SOtMは「Soul Of the Music」(音楽の魂)を意味する韓国のオーディオブランドである。同社はネットワークオーディオ製品を中心に幅広く優れたモデルを提供しているが、今回同社から発売中のネットワークスイッチ「sNH-10G」のスペシャルエディション(銀線仕様と銅線仕様)が登場した。

光コネクターも装備した、高品質ネットワークスイッチ「sNH-10G」(価格はすべて税込)

写真左が「sNH-10G」で、右は別売の電源ユニット「sPS-500」とクロック「sCLK-OCX10」

スタンダードモデル ¥176,000
リクロック機能モデル ¥198,000
リクロック機能及びマスタークロック入力機能モデル ¥220,000

スペシャルエディション仕様
※2021年12月31日注文分まで
銀線仕様 ¥44,000追加、銅線仕様 ¥38,500追加

※2022年1月1日以降
銀線仕様 ¥49,500追加、銅線仕様 ¥44,000追加
発売済みのsNH-10Gも上記に送料¥22,000追加でアップデート可能

sNH-10Gの背面端子。写真右端のふたつが光接続用のSFPコネクター

「sNH-10G」の主なスペック
●入出力端子:RJ-45 ports×8、SFP ports×2
●オプション入力:10MHzマスタークロック入力
●対応ネットワーク:IEEE 802.3 10Base-T Ethernet、IEEE 802.3u 100Base-TX Fast Ethernet、IEEE802.3u 100Base-FX 100Mbps over fiber optic、IEEE 802.3ab1000Base-T Gigabit Ethernet、IEEE 802.3z 1000Base-T 1Gbps over fiber optic、IEEE 802.3x flow control and backpressure、Full-duplex and half-duplex operation、Supports 9216 byte jumbo packet length
●寸法/質量:W296×H50×D211mm/2kg

 ご存知のようにネットワークスイッチ(スイッチングHUBやLANスイッチとも呼ばれる)は、現在ではネットワークオーディオ再生において重要な役割を担うコンポーネントのひとつである。中でもsNH-10Gは高速光ファイバー伝送に対応した気鋭のモデルとして注目を集めている。今回は新登場のスペシャルエディション2モデルに従来のスタンダード仕様も加えた計3モデルを用意して、筆者のリスニングルームにてじっくりと音を聴き比べてみた。

 試聴システムは、ネットワークプレーヤーはルーミン「X1」(X1は光ファイバー伝送に対応したSFPモジュール用入出力端子を装備する)、オーディオNASはDELAの「N10」、プリアンプはソウルノート「P3」、パワーアンプはファンダメンタル「MA10」×2、スピーカーシステムはYGアコースティクス「Hailey2.2」である。なおルーミンX1とソウルノートP3間はバランス接続、P3とファンダメンタルMA10の間もバランス接続である。

 今回試聴するsNH-10Gは、スペシャルエディション仕様も既発売のスタンダード仕様もRJ-45ポートを8基、光伝送用SFPポートを2基備えるが、オプションでリクロック機能および10MHzマスタークロック入力を備えたモデルも用意されている。今回はスタンダード仕様もスペシャルエディションも、オプションのリクロック機能および10MHzマスタークロック入力機能を備えたモデルを用意していただいた。

 スタンダード仕様とスペシャルエディション仕様の違いだが、スペシャルエディションは筐体内側に電磁波シールドeABS-200が追加され、内部配線材が7N UPOCC銀線または7N UPOCC銅線にアップグレードされる。また、コンデンサーも高品位なEvoxコンデンサーに変更されている。既にsNH-10Gを愛用中のユーザーであっても、銀線仕様あるいは銅線仕様にアップグレードが可能なので問い合わせていただきたい。

 試聴曲はいずれもハイレゾで、ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビー』から「ポーギー」。ジャズ、ロック、ヒップ・ホップの各界から引っ張りだこのベーシスト、ピノ・パラディーの『Notes With Attachments』から「Ekute」、メロディー・ガルドー『サンセット・イン・ザ・ブルー』から「イフ・ユー・ラブ・ミー」、Jジャズの最先端で活躍するトランペッター、類家新平『RS5pb』から「Civet」などを聴いている。

今回の再生システム。ネットワークプレーヤーにルーミン「X1」(写真右下段)を使い、そのアナログ出力をソウルノートのプリアンプ「P-3」(写真左下段)に送っている。ミュージックサーバーやモデム類はラックの後に置かれている

