息詰まるスリル!時速90キロ、恐怖の大暴走!

サブウェイ・パニック 1974年

監督 ジョセフ・サージェント
製作 ガブリエル・カツカ エドガー・J・シェリック
原作 ジョン・ゴーディ
脚本 ピーター・ストーン
撮影 オーウェン・ロイズマン
音楽 デヴィッド・シャイア
出演 ウォルター・マッソー ロバート・ショウ マーティン・バルサム ヘクター・エリゾンド 
   アール・ヒンドマン ディック・オニール ジェリー・スティラー トニー・ロバーツ リー・ウォレス
   ドリス・ロバーツ ケネス・マクミラン ジュリアス・ハリス ジェームズ・ブロデリック

4K SCREEN CAPTURE

世界には2種類の人びとがいる。『サブウェイ・パニック』が大好きな人と、まだ観ていない人だ。これは誇張ではない。『フレンチ・コネクション』や『狼たちの午後』といった、ニューヨーク市を舞台にした他の警官や強盗スリラーの影に隠れて、知られざる傑作として賞賛されるべき映画だ。荒唐無稽なコンセプト、驚くほど才能のあるキャスト、名高い音楽、そして正統なサスペンスのおかげで、素晴らしくエキサイティングな作品となっている。議論の余地はない。(ニューヨーク・タイムズ)

ニューヨークの地下鉄が白昼堂々、4人組の男に乗っ取られる事件が発生した。犯人たちは車両に17名の乗客を人質に立てこもり、ニューヨーク市に100万ドルの身代金を要求。1時間以内に100万ドルが届かなければ、人質の処刑が始まることのなる。事件を担当することになった地下鉄公安局のガーバーは、犯人と無電で交渉を続けながら事件解決のために奔走する。

監督は『白熱』『マッカーサー』のジョセフ・サージェント。キレのある編集は『フレンチ・コネクション』『地獄の黙示録』『クレーマー、クレーマー』でオスカーに輝くジェラルド・B・グリーンバーグ。本作の原題の意味は「ペラムベイパーク午後1時23分発の列車乗っ取り」(ぺラムPELHAMはレキシントン・アヴェニュー線の北側始発駅ペラムベイパーク)。邦題は74年12月刊行のハヤカワ・ノヴェル(早川書房)から頂いたものである。

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原作はジョン・ゴディ(スリラー作家モートン・フリードグッドのペンネーム)による 1973 年のベストセラー小説。これを『シャレード』や『アラベスク』など、ヒッチコック・タッチの軽妙なスリラーを書いたピーター・ストーンが、ユーモアやドライなウィットを加​​えて脚色した。古典的なスリラーであり、辛辣で痛烈に面白い。映画は当時のニューヨーク市の経済的、社会的崩壊という文脈の中で描かれており、あの時代と場所を描いた魅力的なドキュメントでもあるのだ。

タイムズスクエアはポン引き、売春婦、性風俗店に占拠されており、ニューヨーク市の崩壊を前に警察は完全に腐敗していなくても無力であるように見えた。70年代半ばまでに、エイブ・ビーム市長は連邦政府の援助を拒否されながら、市の破産に抵抗する無駄な努力に時間を費やしており、ビッグアップルを悩ませている腐敗には終わりがほとんど見えなかった。これが映画の世界なのだ。それぞれの登場人物には、ニューヨーカーであり続けるための狡猾さ、忍耐力以外に自分自身を主張するものがない市民の疲れ果てた皮肉、そして苦々しい宿命論が注入されている。4人の男が明白な脱出手段のない地下鉄車両を人質に取ったとき、それは市の絶望的な状況に沿った愚かな行為のように見えるのだ。(脚本家ジョン・ゴディ/モートン・フリードグッド)

4K SCREEN CAPTURE

撮影は『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』のオーウェン・ロイズマン。2022年、MGM保管の35mmオリジナルカメラネガを4K/16ビットでスキャン。デジタルレストアとHDRグレードは、デラックス・デジタル社が担当している。本作の撮影でロイズマンは、ヴィルモス・ジグモンドが『ギャンブラー』で行ったフラッシング技術を採用した。生のカメラネガを低レベルの光で事前露光し、有効感度を大幅に向上させるフラッシングにより、暗闇に近い状況でも非常に良好な被写界深度を備え、実用的な画像を取得。粒子感が上がってカラー値がわずかに乱れることもあるものの、UHD BLU-RAYで再現されるHDR映像は、実際に暗いトンネル内や蛍光灯に照らされた車内を見ているような、非常に優れたドキュドラマ調の映像を生み出している。この映像は必見である。

