励磁型/パーマネント型を交え、ブランドも混成のヴィンテージユニットによる2ウェイをマルチアンプ駆動し、音をまとめ上げる実践試聴。ウーファーはモーショグラフ製とジェンセン製の励磁型。ドライバーは励磁型がWE555とモーショグラフSE7015、パーマネント型がICP、RCA、JBL製。低域用/高域用アンプも幅広く組み合わせ、音作りの新しい可能性を探った。

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【3】
ジェンセンHF18 低域
IPC LU1060+WE32A 高域

IPC LU1060
IPC LU1060はジェンセン社の製造で、ダイヤフラムはジェンセンXP101、XF101と同じだが、XP101やXF101のホーン取り付け部の形状は四角なのに対して、本機LU1060ではWE555と同じねじ込み式が採用されている。今回の試聴ではWE32Aホーンに取り付けアダプターを介して対応している。私自身、本機の音は聴いたことがなく、どんな音が出るのか楽しみである。(土井)

パワーアンプ
アルテック1520T 低域用
IPC AM1027 高域用

低域の綺麗な音味が生かされWE製ホーンの特徴も好影響

土井 ドライバーをパーマネント型のIPC LU1060に変更しました。ホーンはWE32Aです。モリソン方式ネットワークのクロスオーバー周波数は800Hzです。ここまでボリュウムは最大に設定していましたが、低域が膨らみすぎたため1時半から2時ぐらいの位置に下げました。

 32Aホーンの良さはとても感じられたのですが、HF18のキャラクターがここでも少し気になりました。例えば「ちあきなおみ」のイントロのギターがややキツめです。しかしホーンの良さも相まって、全体としては悪くありません。ある程度まで音量を絞って聴くような環境であれば、ウーファーの気になる部分も軽減されると思います。

杉井 全体のバランスとしては、特に32AホーンとLU1060の組合せが意外なほどよく合っていました。LU1060はジェンセン製で、ジェンセンらしい綺麗な音味が生かされた良質な音です。デリケートでありながらダイナミックな表現も聴かせてくれる。ただ、やはりHF18の鳴り方は私も少し気になりました。ウーファーらしい鳴り方になりづらいというか……。

土井 私はひじょうに良い組合せだなと思いました。LU1060というドライバーは、これまで個人的にはあまり評価していなかったんです。もともとこのドライバーにはブリキ製の純正ホーンがあり、大型でいかにもグワングワン鳴りそうな形状をしています。メーカーがシステムとして作っているわけですから、低域とのバランスなどトータルで考えられているはずですが、音にけっこうなブリキ臭がある。だからドライバーそのものも大したものではないだろうと考えていました。ところが32Aホーンと組み合わせてみると、WE製ドライバーではないかという音が鳴って、びっくりです。すっかり気持ちを持っていかれました。

 HF18には中心部を紙で継いたものがあるんですが、これはコーン紙とは異なる分厚くてかなり硬い紙で、見た目はセルロイドというか、硬質で叩くとカンカンと音のする質感です。アルミで継いだ今回の個体は少々輝きが強いかもしれません。いずれにしても32Aホーンとの組合せで聴ける音は素晴らしかったですね。

【4】
モーショグラフSE7034 低域
IPC LU1060+WE32A 高域

ウェスタン・エレクトリック32A
WE32Aホーンは1941年に発売された放送局用モニタースピーカーシステム753A(KS12004ウーファー、722A+32Aホーン、752Aトゥイーターによる3ウェイシステム)で採用された。また2ウェイシステム753B(KS12004、722A+32Aホーン)、同じく2ウェイシステム753C(KS12004、713A+32Aホーン)で採用された。本機にはKSナンバーが付けられたものやアルテックブランドの32A、更にA8システムに採用された30623などがある。WE555などが取り付けられるアダプターを介して今回の試聴に対応した。(土井)

パワーアンプ
アルテック1520T 低域用
IPC AM1027 高域用

WE的な中高域の鮮やかさとウーファーのタイトな響き

土井 ウーファーをモーショグラフSE7034に戻しました。ドライバーはIPC LU1060でホーンはWE32A、パワーアンプは中高域がIPC AM1027、低域がアルテック1520Tです。クロスオーバー周波数は800Hzで、ボリュウムは先程より少しだけ上げました。

