NHKは、放送現場で発想された創意工夫によって生まれた機器や取り組みを紹介する「第50回 番組技術展」を、本日5月23日と明日24日、NHK放送センター正面玄関ロビーで開催する。

 今回は、「体験・体感」「コンテンツ制作」「放送確保・視聴者サービス」の3つのテーマにそってさまざまな展示が行なわれており、全23項目の発表が見られるようになっている。ここでは、ステレオサウンドONLINE編集部の気になった展示を紹介したい。

(1)4Kツインズカム

 水中と水上の映像を、その名の通りツインズ=2つのカメラで撮影し、きれいな一つの映像に合成するシステム。主に、アーティスティックスイミングの放送に使われている。水中映像は、水上(空中)の映像に比べて1.3倍ほど大きくなるそうで、あらかじめ水中カメラにはその逆倍率のワイドコンバージョンレンズを装着。その倍率はこれまでのスタッフ(カメラマン)の実測・経験から導き出されたそうだ。

▲普通に一つのカメラで水面位置に合わせて撮影すると、写真下の映像のように、水中部分の被写体が大きくなってしまう。4Kツインズカムでは、水中・水上の映像を別々のカメラで撮影し、大きさのあった一つの映像にしてくれる(写真上)

(3)「8K文化財」インタラクティブコンテンツ

 これまでニュース記事で紹介してきた「みんなの8K文化財」プロジェクトの基本技術。一つの素材(文化財)を、高精細な写真でさまざまな角度からたくさん撮影し、そのデータをもとに高精細な3DGCを制作(=フォトグラメトリ)。そのデータを使うことで、普段は見られない、触れない貴重な文化財を自由自在に動かして、さまざまな角度から見ることができる、というもの。

▲15世紀につくられた甲冑「樫鳥糸肩赤威胴丸」(かしどり いとかた あかおどし どうまる)の3DCG映像を8Kディスプレイに表示。ゲーム用コントローラーを使って自由に動かすことができる

(4)SHVペリスコピックレンズ

 スーパーハイビジョン(8K)用の、小さな生き物の世界=極小世界を撮影するための超接写レンズ。昆虫などの小さな生き物を撮影するためには、カメラを低い位置に設置しないといけない。しかし、8Kカメラは大きいため、低い位置への設置が難しい。地面を掘るのも手間。そこで、レンズ部を伸ばして、椅子に座った状態でカメラを操作して、足元の世界を撮影できるようにした、というのがこのレンズ。レンズの先にはプリズムがあり、写真のような状態で撮影すると、被写体を正面から捉えることができる。そのほか、長いレンズを活かしたクレーン効果、昆虫目線のようなローアングル撮影などなども行なえるそうだ。

▲このレンズを使うと左のディスプレイに表示されている映像のように、小さい物体を正面から撮影することができる

(5)8K簡易編集システム

 地方(地域)の放送局にて、8K映像の編集を可能にするシステム。現在、8K制作設備は本部(と表記していた。渋谷のNHKのこと)にしかなく、地方では行なえないという。そこで、地方にも広く普及している4K対応編集ソフト(エディウス)にアップデートを行ない、8K編集対応としたのが、この展示。HQXコーデックで撮影した8K映像を用い、それを2Kにダウンコン。その素材を使ってプロキシ編集を行ない、編集終了後に8K素材に適用させることで、8Kコンテンツの制作が可能になるという。