2011 MGM BLU-RAY

2022 KINO LORBER UHD BLU-RAY

ビタサイズ撮影予定だった本作だが、地下鉄の車両サイズがスコープサイズのフレーミングにほぼ正確に適合するという理由で、ロイズマンはスコープ/アナモフィック撮影を敢行。ワイドスクリーンは雄大な外観を映すのに適しているいう当時の常識を打破した。アナモフィックレンズの使用は、よりダイナミックな構図を生み出しており、地下鉄の車両の形状をエミュレートするだけでなく、映画内に存在する多くの水平方向の空間(地下鉄のトンネルやプラットホーム、地下鉄の制御室、警察のセダンの車内、道路レベルの歩道や車道)を効果的に再現することに成功している。

セット撮影は制御室のシーンだけで、あとはすべて実物や実景を撮影した。ほとんどを1台のカメラで撮影したのだが、絵コンテはなかった。毎朝、私たちはその日に撮影する脚本のページに目を通し、短い時間でフィルムと機材のチェックして撮影が始まる。当時の多くの監督と同じように、ジョー(サージェント)はカメラの隣にいた。そして現場の状況を判断し、素早く考え、撮影の手順とカメラをどのように使いたいかを私に説明するんだ。だから撮影はシンプルで、すばやい機動力が必要だった。(オーウェン・ロイズマン)

4K SCREEN CAPTURE

音響エンジニアは(同録の魔術師)クリストファー・ニューマン。『エクソシスト』『アマデウス』『イングリッシュ・ペイシェント』でオスカー受賞、『フレンチ・コネクション』『ゴッドファーザー』『羊たちの沈黙(全編同録)』でもオスカー候補となった名録音技師である。

新たにリミックスされた DTS-HD MA 5.1トラックと、オリジナルDTS-HD MA 2.0 Monoトラックを収録。いずれのトラックも一貫して発声は明快にしてコクがあり、レベルも厳正に保たれる。個人的にはオリジナル・トラックが好みであるが、ニュー5.1 トラックも優秀。フロントヘビーであるものの、ステージングは広く、特に地下鉄のトンネル内で、ミックスにさらなる空間の広がりを加えている。発声や効果音の反響残響がサラウンド・チャンネルと連動、臨場感あふれるサウンドスケープを楽しめよう。また騒がしい司令センターのサウンドスケープも活気に満ちている。わずかに残るヒスノイズや経年劣化によるオーディオ・アーチファクトが、息詰まる緊張を伝えて効果を上げる。

4K SCREEN CAPTURE

音楽は『カンバセーション…盗聴…』『大統領の陰謀』のデヴィッド・シャイア。オープニングから映画史に残るスリリングなビッグ・バンドが全開、視聴体験に効果的なエッジを加えている。

これまでのアクション映画の音楽のような楽曲を書きたくなかった。私が求めていたサウンドは、ニューヨークを表現する、組織化されたカオスのようなものだった。メイン テーマでは、2 音のベースライン(Ba-Womp-Womp-Womp)で緊張感を煽り、ストーキング的でありながら、どこかカーニバルのようなものにした。一方で12 音のラインは、ブラッシーで、高いテンションを伴って流れていく。ニューヨーク・ジャズ志向でハードエッジなものにしながら、登場人物の騒々しい反抗的な態度や、ニューヨークのアイデンティティそのものが響き入るサブテキストを埋め込みたかった。(デヴィッド・シャイア)

UHD PICTURE - 4/5  SOUND - 4/5

DAVID SHIRE - THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE

youtu.be

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映像平均転送レート 69999 kbps(HDR10)| 18031 kbps(DOLBY VISION 13.11%)
音声平均転送レート 1969 kbps(DTS-HD Master Audio 2.0 Mono | 48kHz | 24bit)
          3336 kbps(DTS-HD Master Audio 5.1 | 48kHz | 24bit)

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