 中高域の鮮やかさ、ウーファーの締まり具合と圧倒的な響きは、本物のWEの音を彷彿させる音色ではないかと思いました。ただし、狭い部屋で音量を上げて聴くものではなく、かなり広いところで大人数で聴く音色だとは思いましたが、この鮮やかさは得難い。これまで聴けなかった音です。どのソースも圧倒的でしたね。

杉井 音が生き生きとしているし、得もいわれない輝き、エネルギー感に満ち溢れています。実は取材の直前に励磁型のモーショグラフSE7015とこのパーマネント型IPC LU1060を裸の状態で聴き比べたのですが、音がまったく違ったんです。やはりLU1060は優しい音なんですね。口金の形状が異なるので、この32AホーンをSE7015に取り付けることはできないのですが、もし両者を組み合わせられたら、さらに凄い音が聴けるのではないかと思います。この組合せも十分に凄いのですが、そういった期待が膨らみます。

土井 この後のドライバーで、これ以上の音が聴けるか心配になるくらいです(笑)。バランスが良く、チグハグなところがひとつもない。ジェンセンHF18では、良いものもあるけれど引っかかるものもあり、それも個性、美点として聴こうという意識があったのですが、この組合せはそういう忖度がまったく必要ない。素晴らしい組合せでした。

【5】
モーショグラフSE7034 低域
IPC LU1000+WE32A 高域

IPC LU1000
IPC LU1000のダイヤフラムはWE555の中期型が内蔵されているモデルだが、ここではWE720のフェノリック製ダイヤフラムに入れ替えられた個体を試聴する。本機に組み合わせるホーンはWE555と同じネジ込み式となっているため、試聴ではWE32Aホーンに真鍮製のアダプターを取り付けて対応している。ダイヤフラムがフェノリックのため、高域はオリジナルより伸びがないかもしれない。そのため、万一に備えてアルテック3000Hをスタンバイさせた。(土井)

パワーアンプ
アルテック1520T 低域用
IPC AM1027 高域用

フェノリック製振動板の甘い音味が出て色っぽく、生命感に富む

土井 ドライバーをパーマネント型のIPC LU1000に換えました。このドライバーは本来WE555と同じアルミのダイアフラムが入っていますが、この個体はフェノリックに入れ換えています。アンプとホーンの組合せは先程と同じですが、ウーファーのボリュウムのみ1時半の位置だったのを1時まで絞りました。また、アルテック1567プリアンプのトーンコントロールは、トレブルを時計方向で1時の位置辺りに調整しました。

 フェノリックと聞いて納得しました。どこか温かみのある音ですね。

土井 黒糖のような甘みが感じられますね。高域の伸びはWE555と同じく8kHzくらいだと思いますが、トゥイーターなしでも十分に聴けましたね。WE32Aホーンの味わいも大きいかもしれません。

 この再生は、音楽が生きて、しっかり息づいています。躍動感をもって動いている。ここまで聴いてきた中では出色の再生でした。

杉井 555に近いフェノリック振動板の音味を聴けるドライバーです。フェノリック採用の代表的なものにエレクトロボイスのドライバーユニットやトゥイーターがありますが、あちらは典型的なアメリカンサウンドというか、色の強いサウンド。それはそれで魅力があるけれども、こちらはフェノリックの聴感上の聴きやすさがよく表れている。全体的に音楽が凄く色っぽい。音楽性がひじょうに感じ取りやすく、音楽に耳が向かう再生でした。

土井 実はフェノリックを使ったユニットを真剣に鳴らしたのは、今回が初めてでした。もっとレンジが狭くて、絶対的にトゥイーターが必要だと思っていたのですが、ここで聴いてみると音に味わいがあって、どの音楽も素晴らしい。「ちあきなおみ」は涙がこぼれそうになりました。最高ですね。これはもしかしたら555といい勝負をするのではないかというくらい。とにかく驚きました。

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