励磁型/パーマネント型と、磁気回路の構成が異なるウーファーとドライバー+ホーンを「J.C.モリソン方式ネットワーク」を使って組み合わせ、2ウェイマルチアンプ駆動で音作りを実践。パワーアンプはIPC/アルテック/ウェスタン・エレクトリック(WE)の3機種。46cm大口径ウーファーとドライバー+ホーンならではの音の可能性を追求する。

・Part.2は、2月7日の12時に公開予定です。

WEから置き換わっていったモーショグラフ。IPC/アルテック/WEアンプのマルチ駆動で励磁型46cmウーファーの2ウェイを鳴らす

土井雄三/ 新 忠篤 / 杉井真人

土井 今回は、46㎝口径の励磁型(フィールドコイル型)ウーファーにパーマネント型ドライバーを組み合わせた混成2ウェイスピーカーの試聴です。500Hz/800Hzの切替えができるJ・C・モリソン方式のネットワークによるマルチアンプ駆動で、パワーアンプはIPC AM1027、アルテック1520T、ウェスタン・エレクトリック(WE)143Aの3機種を組み合わせます。46㎝ウーファーは本誌の取材ではWEのTA4181Aなどを聴いてきていますが、久し振りの登場です。今回はウーファーのモーショグラフSE7034+励磁電源SE7520は固定し、パーマネント型5組のドライバー+ホーンを組み合わせます。励磁電源のSE7520は24V仕様です。エンクロージュアはジェンセン・タイプEのレプリカを使います。

 WE以外の46㎝励磁型ウーファーで、どのような音が聴ける楽しみですね。

杉井 ウーファーと電源はモーショグラフで揃えることができました。これでアンプも揃えば、これまで本誌で聴いたことがないオール・モーショグラフの組合せが実現したのですが、残念ながら今回はアンプまでは揃いませんでした。

 モーショグラフという会社は、どういう位置付けなんでしょうか。WEの製品を調達できなかった映画館がやむなく使っていたブランドという印象もあるんですが、それは正確ではないのかな。

土井 モーショグラフとWEがユニットを販売していた時期は微妙にずれています。1937年にWEの製造が終わって、以降はWEを使いたくても手に入らない状況になりました。そのため、WEを使っていた映画館が代替品としてモーショグラフやジェンセンのウーファーを買ったわけです。

杉井 1938年当時、モーショグラフのシステムが導入された映画館では、当初、アンプは自社のTA7467(300B・PP)か、それにWE87Eをブースターとして追加したシステムなどがあり、それと新型のWE118Aでした。励磁電源はTA7471でした。WEは映画館用のスピーカーシステムの供給をやめた後もしばらくの間、アンプだけは供給していたようです。もちろん、それまでにWEが供給したステージスピーカーが残っている映画館で、スピーカーはそのままでアンプのみモーショグラフというシステムもあります。その後、WEのアンプ供給も終了してモーショグラフの6L6・PPアンプなどが使われるようになり、電源のSE7520も含めて戦後にかけてオール・モーショのシステムになっていきました。

 なるほど。それはしっかり言っておいたほうがいいですね。WEの廉価版というイメージをお持ちの方も少なくないのではないかと思います。

左から、新 忠篤氏、杉井 真人氏、土井 雄三氏

土井 これまでの試聴では、励磁型ウーファーには励磁型ドライバーを組み合わせることが通常でした。以前の私は「励磁型ウーファーには励磁型ドライバーしか合わない」という考えだったのですが、最近はもう少し考え方が柔軟になり、割と自由に組合せを考えられるようになったんです(笑)。ですから今回も、従来のセオリーに縛られず、励磁型ウーファーとパーマネント型ドライバーの組合せを積極的に聴いてみようということになりました。

 考え方や発想の変化は大切ですね。

土井 実際、昔はやってもうまくいかなかったんですね。それが、最近は試してみると意外とうまくいくようになった(笑)。使いこなしの経験やテクニックが、当時はまだ十分に備わっていなかったということでしょう。お恥ずかしい話ですが。

土井 確かに、最近の取材で使うことの多いアルテックH825のチューニングはこなれてきましたね。ただ、今回のジェンセン・タイプE用のチューニングは少し手間取りました。吸音材は、底面と片方の側面に貼ってありましたが、底面を外して側面のみとしました。吸音材に使われているのは、陶磁器を梱包するための紙です。普段私がやるように、ティシュペーパーやガーゼ、特にガーゼを使っても良い効果が出るのではないかと思います。吸音材は、入れすぎると窮屈な音になるので注意が必要です。

 早速、試聴を始めましょう。

《2ウェイ・セッティング》
・励磁型46cmウーファー :モーショグラフSE7034(+励磁電源SE7520)
・パーマネント型ドライバー+ホーン: ジェンセンXP101+P8-151
・エンクロージュア: ジェンセンType“E”System エンクロージュア(W.S.I.製レプリカ)

