MM型カートリッジの音質が形作られる要素を構造から考察し、根強い人気を持つシュアー製MM型カートリッジの交換針を比較試聴。ヴィンテージ機となったシュアーM44-7、V15 Type IIIで、オリジナルと現行の交換針を聴き比べる。

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【5】JICO VN35 KUROGAKI 黒柿 NUDE

JICO VN35 KUROGAKI 黒柿 NUDE
●針先:無垢丸針●カンチレバー材質:木(黒柿)●適正針圧:0.75~1.25g●備考:他にカマツカカンチレバーの「VN35 USHIKOROSHI 牛殺 NUDE」、ピンクアイボリーカンチレバーの「N44 YURUSHI-IRO 聴色 NUDE」あり●問合せ先:日本精機宝石工業(株) 0120-579-010

──続いてはJICOのモリタシリーズ、VN35 KUROGAKI 黒柿 NUDEです。M44-7編で聴いたN44 USHIKOROSHI 牛殺 NUDEと同じく、木製のカンチレバーと無垢丸針を採用しています。柿の老木の心材に、黒い模様が現れたものを黒柿と呼び、稀少な銘木です。カンチレバーの素材は数十種類の木材から厳選されているようです。

古屋 黒炭のような色をしていますね。ワイヤーは入っていなくて、コンプライアンスはやや高め。よって針圧は軽めの0.75gに設定しました。ボロンカンチレバーを採用した先ほどのVN35 SAS/Bと比べると、良い意味で金属的な音が抑えられています。全体的にとても滑らかな音です。「デスモンド」を聴くと、シンバルの鳴り方がさっきとはまるで違います。シンバルは金属楽器ですが、ボロンだと金属っぽさがやや強調されすぎる印象がありました。金属楽器だから当たり前なのですが、こちらはもう少し金属っぽさを抑えた、味わいのあるシンバルヒットを聴くことができます。ほどよくソフトで、ジャンルを問わず滑らかに聴かせてくれる交換針ですね。これも私の好みの音です。

 古屋さんが「滑らか」とおっしゃったけれども、この交換針は滑らかでありながら深みがありますね。音楽の深いところを再現してくれています。

古屋 そうですね。あまりグレードの高くないMM型で聴くと埋もれてしまいそうな部分がくっきり、はっきり描き出されます。

 決してのっぺりとしているのではなく、陰影感がしっかりと感じられます。

【6】PandM Records pmrn35E

PandM Records pmrn35E
●針先:接合楕円●カンチレバー材質:アルミニウム合金●適正針圧:1.5~2.5g●問合せ先:(株)ピーアンドエム☎042(850)5685

──V15 Type III編の最後の交換針です。M44-7編でも登場したPandM Recordsから発売されている、楕円針採用のpmrn35Eです。こちらもV15 Type III編で最も安価なモデルです。針圧は2.5gに設定しました。

古屋 かなり力強さが際立っている音ですね。V15のボディで使える、十分実用性のある交換針だと思いますが、これでは値段が安すぎる。せっかくですから、コストをかけてでも、もっとV15 Type IIIオリジナルの音に近づけていいと思います。

 オリジナルと比較すると、どうしてもV15らしさは薄くなる感じがしました。M44-7編で聴いたpmrn44-7は「リスト」「モーツァルト」といったクラシックは難しかったけれども、「デスモンド」や「ベラフォンテ」は聴かせてくれるところがありましたから。これはイコライザーの設定を変えるとまた違う印象になるかもしれません。

──オーロラサウンドの「MMエキスパンダー」AFE10を使って負荷容量の切替えを試してみます。テクニクスのアナログプレーヤーSL1000Rと新さん設計・製作のフォノイコライザーANuEQ1の間にAFE10を挿入し、負荷抵抗は47kΩに固定した状態で、負荷容量を変えてみました。

オーロラサウンド AFE10
¥42,600
●カートリッジ負荷抵抗:900/3.6k/6.8k/15k/6.8k/15k/23k/47kΩ●負荷容量:0/47/100/220/330/470pF●備考:ステレオ/モノーラル切替え、グラウンドリフト、ミュート・消磁機能装備●寸法/重量:W111×H35×D120mm/0.4kg●問合せ先:オーロラサウンド(株)☎045(953)6708

古屋 「ベラフォンテ」を聴きましたが、かなり変化しましたね。音に深みが出てきた。先ほどの印象よりも、V15 Type IIIらしさが出てきたと思います。これは負荷容量を大きくして聴いたほうが良く鳴る可能性が高いですね。

 そうですね。明らかな音質の向上が感じられました。MM型カートリッジの音質調整にフォーカスした面白いコンポーネントです。こういう機器を製品化するメーカーの姿勢は評価したいですね。他の交換針と組み合わせても良い効果が期待できるのではないかと思います。

──せっかくですので、前に聴いたJICO VN35 KUROGAKI 黒柿 NUDEでも組み合わせて聴いてみましょう。

古屋 「リスト」を聴くと、違いがよく分かりますね。負荷容量は+0pFから+470pFまで切り替えることができるのですが、この調整で倍音成分の聴こえ方が変わります。+470pFに設定すると高域が伸びやかでありながら落ち着くんです。それに、細かい音がよく出てくるようになった。

 そうですね。私もそう感じました。かつてバリアブルコンデンサー、バリコンと呼ばれる静電容量を変えられるコンデンサーがありましたが、最大が430pFだったと思います。そういったものをフォノイコライザーに組み合わせれば、連続可変で使えるようになるわけですが、現在はもう壊れたラジオから取り出したものが売っているぐらいでしょう。そういう意味でも、このMMエキスパンダーはなかなか興味深い製品だと思います。