家庭で楽しむオーディオのコンテンツとして、ハイレゾ音源は広く普及してきた。特に熱心なオーディオファイルにとっては、いい音を聴きたい場合には不可欠のソースになっている。

 そのハイレゾ再生で欠かせないのが、ネットワークプレーヤー等につなぐLANケーブルと、USB DAC再生時に使うUSBケーブルだろう。これらは音源ファイルの伝送に欠かせないアイテムだが、デジタル信号を扱う物なので音質には直接関係しないように考えている方も多いようだ。

 そこで今回から2回に渡り、デジタルファイル再生時のケーブルで再生音質は変化するのかを検証してみた。山本浩司さんのオーディオルームにLAN/USBケーブルを持ち込み、それらを交換することでどんな違いがあったのかをじっくりお聴きいただいている。(編集部)

※今回の取材に関する山本さんのコメントはこちら ↓ ↓

聴き比べてわかったLANケーブルの大切さ。山本浩司氏がACOUSTIC REVIVE製品を使った印象を空気録音とともにお届けいたします

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 LAN(LocalArea Network)ケーブルのグレード差によってネットワークオーディオ再生時の音質はどう変わるか? それを自室で試すことができた。

 用意してもらったのは、ネット通販品の安価な「カテゴリー8表記の一般ケーブル」、アコースティックリバイブ製の「R-AL1」と「LAN-QUADLRANT-TripleC」である。それぞれの音質については、ぜひ動画の空気録音でご体験いただければと思う。

 今回のテストで確信したことをまず述べておこう。ネットワーク通信に用いるLANケーブルによる音質差は予想以上に大きいということ。

 音楽信号が流れるオーディオ用ラインケーブルと同等か、それ以上の違いが出るということにいささか驚かされた次第だ。

今回試聴したアコースティックリバイブ製LANケーブル

R-AL1 ¥18,500(1m、税別、写真右)。左は5mで¥38,500(税別)

LAN-QUADRANT-TripleC ¥88,000(1m、税別、写真右)。左は特注の5m仕様で、その場合は0.5mあたりプラス¥48,000(税別)

 アコースティックリバイブでは、現在3種類のLANケーブルをラインナップしている。それらはいずれも導線にPC-Triple Cの単線を使っており、これは本文にもある通り、エイリアンクロストークと呼ばれる迷走電流の発生を避け、長距離伝送や高周波成分の損失を抑えるためである。

 今回試聴に使った「R-AL1」が最廉価モデルで、「LAN-QUADRANT-TripleC」がトップモデルに位置づけられる。両者は、PC-TripleC単線導体やテフロン絶縁、シルク介在、銅箔シールドなどは共通で、主な違いは、コネクターや外装にある。

左が「LAN-QUADRANT-TripleC」で、右が「R-AL1」のコネクター

 LAN-QUADRANT-TripleCにはテレガードナー製コネクターやカーボンCSFチューブが採用されている。さらにLAN-QUADRANT-TripleCはアコースティックリバイブの実用新案特許であるケーブル自体を2芯×4本に分ける構造となっており、ケーブル間の干渉を物理的に排除している。

 なお、ミドルクラスに当たる「LAN-1.0 Triple C」は、コネクターにテレガードナー製を採用、PC-TripleC単線導体、テフロン絶縁、シルク介在、銅箔シールドに帯電を抑えシールド効果を強化するカーボンCSFチューブを採用している。ケーブルは8芯×1本だ。(編集部)

アコースティックリバイブ製では上記の他にもミドルクラスのLANケーブル「LAN-1.0 Triple C」 ¥38,000(1m、税別)をラインナップしている

 それぞれのLANケーブルの音の違いについては動画で解説したので、ここではまずアコースティックリバイブ製LANケーブルの詳細について述べたい。

 導体はPC TripleCの単線、絶縁材はテフロンで緩衝材(介在)がシルク。この構成はLANケーブルのみならず、同社製オーディオケーブルの基本構造だ。

 PC TripleCはオーディオ用導体として重用された単結晶のPCOCCに代わるものとして開発された素材。高純度銅を鍛造して(繰り返し叩いて)、約70%まで圧縮した導体である。

