4K UHD BLU-RAY REVIEW:MATINEE


タイトルマチネー/土曜の午後はキッスで始まる
1993
監督ジョー・ダンテ
製作マイケル・フィネル
製作総指揮N/A
脚本チャーリー・ハース
撮影ジョン・ホラ
音楽ジェリー・ゴールドスミス
出演ジョン・グッドマン キャシー・モリアーティ サイモン・フェントン オムリ・カッツ ケリー・マーティン リサ・ジャクブ ロバート・ピカード ジェームズ・ヴィルマイア ディック・ミラー ジョン・セイルズ ベリンダ・バラスキー ケヴィン・マッカーシー ナオミ・ワッツ ジェシー・リー ルーシー・バトラー

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映画館、デートのまっ最中の僕らの元に突如、核ミサイルが打ち込まれた・・・。
そ、そ、そんな馬鹿な!?
「映画館を舞台にした映画に失敗作はない」と言われるが、本作も愛すべき佳篇に仕上がっている。1962年、キューバ危機が高まるフロリダ半島キー・ウエスト。核戦争が始まるかもしれないというウワサが流れて町中が緊張する時でも、大好きなホラー映画の新作を観るため土曜のマチネー(昼間の興行)に集まってくるティーンエイジャーたち。そんな彼らの、みずみずしい青春物語が綴られていく。コメディ、ロマンス、サスペンス、ホラー、ミュージックといった映画ジャンルを踏襲しつつ、映画界が活況を呈していた当時の活気やムードを余すところなく捉えた作品となっている。

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監督は『ハウリング』『グレムリン』のジョー・ダンテ。ダンテ監督作品の多くと同様に、本作は深刻なテーマを扱った映画だ。だが決して真面目さやシリアスなムードを強要することはない。陽気な愛情にあふれ、テンポも小気味よく、あからさまな道徳的説教など無縁だ。また、時代背景も細部まで緻密に描き込まれている。1962年当時、ダンテは本作の主人公の少年とほぼ同じ年齢で、同じモノに同じように夢中になっていた。ここに描かれる時間と場所の鮮明な感触は、ダンテ個人の記憶や体験に起因しており、それが観客の、時代を超越した普遍的な感動や共感を呼び起こすのである。

出演は『バートン・フィンク』『夢を生きた男/ザ・ベーブ』のジョン・グッドマン、『レイジング・ブル』『マンボ・キングス/わが心のマリア』のキャシー・モリアーティ。劇中映画『暴走ショッピングカート』のヒロインを演じるのは、新人時代のナオミ・ワッツ。

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この映画は、映画館に行くことが楽しかった時代への賛歌だ。あの頃が懐かしい。いまの子どもたちが、私たちが経験したような体験をしていないのは残念だ。私にとって映画館に行くことは教会に行くようなもの。昔はアニメやニュース映画など、映画館にはたくさんのものがあった。いまはコマーシャルと予告編しかない。(ジョー・ダンテ)

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撮影監督は『ハウリング』以降のダンテ監督作や『ムーンウォーカー』『ジャイアント・ベビー』で知られるジョン・ホラ。ムービーカム・コンパクト/35mm球面レンズ/1.37:1撮影。上映はソフトマット(上映フィルムのプリントの際に上下にマスクをかける)1.85:1ビスタサイズ。劇中劇『暴走ショッピングカート』はパナビジョン・パナフレックス/35mmアナモフィック撮影。35mmオリジナルカメラネガを初めて採用した4Kデジタルレストア/HDRグレード版。HDRはHDR10とドルビービジョンHDRをサポート。監修・最終承認を監督ダンテ自ら行っている。映像平均転送レートは 76.5Mbps(うちドルビービジョン 5.7Mbps)を記録。ピーク輝度 917nit、平均 558nit。

