Shiftall(シフトール)とパナソニックは、新型VRヘッドセット「MeganeX superlight 8K/SVP-VGC3B」(¥249,900、税込、予約受付開始、3年保証)の発表会を開催した。片目ごとに4K解像度を持つパネルを搭載し、同社の従来モデルを大きく下回る軽さを実現した製品となっている。

 冒頭、Shiftall 代表取締役CEOの岩佐琢磨さんが登壇し、新製品開発の狙いとその特徴について解説してくれた。そこには、自らバーチャル世界を毎日楽しんでいるという岩佐さんらしい切り口が盛り込まれている。

 岩佐さんによると、VR環境は進化を続けており、それを受けてヘッドセットも用途別に最適化していくと予測しているそうだ。大手ブランドでは汎用機をリリースしているが、それ以外の製品ではどういった用途に向けて作ったかが重要になるわけだ。

 具体的には、VRでフィットネスを楽しみたいユーザーとVR SNSに浸りたいユーザーでは、ゴーグルに求める要素が大きく違う。それらをきちんと踏まえて、開発者が意志を持って作らないと、本当にいいヘッドセットにはできないという考えだ。

 今回のMeganeX superlight 8Kは、VR Chat/VR SNSに向けた最高のヘッドセットというコンセプトで開発している。そもそもVR Chatのユーザーは使用時間が圧倒的に長く、1日10時間くらいは普通にゴーグルを装着しているそうだ。そういったユーザーのために、MeganeX superlight 8Kは以下のような点に配慮している。

●水平3552✕垂直3840画素の1.35インチMicro OLEDを搭載
●185g未満の軽さを実現(バッテリーも内蔵しない)
●本体の厚さを1円玉2枚ほどに抑え、良好な重量バランスを獲得
●10ビット/HDR/90Hz駆動対応で、コントラストに優れる映像
●新規開発のパンケーキレンズ
●周辺確認用には、本体のフリップアップ機能で対応
●持続時間に配慮して、無線対応ではなく有線接続(Display Port)を選択
●有線伝送で映像圧縮率を低く抑える
●58mm〜72mmの電動式IPD(瞳孔間距離)やピント調整を内蔵
●柔らかいクッションパッドを額で保持し、装着時の負担が少ない「顔圧ほぼゼロ」設計
●側頭部や後頭部にはプラスチックや金属などの硬い部品がないため、寝転がって使っても痛くない

 なおMeganeXシリーズについては2021年からShiftallとパナソニックが共同開発を手掛けており、その点については2年前に麻倉怜士さんの連載「いいもの研究所」で紹介している。おおまかには、ハードウェア面をパナソニックが、操作性やソフトウェア関連をShiftallが担当したようだ。製品自体は共通だが、販売ルートについてはB to CをShiftallが、B to Bはパナソニックが担当するという。

 パナソニック システムネットワークス開発研究所 事業開発推進部 XR総括の小塚雅之さんによると、MeganeX superlight 8Kの開発についてパナソニック側(B to B用途)では以下のような点に留意したという。

●既にVRを使っている人に向けて、問題点を解決する
●他社を含めてVRゴーグルは、業務用としては重たい、疲れるなどのフィードバックもあるので、ここを解決する
●MeganeXから解像度と色域を大幅に改善
●コントラストも重視した、モニターに近い画作りで、VRでも素材も色も確認可能に
●長時間利用に耐えられ、動いてもズレにくい装着性
●顔の形が違う人たちが装着しても遮光でき、顔が圧迫されない
●イヤフォン・ヘッドフォンなどを接続できるUSB Type-C拡張ポートを装備

 これらの点を踏まえて仕上げられたたMeganeX superlight 8Kは、ある意味ではっきりした割り切りを持った製品でもあり、こういったモデルを求めていたユーザーも多いのかもしれない。

 ではその装着感や映像はどうなのか? 発表会場でMeganeX superlight 8K のVR映像を体験させてもらった。まず驚いたのが、その軽さだ。さらに装着用バンドで後頭部を締め付けられることもないので、コンテンツへの集中度も高まる。

 風景を撮影したコンテンツでは、緻密な解像感と自然なコントラスト再現が楽しめた。これまでのVRグラスは解像感が高い一方で、色やコントラストが強調されて長時間見ていると疲れてしまうこともあったが、MeganeX superlight 8Kではそんな心配もなさそうだ。

 展望台からの俯瞰映像でも、遠くの空や森まで見渡せ、さらに足元を見ると崖っぷちに立っていることが分かって、背筋がぞっとした。他にも磨崖仏の岩肌のディテイルや、立て看板の細かい文字なども目をこらさなくても判別できる。看板のエッジや文字の輪郭も綺麗で、レンズの収差に伴う色ズレなども気にならなかった。森の中の描写でもコントラスト感に優れた映像が再現できている。

 VRゴーグルは様々な応用が始まっており、B to C、B to Bの両方で成長してくのは間違いないだろう。ただし、映像観賞用としては解像感、コントラスト、色再現などで今一歩という印象があったのも事実だ。新製品のMeganeX superlight 8Kはそれらの点でも長足の進歩を遂げているのは確かで、VRゴーグルのさらなる可能性を期待させてくれる製品に仕上がっている。(取材・文:泉 哲也)