11月のクライテリオン『七人の侍 4K』『ゴジラ 4K』『ペーパー･ムーン 4K』ほか【海外盤Blu-ray発売情報】

NOVEMBER 2024 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its NOVEMBER 2024 slate of 4K UHD BLU-RAY（6）releases. They are: SCARFACE（1932）SEVEN SAMURAI（1954）GODZILLA（1954）FUNNY GIRL（1968）PAPER MOON（1973）and THE SHAPE OF WATER（2017）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

11月のリリース･タイトルは和洋折衷で贈る充実のラインナップ。まず先陣を切って登場するのが、日本映画が生んだ最大のスタア主演『ゴジラ』（1954）である。国内版UHD BLU-RAYは昨年10月にリリースされているが、果たしてそのクオリティは･･･と気になる向きも多かろう（これは『七人の侍』の項で後述する）。ご存じのように本作は、日本映画初の怪獣映画である。公開された1954年を振り返ると、戦後の映画をリードするふたり、木下惠介が『女の園』『二十四の瞳』、黒澤明が『七人の侍』を監督している。また溝口健二も『山椒大夫』『噂の女』『近松物語』を、成瀬巳喜男は『山の音』『晩菊』、稲垣浩は『宮本武蔵』を残している。こうした優れた作品が並ぶなか、『ゴジラ』は荒唐無稽のレッテルを貼られる運命を背負って公開されたのである。たとえ原水爆に対する恐怖、行き過ぎた文明に対する警鐘といったテーマを内包していたとしてもだ。

だが蓋を開けてみると、1954年日本映画興行成績の8位にランクされるヒットを記録した。監督は本多猪四郎。監督としては、山本嘉次郎門下で同期の黒澤や谷口千吉に先を越されていたが、本作のヒットで一線級の監督として名乗りを上げることになった。作品の要となる特撮監督を円谷英二が務めており、本作の成功の一因が精巧な円谷特撮にあったことは誰もが認めるところだ。さらに本作の世界に観客を引き摺り込むには、視覚だけではなく、聴覚からも訴えかける必要があり、目と耳を同時に虜にする必要があった。その任を託されたのが伊福部昭であり、期待に見事に応えてみせた。伊福部曰く「怪獣映画の音楽は、観念的な誤った芸術論に悩まされず、作劇術に支配されすぎることなく、音楽の自立性の喪失が回避でき、効果を万全に利用できる」という。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 5, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

黒澤作品の中でも最高傑作の呼び声が高く、「クロサワ」の名を世界に轟かせた大傑作『七人の侍』（1954）の登場である。前作『生きる』以来、2年ぶりの作品であり、『生きる』が人間の生と死をテーマにした現代劇だったのに対し、一転してダイナミックなアクションが展開される。「いままでになかった壮大な活劇を作る」という意図のもと、当時の製作費としては破格の2億1000万円、約1年の撮影期間を費やして、空前のアクション時代劇を生み出した。

野盗に襲われている貧しい村が、防衛のために侍を雇うことにする。報酬は米を腹いっぱい食わせること。そんな条件で手助けする侍は見つからなかったが、勘兵衛という剃髪の侍を拝み倒してようやく雇うことができた。それからは勘兵衛の魅力に惹かれて、ひとり、またひとりと6人の男たちが集まってくる･･･。貧しい村に雇われた侍たちが野盗と戦うというのが大筋だが、それまでの時代劇にない集団の戦いが繰り広げられる。登場人物の性格描写も秀逸で、人間的魅力にあふれたリーダーの勘兵衛以下、いずれも魅力的である。

海外でも国内と同様に高い評価を受け、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。ご存じのようにジョン･スタージェス監督作『荒野の七人』は、本作をリメイクした西部劇だが、1960年代の西部劇スタイルを変えた作品としても知られている。ここには正義のガンマン･ヒーローはいない。個性豊かなガンマンではあるが、勘兵衛の「歳でな」という言葉に集約されるような、時代に取り残された男たちだ。農民が自衛のために侍を雇うというズバ抜けた発想は、『荒野の七人』では舞台をアメリカではなく、革命の地メキシコに設定することで（オリジナルとは違った）絶妙な効果を上げている。

以前、クライテリオンのテクニカル･ディレクター、リー･クライン氏と対談した時、彼は「他のレーベルと重複した作品をリリースするならば、特に後からリリースするならば、より良いクオリティでリリースしなくてはならない」と語っていたが、本作ではどのような映像とサウンドのアップグレードを行ったのだろうか。特典映像も含めて期待したいところだ。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 12, 2024
List Price: $59.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 3-DISC SET）$49.95 USD（BLU-RAY 2-DISC SET）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

