ 1.85:1 \ English

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, approved by producer Sandy Lieberson, with uncompressed monaural original-UK-version soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Donald Cammell: The Ultimate Performance (1998), a documentary by Kevin Macdonald and Chris Rodley
  • Influence and Controversy: Making "Performance" (2007), a documentary about the making of the film
  • The True Story of David Litvinoff, a new visual essay by Keiron Pim, biographer of dialogue coach and technical adviser David Litvinoff
  • Performers on "Performance," a documentary featuring actors James Fox, Mick Jagger, Anita Pallenberg, and others
  • The Two Cockneys of Harry Flowers, a program on the dialogue overdubbing done for the U.S. version of the film
  • Memo from Turner, a program featuring behind-the-scenes footage
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by film critic Ryan Gilbey and a 1995 article by filmmaker and scholar Peter Wollen

Released: FEBRUARY 25, 2025
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY)

当初ドナルド・キャメルは 60年代初頭を舞台にした陽気な乱痴気映画の脚本を書き上げていた。チェス役にキャメルの友人であったマーロン・ブランドが内定すると、ロンドンに潜伏するアメリカ人ギャングのドラマに書き直されが、ブランドが降板してジェームズ・フォックスがチャス役に決定したあたりから、ストーリーは著しく暗い内容になっていったという。1968年に映画は完成したものの、反社会的で性的な内容と残酷な暴力描写によって配給のワーナーが消極的となり、劇場公開が見送られた。さらに試写会で観客のほとんどが途中退場するという反応が拍車をかけ、2年以上公開が延期されている間に幾度も再編集されている。

1970年公開当初、予想されたように批評家の反応は賛否両論に分かれたが、1970年代後半から1980年代にかけてレイトショーやレパートリー映画館で徐々にカルト的な人気を獲得、1990年代までには批評家から再評価されている。1996年にキャメルが他界した後、この映画の評価はさらに高まり、現在では1970年代のもっとも影響力があり革新的な映画のひとつとされている。また1999年、英国映画協会(BFI)が「20世紀最高の英国映画」の48位に選抜している。当初はローリング・ストーンズがサウンドトラックを作曲する予定だったが、残念ながら実現に至っていない。

本作は米国吹替え版を含め、異なる編集版が世界中で上映されている。1997年、ロンドンの現代美術研究所(ICA)の催しでUKオリジナルノーカット版が上映され、2003年にはBFIがニュープリント製作に資金を出している。2022年になると本格的な修復復元作業が始まり、本盤は本作のプロデューサー、サンフォード・リーバソンが承認した最新4Kデジタルレストア/HDRグレード版となる。

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タイトルパフォーマンス
1970
監督ドナルド・キャメル ニコラス・ローグ
製作サンフォード・リーバソン
脚本ドナルド・キャメル
撮影ニコラス・ローグ
音楽ジャック・ニッチェ
出演ジェームズ・フォックス ミック・ジャガー アニタ・パレンバーグ ミシェル・ブレトン アン・シドニー ジョン・ビンドン スタンリー・メドウズ アラン・カスバートソン

BLU-RAY RELEASE
BLU-RAY SPECIAL EDITION

ジャン=リュック・ゴダールの初の英語劇映画『ゴダールのリア王』(1987)。『リア王』という冠はついているが、本作では戯曲の一部の台詞が使用されているものの、シェイクスピアの同名悲劇の映画化ではない。シェイクスピア戯曲を再現というよりも、むしろテキストが提起する問題に関心を寄せており、権力と美徳、父と娘、言葉とイメージの関係を象徴的に探求しているのだ。映画鑑賞における従来のハリウッド映画製作技術を意図的に使用せず、劇作家ベルトルト・ブレヒトの演出のように観客を遠ざけ困惑させようとする実験映画でもある。製作はかのキャノン・グループを築き上げたメナヘム・ゴーランと ヨーラン・グローバスのコンビ。

本作の舞台は、小学校時代にゴダールが暮らしたスイスのヴォー州ニヨンとその周辺。舞台設定はチェルノブイリの大惨事によって人類の文明、ことに文化のほとんどが失われた世界で、先祖の戯曲を復元しようとするウィリアム・シェイクスピア五世のエピソードが軸となる。若き作家シェイクスピア五世(ピーター・セラース)は、偉大なる先祖の名作悲劇「リア王」再発掘のため旅に出た。そんなる日、彼はジュネーブ湖畔で若く美しい少女コーデリア(モリー・リングウォルド)と、その父でマフィアのボスのドン・レアロ(バージェス・メレディス)と出会う。シェイクスピア五世は彼らを、リア王とその娘コーデリアのモデルに物語を書こうと、ふたりの視察を始めるが・・・。

United States, France \ 1987 \ 90 minutes \ Color \ 1.37:1

BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 2K DIGITAL RESTORATION, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • Audio recording of the 1987 Cannes Film Festival press conference, featuring director Jean-Luc Godard
  • New interviews with Richard Brody, author of Everything Is Cinema: The Working Life of Jean-Luc Godard; actor Molly Ringwald; and actor and coscreenwriter Peter Sellars
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by Brody

Released: FEBRUARY 11, 2025
List Price: $39.95 USD(BLU-RAY)

ヌーヴェル・ヴァーグの映像作家の中でも、とびきり過激で、政治的だったゴダール。72年監督作『万事快調』の撮影中に出会ったアンヌ=マリー・ミエヴィルとの3度目の結婚を機に、70年代を通じてゴダールはミエヴィルと組み、新しい映像の可能性を模索するようになった。一時期テレビの世界に活躍の場を移すが、79年『勝手に逃げろ/人生』より劇映画に復帰。以後ほぼ毎年、作品を発表するようになるが、80年代以降は政治的見解を越えて物語の表現方法を追求するようになる。物語の理論性は解体され、モザイクのように散りばめられた映像とサウンド。本作は『カルメンという名の女』『ゴダールのマリア』『右側に気をつけろなど問題作・異色作を輩出した、80年代のゴダール・フィルモグラフィを語る上で重要な作品となっている。

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タイトルゴダールのリア王
1987
監督ジャン=リュック・ゴダール
製作メナハム・ゴーラン ヨーラン・グローバス
製作総指揮ジャン=リュック・ゴダール
脚本ノーマン・メイラー ジャン=リュック・ゴダール ピーター・セラーズ リチャード・デビュイネ
撮影ソフィー・マンティニュー
出演ジャン=リュック・ゴダール ウディ・アレン レオス・カラックス ノーマン・メイラー フレディ・ビュアシュ ピーター・セラース バージェス・メレディス モリー・リングウォルド ジュリー・デルピー スザンヌ・ランザ ミシェル・ペティン

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