ジャパンディスプレイは1月21日、都内で会見を開き、東京大学と共同研究・開発した薄型イメージセンサーを発表した。

 これは、世界初となる、指紋・静脈・脈波を計測可能な薄型でフレキシブルな生体センサー。東大の持つ薄型有機光検出器の技術と、ジャパンディスプレイの持つ低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)技術を組み合わせることによって実現したという。

今回発表のセンサー。試作機へ組み込まれているのは一番右のもので、それよりも大きいサイズもできますよ、という展示

今回開発した新型センサーの説明をする、ジャパンディスプレイR&D本部 デバイス開発部 部長の木村裕之氏

 会見では、このセンサーを使った2種類の試作機が展示されていた。

 一つは、いわゆる生体認証に使えるもので、指先を治具に置くと、指先と指の腹(第2関節)の部分にこのセンサーが設置されており、先述の指紋、脈波、静脈の生態情報を得ることができる、というもの。

このように指を置く

画面中央の四角い枠の部分が静脈、右の枠が指紋(ぼかしてあります)を検出している

 もう一つは、ウエアラブルデバイスへの応用を考えたもので、LTPS TFTの特徴でもあるフレキシブル性――曲げられる――を活かして、手首に巻いて装着する形状であり、これで、生体情報の記録(ログ)を取ることができる、というもの。体調を管理する(見守り)ことで、病気を未病で防げるようにもなるだろう、ということだ。

ウエアラブル用センサーの試作機

 では、何がすごいのかと言えば、有機の光検出器をLTPS TFTと組み合わせることで、データの読み出し速度が一桁上がり(約10倍速くなったそう)、41fps(秒41枚)の高速化を実現したこと。ほかにも、15μmという薄型化&フレキシブル化も可能になり、ウエアラブル化への可能性を開いているし、解像度は508dpi(5インチのクラスのフルHD解像度のスマホより細かい)を達成しているそうだ。

 静脈の撮影については、従来(現行)のレンズ式と同等の精度を持ち、かつ測定に最適な場所(ポイント)への移動が素早く行なえるのも特徴になるという。

 ちなみに、今回発表のセンサーは、センサー製造時に、LTPS TFTの上に有機層を形成する際のプロセスの見直しによって実現した、ということだった。

 ジャパンディスプレイでは、今後、有機光検出器の自社生産体制を整え、3年後をめどに製品化を進めたいとコメントしていた。

 なお、今回の成果は、英国科学誌「Nature Electronics」のオンラインで公開されている