1930年代初頭のハリウッドで始まったギャング映画ブームは、1932年製作の『暗黒街の顔役』で一段と盛り上がった。禁酒法が制定された1920年代（1920年 - 1933年）。巷では法律破りの密造･密輸がまかり通り、その流通ルートを握った暗黒街のボスは大儲け。一方では仲間内での利権争いが激化、血で血を洗う抗争が頻発した。なんともスリリングでドラマティック。ハリウッドがコレを見逃すはずもなかろう。同時にダーティなギャングが主役となった映画がブームとなった背景には、不況に喘ぐ観客たちが刹那的な刺激を求めていたこともあろう。

プロデューサーのハワード･ヒューズは、かの大物アル･カポネをモデルにした映画を製作しようと、アーミテージ･トレイル（モーリス･R･クーンズのペンネーム／1930年出版）の犯罪小説の映画化権を獲得する。共同製作と監督として迎えられたハワード･ホークスは、劇作家のベン･ヘクト（ハリウッドとブロードウェイを代表するもっとも偉大な脚本家のひとりとして知られる）に脚色を依頼。ホークスとヘクトは、カポネにまつわる物語を悪政や悪行で名高い中世イタリアのボルジア家を重ね合わせることで、刺激的で迫真の脚本に仕上げたのである。

犯罪者必罰のハリウッドではあったが、ヒューズは「スタジオの意向なんて忘れちまえ」とホークスを激励。「早く撮影を始めて、生々しくて刺激的な映画に仕上げろ」というわけだ。ホークスは主人公のトニー･カモンテに舞台俳優ポール･ムニを起用してヒューズの期待に応え、包囲した警察隊を相手にマシンガンを乱射するクライマックスの壮絶さは語り草となった。そして92年経った今も、本作の大胆かつ挑発的でシニカルな暴力性はスクリーンを熱くしている。本作は1983年にブライアン･デ･パルマが、コテコテに華美な演出でリメイク、90年代ギャングスタ映画に先鞭をつけている。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 12, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

1968年。カウンター･カルチャーの時代を反映したさまざまな映画が登場した年であったが、同年度の第41回アカデミー賞で作品・監督・主演女優賞を獲得したのはいずれもミュージカル映画であった。作品賞と監督賞を受賞したのは『オリバー！』であったが、名匠ウィリアム･ワイラーが監督した『ファニー･ガール』もオスカー作品賞ほか6部門にノミネートされている。本作は20年代に一世風靡した舞台女優ファニー･ブライスの半生を描いたもので、舞台に続いてヒロインを演じたバーブラ･ストライサンドが主演女優賞を受賞している。バーブラは本作が映画デビュー作ながら、『冬のライオン』のキャサリン･ヘプバーンと同点の票を集め、主演女優賞を分け合った。同年9月に公開された本作はロングランヒットとなり、1969年全米興行成績2位を記録している。

スタアを夢見るしがない踊り子のファニーは、舞台ではやることなすことから回りで大失敗ばかり。ところがそれが人気を呼び、劇場主ジークフェルドの目に留まってスカウトされる･･･。舞台同様にバーブラが圧倒的な演技と歌唱を披露。その姿を切り撮ったのは、『ドリアン･グレイの肖像』『マイ･フェア･レディ』の撮影でオスカーに輝くハリー･ストラドリング。『欲望という名の電車』『愛情物語』などオスカー･ノミネートの常連で、本作でも撮影賞にノミネートされており、躍動感あふれるスコープ映像は必見。（個人ではなく）オスカー･ノミネートされたサウンドは、C.S.S.D（Columbia Studio Sound Department）によるもの。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 19, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

先述の『暗黒街の顔役』が銀幕を賑わせていた、1930年代アメリカ大恐慌の時代。聖書を売って旅する詐欺師モーゼは、亡くなった知り合いの娘アディと出会う。彼女の唯一の親族の家まで送り届けるために、モーゼとアディはカンザス州ゴーラムからミズーリ州セントジョセフまで旅することに。道中、モーゼは海千山千のアディに何度も助けられ、良き相棒となる。71年の名作『ラスト･ショー』でオスカーにノミネートされた監督ピーター･ボグダノヴィッチが贈る『ペーパー･ムーン』（1973）は、30年代のノスタルジックな風景の中で心温まる喧嘩旅を描いた愛すべき作品だ。ノスタルジックと言っても、時代背景や中西部という設定は、登場人物を理解するために必要な背景としてのみ利用されており、古典映画の映画製作スタイルやジャンル映画へのオマージュやパロディではない。コメディとドラマを巧みに融合させた作品であり、ボグダノヴィッチによるストーリーテリングのテクニックがいかに洗練されていたかを示し、何年経っても見返したくなる宝物となっている。