 最初はスタンダード仕様のsNH-10Gから。ちなみに我が家のネットワーク環境は、モデムからネットワークスイッチまでは既に光接続としている。従って、sNH-10GとルーミンX1の間をLAN接続した時と光接続した時の音の違いを聴き比べることになる。

 LANケーブルにワイヤーワールド・プラチナム・スターライト8を使用したLAN接続と光接続の音の違いだが、LAN接続で聴いたビル・エヴァンスのピアノの濡れたような美しい音色やピノ・パラディーノで聴けた超低音の驚くべき伸びの良さ、メロディー・ガルドーでの囁くような歌声の魅力とバックのストリングスの甘美さ。類家新平の極め付きの鮮明さとソリッドさ、そして爆音再生しても耳に痛いと感じないナチュラルさなど、スタンダード仕様で大満足という気分だった。

 次に本機とルーミンX1を光接続に変えてみる。ビル・エヴァンスは情報量がグンと増えたことがわかった。ジャズクラブ内の観客の発するおしゃべりやグラスのカチカチいう音、空気感の濃密さが一段と増して、この臨場感は実に魅力大。ピノ・パラディーノもワイドレンジ感や解像力の高さに加えて透明感もいっそうアップ。音の精細感も驚くほどだ。メロディ・ガルドーのため息も色っぽく、類家新平ではやかましさが減って代わりに熱量が増す、この生っぽさがまた驚くほどだ。

X1とsNH-10Gの間を、通常のLANケーブルと光ケーブルにつなぎ替えると音がどう変化するかも聴き比べた

 次は本命、sNH-10Gのスペシャルエディションである。スペシャルエディションは銅線と銀線とに関わらず、まずS/Nの向上が目覚ましい。言葉を変えればより静かになって、その分情報量が増えたということが分かる。

 価格が少し安い銅線仕様から聴いたビル・エヴァンスは音の品位がより向上。ピアノの音色はいっそう滑らかで艶やか、デリカシーに富んだ美しさは絶品だ。対する銀線仕様は空間情報が豊かとなり、ピアノももう少し優しい音色という印象だった。

 ピノ・パラディーノはコンテンポラリージャズとワルドミュージックに、ソウル/ファンクの要素を加味したユニークな音楽だ。レギュラーモデルに比べると、銅線仕様は更にグンと生々しさを増し、低音の沈み込み、サウンドステージの驚くべき広がり(決して大袈裟に言っているのではない)、さらに管楽器のアンサンブルも太く力強い。これが銀線仕様では力強さはそれほど意識させないものの、アンビエンスの豊かさ、見透しの良さが素晴らしく、「スピーカーの存在が消える」ということを実感させられる。

 メロディ・ガルドーの歌声は、淡くソフトでアンニュイ。その魅力的な歌声が耳をくすぐるが、この感じはやはり銀線仕様が色っぽさをよく現す。しかし、類家新平の過激と言いたいハードでラウドなジャズサウンドは、銀線仕様も悪く無いが、落ち着いた音で温度感もいい銅線仕様により魅力を感じるジャズファンも少なくないと思う。

 というわけで、鮮明、精細、透明という点では銀線仕様だが、ニュートラルかつ音色の濃さを重視する方には、銅線仕様もまた魅力的であるとお伝えしておこう。この辺まで来ると好みで選んでいただいてもまったく問題ない、それほど両仕様はレベルの高い音である。

 最後にsNH-10Gの銀線バージョンにこれも同社から発売中の10MHz正弦波クロック「sCLK-OCX10」を加えて音の変化を聴いてみる。この変化がまた予想以上に大きかったのだが、ビル・エヴァンス「ポーギー」は、暗騒音レベルの霞のようなベールが消えて見透しのよさがいっそうアップ。高域のみならず超低域までクリアーと感じられたのは驚きだった。ピノ・パラディーノもひとつひとつの楽器が見えるように生々しく浮かび上がり、空気感までが濃密さを増した印象。本当に自分が演奏の場に居合わせている気分である。これはスタンダードモデルでも試したが、やはりマスタークロック追加の効果はきわめて大きかった。

 価格的にまずはスタンダードモデルを求めようという人も、将来的にマスタークロックsCLK-OCX10を追加することを見据えてマスタークロック入力機能モデルにすることをぜひお薦めしたい。その後さらにスペシャルエディションにアップグレードというのも実によいと思う。

取材は午後いちから夕方まで時間をかけてじっくり行った。いい音とすてきな照明で気分もリラックス