⑤ アンペックス6516
1954年に開発されたパワーアンプ6516は使用球5879×2、6SN7×1、出力段は807がpp動作の構成で出力40Wを得ている。本機はJBLのスピーカーユニットを使用した5050システムで低域ユニット150-4C×2、高域ユニット375ドライバー+537-500ホーンなどと組み合わせて使用されていた。本機に使用されているトランスは前期モデルではGTC社製、後期モデルではピアレス社製である。(土井)
芯のしっかりした強い音で中域優勢。より大型のスピーカーを鳴らす方向性か
土井 アンペックス6516は、今回聴く9機種では唯一の807プッシュプル接続です。JBLの150-4や150-4Cを使ったアンペックスのシステムに採用されていたアンプです。本誌でも何度か聴いていると思いますが、WE755Aと組み合わせて聴くのは初めてかもしれません。
新 標準的な鳴り方だと思います。業務用パワーアンプによくある音で、飛び抜けてよいわけでも悪いわけでもない。これはあくまでも私個人の意見です。業務用アンプには、人によっては一度ハマると抜けられないほどの魅力を感じることがありますから。高域と低域の減衰が比較的早いようにも感じました。特に高域方向を積極的に鳴らす周辺機器と組み合わせることで、印象は大きく変わるのではないかと思います。
杉井 そうですね。今回のラインナップを考えると、必ずしもベストな組合せではないかもしれません。このアンプは、より大型のスピーカーを朗々と鳴らすのに向いているのではないでしょうか。芯のしっかりした強い音なので、中域重視のWE755Aと組み合わせると中域ばかりが目立つ格好になっているんです。高域と低域が薄く感じてしまうのはそのせいだと思います。
また、WE755Aの負荷インピーダンスが4Ωなのに対して、このアンプは一番低く設定しても8Ω。ローインピーダンスのスピーカーはやや不得手ということもあるでしょう。
土井 お二人と同感です。H825エンクロージュアを使って大口径ユニットを鳴らした際はよい音でしたが、20㎝フルレンジ1本とはバランスが合っていないように感じました。パワーの割には低域と高域が他のアンプに比べてタイトになった印象です。これはアンプの優劣ではなく、シンプルにマッチングの問題だと思います。
新 「御諏訪太鼓」の太鼓は標準的ですが、総じて窮屈な再生でした。あくまでも私の聴感上の印象ですが、WE755Aのキャパシティを超えるパワーが入ったためにリミッティングがかかったような音です。「モルゲン」も同様で、この演奏本来のピアノの大らかさが十分に再現されておらず、WE755Aがクリップしているように感じました。
「ちあきなおみ」は、ちあきなおみの声が太く、重いように感じました。いずれもWE755Aの魅力を引き出すタイプの鳴り方ではなく、改めてアンプとスピーカーの組合せについて考えさせられた次第です。
杉井 そうですね。ほぼ新さんと同意見です。「御諏訪太鼓」は太鼓など各パートの立ち上がりをスピーカーが許容しきれていない印象でした。「モルゲン」を聴くと、音の芯はしっかりしているのですが、それゆえにピアノが刺激的な強い響きに感じられる。
「ちあきなおみ」はヴォーカルのフォーカス感が曖昧で、低域も高域も不足感がありました。これはアンプそのもののよし悪しではなく、あくまでもマッチングの問題です。別のスピーカーなら必ずハマる組合せがあると思います。
土井 「御諏訪太鼓」は硬質で伸び切っていない、どこか制御された鳴り方。「モルゲン」は70年代にサンスイのアンプでJBLを鳴らした際に感じた硬さを思い出しました。「ちあきなおみ」は全体に中高域寄りでクールな再生で、ちあきなおみらしい熟練した歌声にはやや遠い印象でした。お二人がおっしゃるように、マッチングの問題でしょう。