主演はライアン･オニール。共演は実の娘のテイタム･オニール。テイタム演じるアディは、決して本心を露わにしない女の子。意固地で、喧嘩っ早く、金にはトコトンがめつい。レジ係にお釣りがないと詰め寄ったかと思えば、嘘ナミダで同情を買う。一方でモーゼを誘惑する女には、目にモノを言わせるたりするのだ。役柄でも、演技でも9歳のテータムが完全に父親ライアンを喰っており、オスカー助演女優賞を受賞して受賞最年少記録を塗り替えたこともナットクがいく。

撮影は『イージー･ライダー』『ニューヨーク･ニューヨーク』のラズロ･コヴァックス。ジョン･フォードとオーソン･ウェルズの映画の敬愛するボグダノヴィッチは、コヴァックスとともに広角レンズと高感度フィルムを使ったディープフォーカス撮影にこだわりを見せている。ディープフォーカス撮影は編集の必要性を減少させるとともに、時間と空間の結合性を高める技術である。同時にひとつのシーンの客観性を維持することも可能だ。

さらにコヴァックスは赤色フィルターを使用。赤色フィルターは、文字通り赤や赤系色（オレンジやら赤紫など）の光をほぼそのまま通す。一方で、赤の補色光は遮って弱める効果がある。すなわち赤系色ほど明るくなり、補色光は暗くなる特性がある。通常、フィルターを使うとフィルムの速度が遅くなり、ディープ フォーカスのルックを実現するには強いアーク ライトを使う必要があったが、それでも赤フィルターは信じられないほど美しくドラマチックな空間を作り出し、彼らが求めていた表現主義的なルックを実現したのだという。ローカルカラーを掬い取る名手と謳われるコヴァックスの手腕が、4K UHD／HDRでどう再現されるか、乞うご期待だ。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 26, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

オリジナルの企画では監督をジョン･ヒューストン、主演にポール･ニューマンと当時子役だった彼の娘ネル･ポッツが予定されていた。しかしヒューストンがプロジェクトを離れて白紙に戻っている。ジョー･デヴィッド･ブラウンの原作を脚色したのは、のちに『ジュリア』『普通の人々』でオスカーを受賞するアルヴィン･サージェント。オニール親子が主演に決まり、テイタムに合わせてアディの年齢が12歳から9歳に引き下げられるなど、多くの変更が加えられたている。そして日本では意外と知られていないのだが、ボグダノヴィッチ、フランシス･フォード･コッポラ、ウィリアム･フリードキンがパラマウントと共同で設立した映画製作会社ディレクターズ･カンパニーが出資しており、製作総指揮に名を連ねるのはコッポラとフリードキンである（ノンクレジット）。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

最後に紹介するのは、偉大なる現代の映像神話作家ギレルモ･デル･トロ監督作『シェイプ･オブ･ウォーター』（2017）である。第90回アカデミー賞では13部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の4部門でオスカーを獲得している。

東西冷戦中の1962年、NASAの研究センター。ここにアマゾン奥地で捕まった水棲生物が送られてくる。幼児期のトラウマで声を失った夜間清掃員のイライザは、秘密実験室の清掃を託され、そこで「彼」を発見する。水槽の中にいる「彼」に魅かれたイライザは、様々な方法を試しながら徐々に意思の疎通を確立していく。彼と音楽を楽しみ、食事を分けあう程に親密になるイライザ。いつしかふたりの間には不思議な恋愛感情が生まれ･･･。それまでのデル･トロ作品よりアダルトなテーマを持っているものの、摩訶不思議なロマンチシズムの中を遊泳してゆくような傑作に仕上がっている。これはお伽話であり、ネオノワールであり、人間の残酷さを抉り出すドラマであり、異生物間の求め合うハートの触れ合いを描いたラブストーリーである。

2018年にFOXからUHD BLU-RAYがリリースされた本作だが、今回はクライテリオンとディズニー（FOX）の提携により、新たな4Kリマスターが行われている。撮影は『クリムゾン･ピーク』『ジョン･ウィック：コンセクエンス』のダン･ローストセン。ARRIアレクサ MINI（2.8K／3.4K）撮影。DIファイルは2K。『クリムゾン･ピーク』のUHD BLU-RAY化（アロービデオ／5月）でも、AI技術を取り入れた2K DIからのアップスケールが行われており、素晴らしい4K画像を披露したが、本作でも同様のプロセスが行われた模様。さらにHDRグレーディングを含む監修をデル･トロ自ら行っている。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: NOVEMBER 26, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）

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