オーディオ再生を高品位に保つために気をつけたいノイズ。特に電源に由来するノイズと、機器の空き端子から飛び込む外来ノイズは、あまりに身近でついつい見過ごしがちだが、オーディオの再生品質に案外大きな影響を与えている可能性が高い。
そこで今回と次回の2回に渡って、アコースティックリバイブから発売されている電源ノイズ、飛び込みノイズ用のアクセサリーを検証してみたい。お馴染み麻倉怜士さんのご自宅オーディオルームに合計5種類のアイテムを持ち込み、それぞれのノイズに対策を施すことで、音にどんな変化が現れるのかを確認していただいた。(StereoSound ONLINE編集部)
※今回の取材に関する麻倉さんのコメントはこちら ↓ ↓
アコースティックリバイブのアクセサリーを試す企画の続編だ。前回はStereoSound ONLINEの視聴室で同社製ケーブルを試聴したが( https://online.stereosound.co.jp/_ct/17517376 )、今回は私のリスニングルーム。しかも取材と同時に、コメント録画や空気録音も行うというので、取材前日は散らかっているディスクや資料の片付けがたいへんだった。
それはともかく、今回のテーマは以前からとても興味を持っているものだった。(1)電源から混入するノイズ、(2)機器の空き端子から飛び込む外来ノイズをいかに退治するか……だ。いずれも、オーディオを高品位に保つためには、絶対にトリートメントしなければいけない事柄だ。2回に分けて、そのリポートをお届けする。まず電源アクセサリー編。
電源ノイズ対策で本当に音が変わるのか? 音源にもっとも近いプレーヤーとプリアンプで試す
電源ノイズ追放にアコースティックリバイブはどう挑むか。私は、このリスニングルームを建てた時から電源関係のレギュレーターやケーブルには相当気を使ってきた。今回は通常の使用状況を想定して床のコンセントから普通の電源ケーブルとアコースティックリバイブの電源タップの「RTP-6N」(旧モデル)をつなぎ、プラットフォームとして、俎上に載せた3つの電源アクセサリーを順にチェックしていく。
試聴時のシステムはCDプレーヤーがリン「SONDEK CD12」、プリアンプはオクターブ「Jubilee Pre」、パワーアンプがザイカ「845PP」、スピーカーシステムはJBL 「K2 S9500」だ。このうち電源アクセサリーで関わるのは、CDプレーヤーとプリアンプだ。
チェックで聴くリファレンス曲は、UAレコード合同会社の『情家みえ/エトレーヌ』からB面の「StillCrazy After All These Years」。潮 晴男代表のプロデューサーズ・ノートには、こうある。「1975年度のグラミー賞最優秀アルバム賞に収められているポール・サイモンの代表曲である。サイモン&ガーファンクルの成功から、ソロへの転向によって新たなる道を切り拓いた作品だが、情家は得意とするこの曲で都会的なセンスを織り交ぜ、後藤のピアノ、浜崎のサックスの調べに乗せてその持ち味を存分に発揮している」。
聴きどころは、「冒頭の後藤浩二のピアノの切れ味と多彩な音色」「情家みえのヴォーカルの叙情性」「クレッシェンドのダイナミックな盛り上がり」「後半に登場する浜崎航のサックスの色気と官能性」……だ。
チェック1:電源タップにコンセントスタビライザー「CS-3K」を挿す
空きコンセントに挿すだけで音が激変! 小さくても効果が凄い “コンセントスタビライザー”
CS-3K ¥64,000(税別)
リン青銅や黄銅、航空レベルアルミ合金、天然スモーキークォーツなど複数の異種素材を組み合わせた制振構造によってコンセントの電極の共振を減衰させ、電源ラインの整流効果によって音質を向上させる小型アイテム。空いているコンセントであれば、屋内のどのコンセントでも高周波ノイズ消滅効果を発揮できる。
