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⑤ジェンセンXP101+P8-151
パワーアンプ
WE143A 低域用
WE143A 中高域用
ジェンセンの優しい味わいが素直に表れる。SP音源も現代録音も心地よい大人の音
ジェンセンXP101+P8-151
ジェンセンXP101
本機XP101は、1940年代に登場したパーマネント型スピーカーシステムGP807で採用された。18インチ径ウーファーPLJ18とボイスコイル径2.5インチの金属製ダイヤフラム内属XP101ドライバー+金属製ホーンP8-151による組合せ、これらをバスレフ型エンクロージュアに納めたシステムである。クロスオーバー周波数800Hz、ボイスコイルインピーダンス16Ωになっている。また、同時期に、磁気回路をフィールド型に置き換えたシステムGF807も発売されていた。ウーファーL18フィールドコイル型(インピーダンス5kΩ、ボイスコイルインピーダンス16Ω)、ドライバーXF101(フィールドコイルDCR=5kΩ、ボイスコイル径2.5インチ、インピーダンス16Ω)を採用していた。(土井)
土井 最後はジェンセンXP101+P8-151です。パワーアンプは先ほどと同じくWE143A+WE143Aを組み合わせています。
新 この組合せの再生は、1930年代から40年代にかけてのSPレコードの時代を思わせるものでした。SPに例えると「音が悪い」と捉える方がいらっしゃるかもしれません。しかし私が言う「SPの音」というのは褒め言葉です。デジタルにない音の甘さや音楽的な肌触り、そういうものがSPにはあります。もっと言えば、最高の録音はSPの時代にあると私は信じていますが、「マーラー」を聴いて、そういった時代を彷彿させる音の雰囲気があると感じました。「ベイシー」でも、ピアノや管楽器のバランスに、音源ならではの甘さがよく表れていました。これを「古い音」と解釈する方もいると思います。しかし私にとっては「いい音」です。心の和む、ホロッとする音でした。変わって「ちあきなおみ」では、現代の録音であることがきちんと再現されていました。SPレコード時代の最高級のヴォーカルを聴いたという感覚です。手を伸ばせば届くような、実に生々しい音でした。
杉井 JBL 2440+2397とWE143A+WE143Aの組合せでは143Aの色が前面に出ていましたが、こちらはそうでもない。143Aの色をそれほど前に出さず、滑らかな再生を聴くことができました。WEでもアルテックでもない、紛れもなくジェンセンの音味。ひとつのシステムとして完成された音でした。ひと言でいえば優しい音です。バランスの整った、大人のサウンドともいえます。
新 確かに優しい音ですね。
杉井 「マーラー」はどこか懐かしさのある鳴り方で、ヨーロッパ的な香りやシルキーな質感が心地いいですね。それでいて、フォルテシモの部分ではスケールの大きな音がリニアに届きます。「ベイシー」はとても落ち着いた音です。エレガントで毒気がなく、とにかく綺麗な印象。こういう鳴り方も魅力的ではありますが、ジャズの熱気を感じたい人は少し物足りなさを感じるかもしれません。あえて「クラシック向きかジャズ向きか」という棲み分けをするなら、間違いなくクラシック向きの音でしょう。「ちあきなおみ」も、音楽全体が優しさに包まれていて、聴き手を抱擁してくれるような鳴り方です。ジェンセンのユニットは基本的に優しい方向性のものが多く、G600や610のように愛用者が多いスピーカーもあります。そういった音がXP101+P8-151でも聴けたのが嬉しかったですね。
土井 かつてジェンセンのオリジナルシステムで、同じエンクロージュア、同じネットワーク、同じホーンを使いながら、ユニットは励磁/パーマネントから選べる製品がありました。そうしたオリジナルシステムとまったく同じではないかと思える音でした。要するに、システムとして完成された音です。前にもお話ししたように、モーショグラフのユニットの製造元はジェンセンですから、この組合せはそのオリジナルシステムと限りなく近い仕様だと思います。「マーラー」は管楽器の輝きが穏やかで甘く、音楽に一体感がありました。「ベイシー」はWE143Aにしてはやや穏やかで、少々物足りない印象。「ちあきなおみ」はバランスが絶妙で指摘すべき点がなく、とても完成度が高いですね。
試聴を終えて
励磁型とパーマネント型の組合せでも位相合わせや低域レベル調整で音がまとまる。ドライバーのクセへの固定観念も覆せる
土井 今回は46㎝口径の励磁型ウーファー、モーショグラフSE7034にパーマネント型ドライバーを組み合わせた混成2ウェイの試聴でした。かつては励磁型ウーファーなら励磁型ドライバーを組み合わせるものといわれていましたし、私自身もそう思っていました。しかし、意外とパーマネント型を組み合わせてもうまくいくことがここ数年で分かってきました。大きなきっかけはJ・C・モリソン方式のネットワークで、これを使うことで、励磁型かパーマネント型かを気にする必要がなくなりました。
新 そうですね。モリソン方式のネットワークの登場で、いろいろな可能性が見えてきました。
土井 今回も、位相合わせや低域のレベルコントロールによって何の問題もなく音をまとめられました。逆に、パーマネント型ドライバーに励磁型ドライバーを組み合わせる手法も、モリソン方式があるから簡単に想定できるようになったわけです。
杉井 モーショグラフのオリジナルネットワークを使っていたら、もっと違う結果になっていたと思います。アンプによって音が大きく変わったり、ドライバーとの相性がもっと極端に表れたりしたはずです。そして今回は、ホーンとウーファーの前後関係で大きく音が変わることが改めて実感できたことも収穫です。特に、アルテック288B+1005Bを組み合わせた際は、「ほんの数㎝の違いでこんなに変わるのか」という驚きがありました。第一印象があまり良くなかった組合せでも、位置の調整次第で改善される可能性が高いわけですから。
土井 JBL 2440+2397の組合せもそうでしたね。こちらは2440のボリュウムを下げ、前後の位置も見直しました。セオリーを信じすぎてはいけないということです。自分の耳で聴いて、その感覚を頼りに合わせることが大切です。ただ、先ほど新さんがおっしゃったように、それをひとりでこなすのは難しいと思います。聴く人と調整する人が分担してやるのが一番分かりやすいですね。
新 JBL 2440+2397の組合せが特に印象的でした。2440は以前にも聴いたことがあるかもしれませんが、今回の組合せは特別で、惚れ惚れとする音でした。いずれの組合せも興味深い音を聴くことができましたが、この組合せの音が聴けたことが私にとっては今日の大収穫でした。
土井 JBL 2440は「トゥイーターが必要」といわれ続けてきました。「キツい音が出るので木製ホーンが必須」という話も聞いたことがあります。また、昔はアルテックでもJBLでも「ドライバーはエージングに時間がかかる」といわれました。しかし低域の充実があれば、そうキツい音にはならないはずで、中高域がキツく聴こえる原因は、ウーファーが鳴っていないからです。かつてのセオリーが見直されて、常識はどんどんアップデートされています。通説を鵜呑みにせずに経験を培うこと、自分の耳を豊かにして信じることが大切です。
新 おっしゃる通りです。長年オーディオに取り組んできましたが、驚くような試聴体験は尽きません。今回もとても有益なセッションとなりました。ありがとうございました。
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