今回のヲトアニメ:
『さよならの朝に約束の花をかざろう』

¥4,800(税別)
・BD-ROM(BCXA-1370、バンダイナムコアーツ)
・2018年発売・本編115分
・カラー(16:9)
・ドルビートゥルーHD5.1ch
(C) PROJECT MAQUIA

 この作品は、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などで知られる脚本家、岡田麿里の初監督作品。スタッフには長井龍雪や田中将賀といった「あの花」スタッフも名を連ねている。キャラクター原案は、数々のゲームのキャラクターデザインなどを担当した吉田明彦。

 物語は若い姿のまま数百年を生きるイオルフの民の少女マキアの出会いと別れを描いたもの。ヨーロッパの中世あたりの時代に似た世界を舞台としたファンタジー作品で、長命のイオルフのほか、竜のような姿をした巨獣レナトが存在している。

長命の少女の数奇な運命を穏やかに描いていく

 イオルフは長命ゆえに“別れの民”とも呼ばれ、人と関わらずにひっそりと隠れ住んでいた。しかし、人間たちの国はその長命の血を求めて村を襲撃。15歳のマキアは襲撃を逃れるが、イオルフの民がどうなったかもわからず、ひとりぼっちになってしまう。森をさまようマキアは盗賊に襲われて命を落とした母と、その腕に守られて生き残っていた赤ん坊と出会う。そして母と子として、人間の村で暮らしていくことになる。

 過酷な運命を課せられた少女の物語ではあるが、過度にドラマチックになることなく、ゆったりと時間が流れていく。人間たちによる村への侵攻や虐殺などは生々しく描かれるし、後半には人間たち同士の戦争も起こる。それらの場面は、戦士たちの叫び声が飛び交い、激しい銃撃や攻城兵器による城壁の破壊など、もちろん見応えもある。しかし、印象に残るのは、マキアと赤ん坊のエリアルが暮らしている姿を描いた部分だ。エリアルはすくすくと成長していき、わんぱくな子供がやがて、母を支えて工房で働くようになり、そして国を守る兵士となっていく。マキアが働く酒場では、工房の職人たちが食事に集まり、陽気に歌う。活気に満ちた街の姿、そこに住む人々の暮らしをていねいに描いている。

 5.1chのサラウンド音響は空間の再現を重視したもので、街の中のがやがやとした雰囲気が空間を埋めたり、陽気な歌声が四方から聞こえるようなことはあるが、派手に音を移動させるといった演出は少ない。重要になるのは、声だ。数々のベテラン声優が参加し、情感豊かな演技でドラマを紡ぎ上げていく。穏やかで心休まるメロディーを主体とした音楽も、ドラマチックな場面では混声のコーラスを交えながら、物語を支えている。

最後の場面まで、涙はとっておこう

 こういった音作りの作品は、派手な場面がないだけにサラウンドの面白さが足りないと感じるかもしれない。しかし、見ているうちに自然に物語の世界へと没入していく。世界観の構築を重視し、繊細なタッチで描かれた映像を支えるように音響が設計されていることがわかる。特に声の再現は重要だ。そして、最後のクライマックスで、サラウンド音響を駆使したとっておきの演出があるので、サラウンド好きはお楽しみに。

 少女の姿のまま、マキアは数々の出会いと別れを繰り返していく。終盤は涙腺が弛みっぱなしになってしまうが、悲しい別れを見せて泣かせることが作品の狙いではない。最後の別れはとても幸せな気分にひたれる。悲しい涙はぐっとこらえて、最後の最後に温かい涙を流そう。

▲今回使用したプレーヤーは、パナソニックの「DP-UB9000(JAPAN LIMITED)」。BD再生でも緻密で豊かな色彩を再現。本作で大事なダイアローグを、厚みのある音で聴かせてくれた

▲今回使用したAVアンプはヤマハのセパレート「CX-A5200」+「AX-A5200」。「SURROUND:AI」がファンタジー世界の空気感を豊かに描いてくれた

さよならの朝に約束の花をかざろう http://sayoasa.jp/