ディー・アンド・エム・ホールディングスから、DALI(ダリ)のフラッグシップとなる新製品スピーカー「KORE」が発表された。
●スピーカーシステム:DALI KORE ¥16,500,000(ペア、税込、10月26日受注開始)
ダリはデンマーク、ノーアエに本社を構えるスピーカーブランドで、1983年にピーター・リンドルフ氏によって設立された。手の届きやすい価格帯の製品を多くラインナップしており、日本でも「EPICON」「OPTICON」「OBERON」といったシリーズが発売されている。
新製品のKOREは、ダリとして初めての大型ハイエンドスピーカーで、ディー・アンド・エム・ホールディングス シニアサウンドマネージャーの澤田龍一氏によると、「賞賛されるべきは、音楽そのものとアーティストであり、アーティストの意図したサウンドをロスなく忠実に再現する製品を造りたい」という思いを次のステップに進めるため、ダリの持つすべての技術とノウハウを注いで開発されたとのことだ。
ダリではハイエンドモデルとして2008年頃に「EMINENTME9」を構想し、2011年にプロトタイプを完成させていた。だが当時のリーマンショック等の影響もあって発売に至らなかったそうだ。KOREはその時の技術的アプローチや考え方を集約し、音楽の世界をさらに深く “視る” ことのできるスピーカーとして40年近くにおよぶDALIのすべてを結集したという。
その第一の特徴として、KOREのドライバーはすべて新開発されている。まず、ウーファーとミッドレンジ磁気回路にはSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)の第二世代であるSMC Gen-2を採用した。
SMCは、砂鉄の一粒一粒に化学的コーティングを施した材料で、高い透磁率を持ちながら電気を通さない絶縁性を備えており、発熱性も低いという。コストもかかるため通常モデルでは限られた部分にしか使われないが、KOREではウーファー、ミッドレンジ両方のポールピースなどにこの素材を使っているそうだ。
そのウーファーとミッドレンジには、SMC Gen-2にバランスドライブのコンセプトを組み合わせたバランスドライブSMCテクノロジーも採用されている。これは、磁気回路にデュアルボイスコイルを採用し、非線形性や信号損失の低減を実現するもので、パイプオルガンなどの低域も自然に再現できる能力を備えている。
なおダイアフラムはダリ製品でお馴染のウッドファイバーに制振材を塗布した素材を使用。ミッドレンジ用は振動板に型押しし、その上に制振材を手塗りすることで厚みを微妙に変え、分割振動を抑えているという。ウーファー用はハニカム構造の素材をウッドファイバーで挟むことで、適度な剛性を保ちながら、過渡信号に瞬時に反応できるようになっている。
高域はEVO-Kハイブリッドトゥイーターが受け持つ。35mmソフトドームトゥイーターを新開発し、能率アップを達成した。ただしこれだけ大口径のトゥイーターとなると放射特性が狭くなってしまう。そこで15〜30kHzを受け持つリボン型トゥイーターを組み合わせて、優れた高域再現と広い試聴エリアを獲得した。
なおKOREではユニットが仮想同軸配置されており、ウーファーユニットが上側と下側に2基配置されている。このふたつは受け持ち帯域が異なっており上側のウーファーは200Hzから下はなだらかに減衰させている。
これもあり、KOREは一見すると4ウェイ5スピーカーだが、正確には3+0.5+0.5ウェイという構成となる。詳しく説明すると、高域側でトゥイーターとリボントゥイーターをスタガードライブすることで0.5ウェイ、低域側でウーファー2基をスタガードライブすることで0.5ウェイという計算だ。
これらのユニットを収めるエンクロージャーも新規設計で、木工工場はHudevad Furniture(フデバールファニチャー)社に依頼している。ここは曲木を得意とする家具メーカーで、KOREでは積層合板を高周波放電で加熱・圧縮、本体背面の美しいカーブ型キャビネットを成型している。曲面合板なので強度も強い。
なおそのエンクロージャーはツインバスレフ型を採用。ミッドレンジユニットの後方には横から見ると三角形になる空間を設け、この隔壁で内部を上下ふたつに分けて、上下のウーファー用エンクロージャーとして使っている。
この他にも、スピーカー端子は新設計の削り出し金メッキ仕様で、4mm径のバナナプラグやスペードが使用可能。バイワイアリング接続にも対応し、シングル接続用のジャンパーケーブルも付属する。
KOREの発表会で、女性ヴォーカルやパイプオルガン、ヴァイオリン・ソナタ、ピアノ曲など様々なジャンルの楽曲を聴かせてもらった。そのいずれも、ふわりとした自然なサウンドとして再現される。楽器が奏でる情報(パイプオルガンの空気弁の動きまで)をきちんと描き出しながらも、モニターライクといった印象ではない。
とても心地いい音場再現で、今回はCDを試聴させてもらったが、例えばアナログレコードを聴いたらより音への没入感が高まるのではないだろうか……そんな気分にさせてくれた。“無理なく本物のサウンドを再現する” という開発陣の願いは達成されている、KOREの音を体験して、そう感じた次第だ。
「KORE」の主なスペック
●型式:3+0.5+0.5ウェイ5スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:10×55mmリボン型トゥイーター、35mmソフトドーム型トゥイーター、7インチミッドレンジ、11.5インチウーファー×2
●再生周波数帯域:26Hz〜34kHz
●クロスオーバー周波数:390Hz、2.1kHz、12kHz
●能率:88dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W448×H1,675×D593mm/160kg