ご存知、火星人の侵略を描いたH・G・ウェルズの同名SF小説の映画化で、宇宙人の地球侵略を描いた最良の一本。舞台設定、人物配置、ストーリーテリングはSF映画のモデルとなり、以降のエイリアン映画に大きな影響を与えた。『地球最后の日』のジョージ・パル製作。監督は『黒い絨毯』のバイロン・ハスキン。ふたりは3年後、『宇宙征服』でふたたびコンビを組むことになる。主演はTV『刑事コロンボ/殺人処方箋』のジーン・バリー。共演に『必殺の銃弾』のアン・ロビンソン。アカデミー特殊効果賞受賞(編集・音響賞ノミネート)。
3色分解(捺染式)テクニカラー・ネガからの2018年4KレストアDSM(デジタルソースマスター)使用。これは2020年クライテリオンBLU-RAYマスターとして使用されている。2022年HDRグレードはHDR10とドルビービジョンHDR。シネフィルには超期待の一本であるが、残念ながら映像は期待を裏切る仕上がりとなった。開幕から1分40秒ほどでセドリック・ハードウィックのナレーションが始まり、画面には火星の遠景ショットが映し出される。どういうわけか本盤ではブルーの色味になっており、これは豪インプリントBLU-RAYや米国でのストリーミング4K配信版と同じエラーである。一方でクライテリオンは、2020年リリースの際に火星の色味を修正しており、流石である。
捺染式テクニカラーの染料転写印刷では、非常にソフトな映像が得られ、薄い粒子感のビロードのようなイメージとなることを忘れてはならない。その点では本盤の画像再現は成功していると言えよう。HDRとWCG(広色域)による発色の素晴らしさも必見に値する。だが過剰なHDRグレードの痕跡もあり、例えば下欄の映像では光線や発光のディテイルが消失している。個人的にはエラー症状が幾分緩和されるHDR10での鑑賞をお薦めしたい(発色や黒の再現は後退するが)。
クライテリオン版にも採用された、2018年5.1リミックス・サウンドトラック(スカイウォーカーサウンドのベン・バート監修/リマスター)収録。残念ながらクライテリオンやインプリントBLU-RAYに収録されていた、オリジナル・モノーラル音声は未収録となる。5.1chリミックスは、オリジナル音声の味わいを保持しながら、フロント・ステージを拡張、より豊かで堅牢なトーンを追加している。ローエンドもわずかに伸長。サラウンドはアンビエントや限られたSF活劇効果に使用されている。
UHD PICTURE - 4/5 SOUND - 4/5
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