 また、縦方向にできる銅の結晶を鍛造することで横方向に連続する結晶構造に変えることができ、高密度化と相まって電気が流れやすい導電性に優れた素材に仕上げられるわけだ。

 ちなみに同社製の信号ケーブルで撚り線導体が使われたものは存在しない。すべて単線導体が使用されているのだ。単線導体を使用しているのは撚り線導体で避けられない迷走電流の発生を嫌うためだ。

 特にLANケーブルにおいては、細い線を撚り合わせた導体は「エイリアン・クロストーク」と呼ばれる迷走電流が発生し、長距離伝送や超高周波成分の伝送が難しくなるとアコースティックリバイブは言う。市販の10mを超えるLANケーブルの殆どは単線導体が採用されていることからもその優位性が判るだろう。

 また、この2種類のLANケーブルには絶縁材にテフロンが使われているが、比誘電率がきわめて低い素材だからというのがその理由だ。

LANケーブルが音に影響を与えるのか?
NASにつながるケーブルを交換し、その影響を細かくチェックした

 ホームシアターでのネットワークオーディオ再生では、LANケーブルは重要な意味を持っている。

 特にミュージックサーバー(NAS)から、ハブを経由してネットワークプレーヤーに音楽データを送っているといった場合には、LANケーブルの中を音楽データが通るわけで、デジタル信号とはいえ何らかの変化があることは想像に難くない。

 今回試聴をお願いした山本さんのオーディオシステムでは、ミュージックサーバーとUSB DACをUSBケーブル(アコースティックリバイブUSB-1.0PL-TripleC)でつないでハイレゾを再生しており、LANケーブルはミュージックサーバーとスイッチングハブ、無線ルーターの間をつないでいる(接続図参照)。

 一見すると音楽データの再生には影響がないように思えるが、それでもLANケーブルを交換することで再生音に違いが確認できた。ネットワークオーディオ再生ではネットワーク経路の一部のLANケーブルを交換するだけで音に変化があるので、御自身のシステムでもぜひ試していただきたい。(編集部)

左がネットワークスイッチのデラ「S100」。今回は無線ルーターとS100、さらにS100とNASの「N1A/2」の間をつなくLANとUSBケーブルを交換している

 絶縁材は導体以上に導通特性にとって重要なパーツで、現状の製品の中ではPVC(塩化ビニール)を用いたものが多いが、電気を引きつける力、すなわち電流を止める力を示す比誘電率を測ってみると、PVCは5.6〜8、それにたいしてテフロンは2.2と3分の1から4分の1の低い値を示し、圧倒的な伝送スピードを実現するという。

 ただし、テフロンには静電気を帯びやすいという弱点がある。この弱点を補うために、静電気を取り除く役目を果たす自然素材のシルクを緩衝材に使っているわけだ。

 また、シルクは帯電したとしても+(プラス)方向に帯電するため、−(マイナス)方向のテフロンの帯電を打ち消す効果があるという。

 ここまで述べたことは、R-AL1とLAN-QUADLRANT-TripleCに共通する特長だが、アコースティックリバイブの最上位ケーブルLAN-QUADLRANT-TripleCには、他社製品にはない大きな特徴がある。それがケーブルの4分割構造だ。

 LANケーブルは双方向の高速通信を実現するために8ストリームの線で構成されている。LAN-QUADLRANT-TripleCは2芯ペアを4組構成し、それぞれを分割して伝送しようというわけである。

 分割せずに1本で8ストリームの信号を送る一般的なLANケーブルは、内部で信号線が乱れて干渉し合い、伝送品質を著しく損ねてしまう。

 その対策として「カテゴリー6」に分類されるLANケーブルでは、真ん中に十字の仕切りを入れて2芯ペアの4対の信号線をそれぞれ通し、干渉を防いでいるわけだ。

ハイレゾソースの送り出しに使った、デラのミュージックサーバー「N1A/2」。下の写真の右側が、ネットワークスイッチ「S100」につないだLAN-QUADRANT-TripleCケーブル