CS-3Kは、リン青銅、黄銅、航空機グレードアルミ合金、天然スモーキークォーツなど複数の異種素材を組み合わせた制振効果により、コンセントの電極の共振を減衰させる、プラグ型の電源アクセサリー。次に聴く電源コンディショナー「RPC-1KM」に採用されているノイズ除去回路も搭載している。「電源ラインの整流効果によって音質を向上させる」とも謳う。空いているコンセントであれば、オーディオシステムの近くでなくとも、屋内のどこでも同じ効用が得られるとしている。
CS-3Kを電源タップに挿した瞬間に、音が変わった。解像感が向上し、細部の切れ味が目に見えて鋭くなった。音像にボディが付き、輪郭も明確に描かれるようになった。さらに音像に立体感が付与され、ステージイメージが鮮やかになった。情家みえのヴォーカリストとしての特徴の「子音表現力」が、格段に磨かれたことも特筆。この部分の感情のこもりが表現されるようになった。物理的にも、子音発音がスムーズだ。これらを含めて、演奏者の眼前で聴いている雰囲気が味わるようになった。
また試しに私が普段愛用しているクリーン電源の空きコンセントにCS-3Kを取り付けて音を確認してみた。クリーン電源においても、今述べたような効果が得られた。すでに電源対策している向きにも、メリットは大きい。
チェック2:電源タップに電源コンディショナー「RPC-1KM」を挿す
電源回路から混入する超高周波ノイズを低減。音をクリーンに聴かせる電源コンディショナー
RPC-1KM ¥380,000(税別)
※「RPC-1」「RPC-1K」からのバージョンUPも可能(要見積り)
電源経路に乗る超高周波ノイズの低減と均一化を行い、S/Nを劇的に向上させながらエネルギー感や躍動感なども向上させる電源アクセサリーの新ジャンル。空きコンセントに挿すだけで家庭内の電源ラインに乗っている超高周波ノイズを吸収、S/Nの向上に加え、エネルギー感、臨場感再現も改善してくれる。
コンセントスタビライザーCS-3Kの上級版。ボックス型の電源コンディショナーだ。「特殊コイルの組み合わせによる独自の回路設計により、電源経路に乗る超高周波ノイズの低減と均一化を行う」が謳い文句。筐体はヒッコリー、ケーブルは究極のオーディオ用導体PC-Triple Cを使う。
CS-3Kでもびっくりしたが、大きな箱のRPC-1KMに入れ替えると、品質感がさらに格段に上がった。わかりやすく表現すると、価格どおりに6万円が38万円に上がった音! だともいえるだろう。
冒頭の後藤浩二のピアノの輝きが、たいへんブリリアント。ヴォーカルの語尾もより繊細だ。この部分はCS-3Kもよかったが、RPC-1KMでは微細なグラデーションが与えられ、消えゆく過程が、ひじょうに細やかに聴けるのである。単に音がデクレシェンドするだけでなく、そこに色気も感じた。途中から入るベースのキビキビとした弾力感が心地好い。ドラムワークも綿密だ。
本曲はゆっくり始まり、途中でゴージャスに盛り上がり、その勢いに、色気むんむんの浜崎航のサックスが乗る。ここまで来ると、ヴォーカル、ピアノ、ドラム、テナーサックスという個々の音要素が断然輝き始め、それらの音の真の意味合いがより深く聴けるようになった。音像はひじょうにクリアーで、立体的な形状まで聴けた。
チェック3:電源タップには何も付けず、Jubilee Pre の電源ケーブルに
ACスタビライザー「RAS-14Triple C」を追加する
電源ケーブルに追加することで、オーディオ機器の直前で電源ノイズを遮断。
ACスタビライザーの効果は予想以上に大きい!
