著名なMC型カートリッジのビルダーであり、自らプラタナスのブランドでフォノカートリッジを手掛けている助廣哲也氏。彼の最新作プラタナス3.0Sを紹介する。
本機はデビュー作のプラタナス2.0Sをリファインしたものと理解すればいい。アルミニウム合金製の中空テーパードカンチレバーに、特殊ラインコンタクト形状のダイア無垢針を組み合わせた鉄芯巻枠の発電系は共通する。発電回路は大型の後方ヨークで剛性を高めると同時に、異なるアルミ合金を組み合わせたボディも合理的。両者を比べると自重がわずかに軽くなり適応性を高めている。
プラタナス3.0Sは、本誌試聴室で聴いている。お馴染みのリファレンス・システムにエアータイト製の昇圧トランスATH3を組み合わせた音は、自然にハイエンドまで伸びている上質感が印象深い。ボロン製カンチレバーのような硬質さとは無縁の、アルミ合金製ならではの穏やかな美音が本機の身上であろう。
試聴に使用した昇圧トランス
オーディオユニオンから発売された45回転の2枚組ダイレクト盤「八木隆幸トリオ/コンゴ・ブルー」は心地よい緊張感を漂わせた、切れ込みが鋭く鮮度の高いジャズを体感させる。音の解像感に不足はなく、音像の輪郭を際立たせることがないニュートラルな描写である。アンセルメ指揮「三角帽子」は、音数が多く色彩感の豊かな音を奏でるが華美に陥っていないのが巧いところで、現代的でありながらも中庸の音に仕上げられている。