 その後に登場した「カテゴリー7」LANケーブルは、この構造を基本に2芯ペアの4対の信号線を個別に高周波シールド効果の高いとされるアルミ箔等でシールドした「ダブルシールド」仕様のものを指すが、アコースティックリバイブによると、このダブルシールド仕様を実際に聴いてみると、音が窮屈な印象になりアルミ箔の音色的な癖が乗ってしまうという。

 そこで考え出されたのが、4分割構造のLAN-QUADLRANT-TripleCケーブル。それぞれオーディオ帯域のシールド特性に優れ音色的な癖の発生がない銅箔でシールドした信号線を4本に分けて伝送することで、音を窮屈に感じさせず、アルミ箔の癖も出ない、高周波領域までスムースな伝送が可能になるわけだ。

 もうひとつ注目すべきは、LAN-QUADLRANT-TripleCのプラグには、現在世界最高峰の品質を誇るテレガードナー製が採用されていることだろう。

 ケーブル導体との接点には導通向上処理とともに、静電気の発生を抑える貴陽石処理も施されているという。

 今回のテストでは、ルーター中継器とスイッチングハブのデラ「S100」間、ハブとネットワークトランスポート、デラ「N1A/2」間に3種類のLANケーブルをつなぎ代えて、それぞれの音の違いをチェックしたわけだが、先述したようにその音質差は当方の予想を大きく超えるものだった。

 たとえば、空気録音に用いたステレオサウンドの『ハイレゾ・リファレンス・チェック・ディスク』の「Alice in Wonderland」を例に取ると、安価な一般LANケーブルだと全体的にハイ上がりで、シンバル等の金物がきつく響く。また、ピアノやサックスの響きが人工的に感じられ、余韻も少ない。

山本邸の主な再生システム

●ネットワークプレーヤー機能付きNAS:デラN1A/2
●USB DAC/SACDトランスポート:ソウルノートS-3 Ver.2
●クロックジェネレーター:ソウルノートX-3
●プリアンプ:オクターブJubilee Pre
●パワーアンプ:オクターブMRE220
●スピーカーシステム:JBL K2 S9900
●ネットワークスイッチ:デラS100

ハイレゾからアナログレコード、UHDブルーレイでのイマーシブオーディオ再生まで、あらゆるソースを最高品質で楽しんでいる山本邸のオーディオラック

お気に入りのスピーカー、JBL「K2 S9900」は真空管式パワーアンプでドライブしている

パワーアンプ等への給電にはアコースティクスリバイブ製の電源タップや電源ケーブルを使用。こちらも山本さんが以前から愛用しているものです

 R-AL1に替えると、シンバル等の金物の響きが芯のある質量感のある鳴りっぷりに豹変し、その違いに驚かされた。音像に揺るぎない実在感が加わるのである。

 最後に聴いたLAN-QUADLRANT-TripleCの圧倒的に鮮度感の高い音には、我と我が耳を疑った。ボリュウムノブは触っていないのに全体に音圧感が上がり、トランジェント感の向上が著しい。冒頭のハンドクラップなど、パーカッショニストがまさに眼前で叩いているかのようなリアリティなのだ。またサウンドステージの広大さにも驚かされる。

 この3本のケーブルの音質比較を体験し、LANケーブルの伝送品位が上がるにつれ、音楽に立体的な陰影が加わり、演奏現場の「気配」が明瞭に伝わってくるようになることがよくわかった。

 それに加えて、音の立ち上がりがより鮮烈に、音の消え際がより精妙になり、静寂の気韻がより深まるのである。つまり、時間軸精度とダイナミズムの向上によって音楽を聴くのが断然楽しくなるのだ。

 先述したようにLAN-QUADLRANT-TripleCの音のよさは圧倒的だった。とくに高音質音楽ストリーミングサービス「TIDAL」の音質改善は著しく、音楽との新たな出会いを求めて、ほぼ毎日このサービスを利用している当方にとって、LAN-QUADLRANT-TripleCは手放せないものになったことを最後に述べておきたい。

提供:関口機械販売

※次回は同じく山本邸で、USBケーブルによる音の変化を確認します。お楽しみに