フォステクスが長らく型番を維持しているスーパートゥイーターの高級機T500Aの最新版が、このT500A Mk Ⅲ。リング形状の純マグネシウム振動板により50kHzにまでいたる帯域を保証。そのダイアフラムリングは不要振動を排するためにタングステンシートを使用。磁気回路はアルニコマグネットを2段重ねした内磁型。ポールピースには銅メッキを施して渦電流対策している。円筒形ホーンと砲弾型イコライザーは真鍮無垢材の切削加工というのは承前だが、表面をプラチナメッキしている。ターミナル部は銅切削の金メッキ仕様であり、1.4mm径単芯線の内部配線は銅・銀合金素材を採用。トゥイーターの台座はウォールナット突き板仕上げだ。

 試聴時組み合わせたフルレンジユニットは正式発表前(※1)のFE208NS。Solシリーズの技術要素を受け継いだ2層抄紙コーンであり、エッジはコンルゲーションダンパーで柔軟性を確保している。アルミダイキャストフレーム仕様、120mm径のフェライトマグネット磁石を搭載。バックロードホーンのキャビネットは、これも発表前のBK208NS(完全受注生産 ※2)を使用。

 まずはFE208NSのみで試聴。これはSolほど緻密で柔軟ということはないけれど、十分に大きなスケールで音場を構築し、明朗にして軽妙、曖昧さのない音像を提示する。中域が明瞭な傾向なので、メゾソプラノの音像は前に進出し実に語尾明瞭。ジャズの打楽器系が生音風の俊敏さだ。エージングが進めばさらに彫りの深い描写傾向になるだろう。

 スーパートゥイーターの低域カットは、試聴機にあらかじめ用意された2個の自社ブランド箔型コンデンサー(別売)のみで行なった。0.33µFでは6dB減衰のカットオフ周波数は60kHz。ならば高域限界を超えたカットオフ点に思えるけれど、これはアッテネーターを兼ねた静電容量と考えられる。つまり15kHzにおいてはカットオフ点から-12dBになるのだ。同じコンデンサーの2個直列ではカットオフが125kHz、15.6kHzにおいてはそこから-18dBとなる。こうして可聴帯域への漏れ具合を調整する手法なのだろう。ただしフルレンジユニットとの位相的な整合の問題もあるので、前後位置の微調整も試みる必要もある。

 試聴したところ、0.33µFを1個のみ使用の方が開放的な高域、精密感の増した高域が得られた。ジャズ系が爽快なタッチとなり、打楽器系の明敏な応答性は演奏の仕草まで彷彿とさせ、3次元的な定位を確かにする。女性ジャズボーカルも良好。ダイアナ・クラールの声の活気や陽性の媚態が加わるし、静粛感のある音場になだらかな展性で余韻が充たされていく様子も見えてくる。クラシックの室内オーケストラは弦のしなやかさが改善された。「春の祭典」のような大仕掛けは、控えめだったピッコロが明敏となりその役割が納得できるようになった。これは他社スピーカーとの組合せも考慮すべき抜きんでた高性能品だ。

(※1)2020年8月下旬発売済
(※2)2020年8月下旬受注開始済

Super Tweeter

フォステクス
T500A MkIII
¥250,000(ペア)

●型式:ホーン型スーパートゥイーター ●インピーダンス:8Ω ●感度:104dB/W/m ●入力:15W ●推奨クロスオーバー周波数:7kHz(−12dB/oct)以上 ●寸法/重量φ99×D139.4mm/5.15kg ●備考:トゥイーターベース付属 ●問合せ先:フォステクス カンパニー TEL:042(545)6111

円筒形ホーンとイコライザーは真鍮無垢材から精密切削加工で製作。表面にはプラチナメッキが施される。

T500A MkⅢを横から見る。プラチナメッキされたホーンに刻まれた円周ラインが振動板の位置。磁気回路はアルニコマグネットを2段に重ねた強力なもので、総重量は5kgを超える。

T500A MkⅢの背面。バナナプラグ対応の銅切削金メッキターミナルを採用。内部配線には銅・銀合金のφ1.4mm単線を使用。

試聴ではT500A MkⅢを付属トゥイーターベースに乗せ、BK208NS上にFE208NSと左右中心を揃えて配置。前後方向は両者の振動板の位置で揃えている。

試聴用に作られたネットワーク。同社の0.33µFフィルムコンデンサーCS 0.33×2。単独使用と直列2個使用で2種のカットオフ周波数が設定できる仕様。

20cm口径フルレンジユニットFE208NS(2020年8月発売)をマウントしたバックロードホーン型エンクロージュアBK208NS(2020年8月受注開始)。

コンデンサーのつなぎ替えでの音を確認する吉田氏。

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