MM型カートリッジの音質が形作られる要素を構造から考察し、根強い人気を持つシュアー製MM型カートリッジの交換針を比較試聴。ヴィンテージ機となったシュアーM44-7、V15 Type IIIで、オリジナルと現行の交換針を聴き比べる。

【6】中電 N44HW II

中電 N44HW II
●針先:接合丸針●カンチレバー材質:アルミニウム●適正針圧:2~4g●問合せ先:(株)中電☎0276(86)8011

──続いては中電のN44HW IIです。今回用意したM44用交換針はこちらが最後です。

古屋 音の傾向としては前に聴いたPandM Recordsのpmrn44-7と近いですが、あちらがジャジャ馬的だとするなら、こちらはもう少し調教されて大人しい感じ(笑)。これはもう好みの問題です。

 そうですね。私もそう思います。

古屋 一見するとpmrn44-7とよく似ています。スリーブもカンチレバーも、スタイラスチップも見たところほとんど同じ。しかし、こちらにはテンションワイヤー(ピアノ線)が入っていない。ラテラルは自由に動かし、バーチカルは少し硬めにするのがシュアーの伝統的な設計ですから、そういう意味ではこのN44HW IIよりもpmrn44-7の方がシュアー本来の設計に近い。

 交換針の外観はよく似ていますが、それぞれ別物ですね。価格はわずかにこちらの方が高い。

古屋 音については、前のpmrn44-7と比べるとN44HW IIのほうが柔らかい印象を受けました。全体的に、こちらのほうが聴きやすい音ですね。

 その点は私も同意見です。

古屋 ワイヤーがないと、ダンパーゴムだけでカンチレバーを支えることになります。そうしたときに、レコードの進行方向の力に引っ張られると、ワイヤーがないことで動きが不安定になり、音像が甘くなったりする可能性がある。その点、MC型は構造上しっかり後方からカンチレバーを吊っていますから、そうなりにくいと言われています。このN44HW IIにはワイヤーが入っていませんが、むしろそれが音質的には良い方向に作用しているのかもしれません。ほどよく甘い音像が、むしろ聴きやすさにつながっていますね。

 前のpmrn44-7は、「リスト」や「モーツァルト」のクラシックがかっちりしすぎているところが気になったけれども、こちらではそれほど気になりませんでした。価格を考えると、バランスの良い仕上がりではないでしょうか。

【7】JICO J44A 7 Cartridge Only+シュアーN44-7

JICO J44A 7 Cartridge Only
●負荷抵抗:47kΩ●直流抵抗:約800Ω●自重:5g

──M44用交換針試聴編は【6】までですが、参考に、JICO製単体ボディのJ44A7にシュアーの純正交換針であるN44-7を組み合わせて聴いてみました。

古屋 これは良い組合せだと思います。先ほどから話題に出てきたように、オリジナルボディと組み合わせて聴いた純正交換針N44-7の音は、どこか弱々しく、経年変化で音が老化したような印象でした。しかしこのボディを組み合わせることで、針の古さが補われて音が若返ったように感じられました。

 正直なところ、ミスマッチになるのではと懸念したんですが、素晴らしい音を聴くことができました。試してみるものですね。「リスト」と「デスモンド」を聴きましたが、私も純正針の音がぐっと若返ったように感じました。

古屋 そうですね。「デスモンド」では、ベースが少し大きくなったように感じましたし、シンバルも上品ながらよく伸びるようになった。「リスト」については少々荒っぽいところは残っているけれども、全体としての印象は悪くない。純正針の足りないところを補い合うような、良い相性だと思います。製造時代がまったく違うので、少し音に硬さは残りますが、このボディを手に入れておいて、気になる交換針を揃えていくのもいいのではないでしょうか。スピーカーやアンプの買い替えに比べれば、交換針を買い足すのはコスト的にも物量的にも手軽ですから。こういった取り組みができることは、MM型カートリッジを使う楽しみのひとつだと私は思います。

 これだけたくさんの交換針が現行品として世に出ていると知り、驚きました。ちょっとした音の違いを楽しもうというときに、これはとても手軽にできる取り組みだと思います。シュアーMM型カートリッジをお使いの読者の皆さんは、ぜひとも機会があればお試しいただきたいですね。

──それでは、V15 Type III用交換針の試聴に移りましょう。

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