4K液晶テレビ 65C825

世界第二位の液晶テレビ出荷台数を誇る、世界的テレビメーカーTCL。QLED液晶+Mini-LEDバックライトを搭載したC825シリーズを始めとする4Kテレビの新製品シリーズを発表し、注目を集めています。ここではTCLの最新テクノロジーに注目、同社の高画質戦略に迫る連続企画をお届けします。(編集部)

液晶パネルの「倍速駆動」とはなにか

 液晶テレビの画質に大きく関わるのが、表示パネルの「倍速駆動」とバックライトの「ローカル・ディミング(Local-Dimming、部分駆動)」という技術です。画質重視で液晶テレビを選ぶのであれば、この2つの技術を搭載しているかどうかが重要なポイントになります。

 まず「倍速駆動」ですが、本来は1秒に60コマ(専門的には60フレームといいます)表示される映像を、2倍の120コマで表示する技術です。

 普及タイプの一般的な液晶テレビは、その表示方式から動いている部分がボケて見えることが問題視されてきました。いわゆる液晶の“動きボケ”と言われる問題です。

 これは液晶そのものの物質の動きが遅いという特性に加えて、液晶表示の動作原理(ホールド表示)にも起因しています。具体的に言いますと、液晶テレビでは、現在表示しているコマを次のコマに書き換えるとき、全画面が瞬時に換わるのではなく、映像の上側から徐々に書き換えていきます。そのため、画面全体が次のコマに書き換わるまでに一定の時間がかかってしまい、書き換え中の映像もバックライトで照らしたままホールドされて、「動きがボケている」ように人の目では認識されてしまうわけです。

テレビ放送やDVD、BDなどは、基本的に毎秒60コマ(60Hzとも呼ばれる)で表示されている。その映像をそのまま液晶パネルで表示すると「ボケて見える」ので、2倍の120コマ(120Hz)で駆動するのが「倍速駆動」パネルだ

 そうであれば、書き換える時間を短縮すれば、動きボケの時間も一緒に短くなって、不自然なボケ感が軽減できるのではないか。そこで考案されたのが、秒120コマで表示する倍速駆動技術です。理論上、映像の書き換え時間は2分の1になるわけですから、動きに伴う自然なボケも大幅に改善することができます。コマとコマの間を補うような画像(補間映像。補間フレーム)を新たに作り出して挿入して秒120コマ表示を実現し、液晶の泣きどころとされるボケ感や残像感を低減するという仕組みです。

倍速駆動(120Hz)と標準駆動(60Hz)の液晶パネルの画質的な特徴などをまとめてみた。倍速駆動液晶パネルはコストはかかるが、画質的なメリットが多い

「ローカル・ディミング」方式のバックライト

 次にバックライトの「ローカル・ディミング(部分駆動)」について解説していきましょう。

 TCLの液晶テレビが搭載しているVA(バーチカル・アライメント)液晶は、もともとコントラストの高さ(特に黒の再現性)ではIPS(イン・プレーン・スイッチング)液晶よりも有利ですが、それでもバックライトの光を完全に遮ることは難しく、漆黒の黒を再現するのは至難の業と言っていいでしょう。

 そこで開発されたのが、液晶の絵柄に応じて、バックライトの明るさを複数のエリア単位に制御し、明るい部分はより明るく、黒い部分はより黒く再現するという「ローカル・ディミング」なのです。

 現在使われている液晶テレビのバックライトは、一般的には、LED光源を液晶パネルのすぐ後ろに配置した「直下型バックライト」方式と、液晶パネルの端(エッジ)に並べたLEDの光を導光板という部品を通じて光を全面に行き渡らせる「エッジ型バックライト」に分けられますが、性能的にはよりきめ細かな制御が可能な前者が有利になります。

 「ローカル・ディミング」技術は、いかにこのバックライト用LED光源の明るさをきめ細かく、ダイナミックに制御できるかに性能の善し悪しがかかってきます。液晶の画素毎にすべて個別にLED光源を使って、各画素の明るさに応じてその光量を制御するのが理想ですが、それは家庭用テレビでは不可能です。現実には光源を分割しているエリア数は、「エッジ型バックライト」で10エリア前後、「直下型バックライト」でもせいぜい数十エリア止まり。これでは十分とは言えません。

 TCLでは、ミクロンサイズの小型LED数千個を透明度の高いガラス基板に並べて、よりきめ細かな光量制御が可能なバックライトシステム「Mini-LED」をいち早く開発し、世界で初めて製品化することに成功しました(2019年登場の65X10などで実用化)。

「Mini-LED」バックライトの詳細は「TCLの戦略、その1」で紹介しています。

TCLの最上位テレビ、C825シリーズにはMini-LEDと呼ばれる高度なバックライトシステムが採用されている。小型LEDを数千個用いて、緻密に制御、高いコントラスト性能(画面のメリハリ)を実現している

 今年2021年には、4Kテレビの新製品として、「倍速駆動」と「ローカル・ディミング」、そして「Mini-LED」を採用した同社最高峰の液晶テレビC825シリーズを登場させ大きな話題になりました。C825シリーズは、55インチと65インチでの展開となりますが、ローカル・ディミングのエリア分割数は、前者で128エリア、後者では160エリアに達しています。ローカル・ディミングのエリア分割数としては極めて多く、高いコントラストが期待できます。

倍速駆動とローカル・ディミングを組み合わせた魅力機

QLED液晶+Mini-LEDバックライト搭載テレビ
TCL 65C825
オープン価格(実勢価格25万円前後)

TCLの現行フラッグシップ液晶テレビのC825シリーズは、「QLED液晶」を「倍速駆動」し、さらに「ローカル・ディミング」対応「Mini-LED」バックライトまでおごった意欲作だ。色鮮やかなQLED液晶とMini-LEDバックライトの相性のよさを感じさせる見事なパフォーマンス。テレビの本質である画質で勝負できる、そんな期待を抱かせる注目のテレビだ。(藤原)

TCL 65C728

オープン価格(実勢価格13万円前後)

C728シリーズは、倍速駆動技術を採用したQLED液晶搭載の最新4Kテレビ。75インチ、65インチ、55インチの3サイズで展開している。写真は65インチ機だ。なお、本シリーズはローカル・ディミング技術は採用されていない

提供:TCLジャパンエレクトロニクス