昨年春、MQAが破綻したというニュースが駆け巡り、私を含めてMQAファンは心配していたが、その一連の真相が分かった。エンコーディングや採用メーカーへのサービスは、その後も従来と同じく続けられ、そして今、新しい展開が明らかになった。

 まず、事態は正確には「MQA社が売りに出された」――だ。投資していた会社が、非戦略部門をリストラする事態になり、MQA社がその対象になった。ファンドやCEメーカーなどの数社の買い手から、カナダのレンブロック社(The Lenbrook Group)が選ばれた。

 同社はもともとはオーディオ関係の流通から出発し、その後、M&Aで成長。NAD Electronics、PSB Speakersを買収し、「Bluesound」ブランドを10年前に立ち上げ、現在は民生用オーディオ・ビジュアル製品に加え、レストランや店舗、会場向けにもBluesoundプロフェッショナルシリーズとして展開している。さらに自らコンテンツ管理プラットフォームのBluOSを開発、それを搭載したネットワークプレーヤーをリリースし、さらに他社へのライセンス供与も始めている。

レンブロックのロゴ

 MQAを取り込んだ真意は、MQAとモバイル用のコーデックSCL-6、そしてBluOSを融合的に展開するためだ。もともとMQAをBluOSに組み込んでいたことで、MQAとは良好な関係にあった。ライセンスビジネスでは、MQAチームの方が、Blue OSチームよりも遙かに強力で実績もある。そのノウハウも欲しかったのだろう。そのレンブロック社が新会社レンブロック・ミュージック・グルーブを設立、BluOSを中心にして、MQAとSCL-6のふたつのコーデックを世界に広めることをミッションとする。

 レンブロック・ミュージック・グルーブの副社長 兼 ゼネラルマネージャーには、元MQA CEOのマイク・ジャバラ氏が就任。MQA以前はワーナー・ミュージックで、マーケティングと技術開発を担当していたという経歴の持ち主だ。レンブロック社の社長 兼CEOであるゴードン・シモンズ氏は「マイクの経歴は、新会社のミッションに最適です。彼のリーダーシップ、人脈、技術理解に大いに期待しています」と語る。

 そのマイク氏に話を聞いた。「MQAはメリディアン社内で開発され、スピンアウトして成長しました。レンブロックから、レンブロック・ミュージック・グルーブが出るのも、同じ行動ですね。コンテンツプラットフォーム、テクノロジーエンジンとして育つためには、ハードウェアビジネスとは異なる視点、ビジネスモデル、戦略が必要であります」。

 BluOS、MQA、SCL6の今後に大いに期待だ。