2018 SHOUT FACTORY BLU-RAY

2024 SHOUT FACTORY 4K UHD BLU-RAY

これまでUKアロー・ビデオが2016年に、そして米シャウト・ファクトリーが2018年にブルーレイディスクをリリースしているが、ユニバーサルから提供された35mmインターポジからのレストア2Kマスターを共有。いずれも解像感と鮮明度に物足りなさがあり、輪郭補正の弊害も散見されていた。本盤ではこれまでのアーティファクトが抑制され、規律正しい粒子の層によるフィルムルックな味わいが全編を支配、家庭で鑑賞できる最高の画質に復元している。2016年版/2018年版との比較では、コントラストと色域の拡張が明快で、HDR効果の恩恵は誰の目にも明らかだ。

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HDR10 とドルビービジョンのいずれも、ハイライトから暗部陰影までのより広いコントラストバランスと、BD版に比べてより自然なカラーパレットを提供している。スペキュラー(鏡面)ハイライトには力感があり、黒も強靭で深い。とくに屋外のデイライトショットは観応えあり。ダンテ作品ではワイドショットが多用されるが、見晴らしもよく、解像感も優秀。光学処理ショットや低照度ショットでは幾分解像感が低下するものの、多様なレンズによる被写界深度の描き分け、前・中・後景の遠近描画も良好だ。個人的に注目したのは色彩の強化で、原色は力感があり、二次色や暗色の表現力も揺るぎない。なかでもさまざまな赤の色合い、その鮮やかな発色が目を奪う。

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音響エンジニアは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『DUNE/デューン 砂の惑星』でオスカー受賞のマーク・マンジーニ(サウンドデザイン/音響編集監修)『ダイ・ハード3』『ダンテズ・ピーク』のジョージ・シンプソン(音響編集監修)リレコーディングミキサーは『大統領の陰謀』『バード』でオスカーに輝くリック・アレクサンダー『バック・トゥ・ザ・フューチャーPARTⅡ』『デイ・アフター・トゥモロー』のジェームズ・ボルト(同)『ライオン・キング』『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』のアンディ・ダッダリーロ(同)。サウンドは2018年シャウトBDからリユースされた5.1トラックとオリジナル2.0トラックを収録。そして注目は新たにリミックスされたドルビーアトモス・サウンドトラックにある(音声平均転送レートは最下欄に記載)。

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オリジナルはドルビーSR録音(L・C・R・サラウンド/4チャンネル)。その後ホームリリース用に5.1リミックスされている。その5.1と2.0トラックについてだが、いずれも優れたディテイルを持つ中音域、とくに歯切れよく明瞭度の高い発声が特徴だ。5.1トラックは派手でアグレッシヴなマルチチャンネル・パフォーマンスではないものの、シークエンスの大小にかかわらず明確なサラウンド効果を聴取でき、エッジも効いている。映画のムードを高める低音域の活用が頻繁にあり、劇中の映画体感システム「ランブル・ラマ」が活躍するクライマックスのLFEエンハンスはもちろん、ご機嫌なジェリー・ゴールドスミスのスコアにも余裕をもたらしている。2.0トラックも優秀な出来栄え。映画のレトロなスタイルをよりよく反映しており、オリジナル重視派も満足できるはずだ。

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ドルビー アトモスは5.1トラックのサウンドスケープから逸脱することなく、適所で歓迎すべきオーバーヘッド効果を披露。没入感のあるレイヤーを追加したことで、サウンドステージを程よく拡張しており、まったく違和感のない、説得力のある360°ハーフドーム音場空間を楽しむことができよう。レーザーディスクの時代から、ジョー・ダンテ作品は魅力的なサウンド・パフォーマンスを披露してきたが、まさかまさかのドルビーアトモスでリミックスである。必聴。

UHD PICTURE - 4.5/5  SOUND - 4.5/5

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映像平均転送レート 76467 kbps(HDR10)| 5722 kbps(DOLBY VISION 6.96%)
音声平均転送レート 4538 kbps(Dolby Atmos | 48kHz | 24bit)
          3892 kbps(DTS-HD Master Audio 5.1 | 48kHz | 24bit)
          2002 kbps(DTS-HD Master Audio 2.0 | 48kHz | 24bit)

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