ジェンセンType“E”System エンクロージュア
ジェンセン「プロフェッショナル シリーズ」のType“E”Systemにおいて採用されたエンクロージュアで2ウェイを構築した。Type“E”Systemは18インチ径ウーファーPLM18A、PLJ18とドライバーユニットXP101+P8-151金属製ホーンの組合せ。また、15インチ径サブバッフルを使用することで、P15NLやP15LLウーファーとXP101+P8-151を組み合わせた2ウェイシステムにも採用されていた。(土井)

モーショグラフSE7034ウーファー+SE7520電源

18インチウーファーSE7034は1938年に登場したミラフォニック・サウンドシステム、M7を構成するSE7508スピーカーシステムに採用されたユニットで、フィールド電圧24V/1Aという仕様。このユニットは40年以上前に私自身が使用したことがあり、久しぶりの対面となる。当時は完全に使いこなしたとはいえず、果たして今回の試聴で使いこなせるか興味深い取材といえる。組み合わせたパワーサプライはタンガーバルブ4B-28を2本使用したSE7520電源で、24V/1AをそれぞれのSE7034に供給している。また、本機はミラフォニック・サウンド システムM10、M10 Dualなどで使用されたパワーアンプTA7467A(300A・PP、出力15W)と同じ金属ケースに納められている。(土井)

SE7520電源

《試聴の方法》
46cm口径の励磁型ウーファーのモーショグラフSE7034をバスレフ型のジェンセンType“E”Systemエンクロージュアにマウント。J.C.モリソン方式ネットワークを使ってパーマネント型ドライバー+ホーン5種を組み合わせ、2ウェイを構築した。低域用と中高域用のアンプは別掲の3機種である。試聴しながら、J.C.モリソン方式ネットワークを使った低域側の音量調整、エンクロージュアの天板に配置したドライバー+ホーンの位置調整、ドライバー側への追加などを行ない、ベストの鳴り方を探った。

J.C.モリソン方式ネットワーク

2ウェイを低域用/中高域用パワーアンプでマルチ駆動するために、J.C.モリソン方式ネットワークを活用した。J.C.モリソン方式ネットワークは、カットオフ周波数に必要な容量のコンデンサーと、1対1のトランス、低域用の音量コントロールで構成。中高域用パワーアンプのスピーカー出力からJ.C.モリソン方式ネットワークに信号入力し、ハイカット用コンデンサーの両端に接続された1対1のトランスから低域信号を取り出し、ボリュウムを経由して低域用パワーアンプへ送る方式。2019年に特許取得済みで、試聴では、特許取得者から特別に許可を受けてウエスタン サウンド インクが製作したネットワークを使用。採用トランスやコンデンサーで音質が左右されるため、コンデンサーに米国製オイルコンデンサーとWEフィルムコンデンサーで容量合わせを行ない、1対1のトランスはWE119タイプを採用。配線材はWE20GA単線を使用。音量コントロールのVRは米国メーカーCTS社製である(編集部)

《組み合わせたユニットとパワーアンプ》

・励磁型46cmウーファー:モーショグラフSE7034(+励磁電源SE7520)
・エンクロージュア:ジェンセンType“E”Systemエンクロージュア

パーマネント型ドライバー+ホーン

 ① JBL LE75+H91
 ② アルテック802C+H811
 ③ アルテック288B+1005B
 ④ JBL 2440+2397
 ⑤ ジェンセンXP101+P8-151

パワーアンプ

IPC AM1027  6L6プッシュプル

「シンプレックスシアターシステム」で活躍したIPC AM1027は1949年に登場したパワーアンプ。出力段は6L6をpp動作として出力20Wを得ている。「シンプレックスシアターシステム」で採用されたスピーカーユニットはアルテック515ウーファーや288ドライバーであった。本機はアルテック1520T同様、本誌の試聴で登場回数が多いアンプである(土井)

アルテック1520T  6L6プッシュプル

 1520Tは1953年に登場したパワーアンプで、出力段は6L6のpp動作で出力35Wを得ている。同時期に出力段6146・pp動作で出力70Wのパワーアンプ1530も登場した。本機は末尾にTが付けられているが、Aの付いたモデルも存在する。Aは2チャンネルのマイク入力用プリアンプ1510Aまたは1511Aが搭載されたモデルで、本機Tはプリアンプスペースにブランクパネルが取り付けられて、入力トランス4651を載せ、入力インピーダンス15kΩ受けとしたアンプである(土井)

ウェスタン・エレクトリック143A  350B(6L6)パラレルプッシュプル

 1947年に登場した143アンプには、143Aベーシックアンプ、143Bアンプとして(143A+141A)の組合せ、143Cアンプとして(143A+618Dラインコイル)の組合せの、3モデルが存在する。使用球は6SN7×4、350B/
6L6×4、OC3/VR105×1、整流管に5R4GY×2という仕様で、350B使用時の出力は75W、6L6使用時は出力50Wが得られる。その切替方法は、B電源の取り出しの接続を変えることによる(土井)

《試聴に使用した機器》

[プリアンプ]アルテック1567A

[CDプレーヤー]スチューダーA730

機種解説
●土井雄三/杉井真人

取材協力
●ウエスタン サウンド インク ☎03(3370)7400
●杉井真人

・Part.2は、2月7日の12時に公開予定です。