RAS-14 Triple C ¥129,800(税別、1本)
RAS-14 Triple Cは天然鉱石のブレンドによる特殊電磁波吸収材を備えたアイテムで、電源ノイズとグラウンドノイズを強力に除去し、S/Nと音質を劇的に向上させてくれる。アンプやCDプレーヤーなどのオーディオ機器と電源ケーブルの間、または電源タップや電源トランス、電源生成装置などの電源機器と電源ケーブルの間に挿入して使用する。
アンプやCDプレーヤーなどのオーディオ機器の電源インレットと電源ケーブルの間、または電源機器(電源ボックス、電源トランス、電源生成装置など)と電源ケーブルの間に入れるアクセサリーだ。天然鉱石をブレンドした電磁波吸収材により、電源ノイズとグラウンドノイズを強力に除去するという。
先ほどのふたつはオーディオ部屋のコンセントでなくとも、家の中の別のところのコンセントでもよい。一方、RAS-14 Triple Cは、機器の直前にてダイレクトに作用する電源アクセサリーだ。直前動作ということは、そこに至る経路で加わったすべてのノイズを対処することに、他ならない。その意味からすると、これから述べる具体的なメリットは、本アクセサリーの持つ基本特性に加え、機器の直前で動作していることが大いに効いた成果といえるだろう。
ダイナミックレンジの天井がより高くなり、さらに余裕が出た。強音での歪みや不安感はまったく、ない(裸での接続では、歪みや強調感が多く感じられた)。クリアーにして情報量が目に見えて(音に聞こえて)増えたが、それは物理的に、またオーディオ的に細部まで聞こえてきたというより、楽曲を堪能するための音情報が、格段に増えるのが、RAS-14 Triple Cの美質だと聴く。強奏の中での、ヴォーカルのリジッドな存在感、ピアノの尖鋭な立ち、サックスの突き上げ……などが、美味しくフィーチャーされた。
もとよりUAレコードの録音はひじょうにクォリティにこだわり、生の演奏の感動を何の加味もなく−−コンプレッサーやイコライジングはまったく施していない−−届けることを使命としている。しかも、ワンテイクの録音で、修正もしていない。演奏の熱意をスポイルさせないためだ。そんなこだわりの“生成りの音”が、たっぷり聴けたのである。
チェック4:電源タップに「CS-3K」と「RPC-1KM」を挿し、
Jubilee Preの電源ケーブルに「RAS-14 Triple C」を追加する、全部入り!
アコースティックリバイブの3種類の電源アクセサリー3種類を使う!
事前の予想を遙かに超える音の変化に驚いた
今回準備した3種類の電源アクセサリーを組み合わせて使ったらどんな効果が得られるのか、も試している。電源タップRTP-6NにCS-3KとRPC-1KMの両方を刺し(写真上)、さらにRAS-14 Triple Cを機器の直前に取り付けている(写真下)
ここまでは個別に3種類のアイテムを聴いてきた。最後にこの3つを同時に動作させたらどうなるか。上手く効果が加算されるか、それとも過剰になるかを試す。
結論から書くと、事前の予想を遙かに超える音が聴けたのである。それも、単にクォリティが上がったという次元ではなく、音楽性にも鋭く踏み込み、楽曲が持っている、音源が持っている音楽的な要素が、格段に明瞭に再現されたのである。
冒頭の後藤浩二のピアノは、これほど倍音が出ていたのか、音の立ち上がりの瞬発さと立ち下がりのグラデーションがこれほど緻密であったのか、色彩感があったか……が、この3コンビネーションで、初めて聴けた。それも音情報として明確になったことに加え、このピアニストが本曲に込めた思いや感情という情感的情報がひじょうにクリアーに感じられた。
それは情家みえの声もそうだ。彼女は言葉の意味、発音に徹底的にこだわる。表の意味だけでなく、裏の意味まで深く探求し、それを言葉に載せて歌で伝えることに、たいへん意を払う。「Still Crazy After All These Years」は、別れてから数年過ぎても以前と同じように、あるいはそれ以上クレイジーになって、夢中になっているという歌詞。情家みえが歌詞の世界を紡いだ思慕の感情を今、最高度に濃密に聴くことができたのである。
電源こそ音質の礎であり、土台であり、インフラだ。そのノイズはもの凄く音を汚していることが、アコースティックリバイブの3つの電源アクセサリーを使ってみて、改めて分かった。電源周りを整備することによって、こんなにも音が変わるか、いや音楽的に鳴るかが、体感できた。まさに“音の基礎は電源にあり”だ。
提供:関口機械販売