試聴を終えて
コンデンサーひとつで2ウェイの音が格段に変化した。シンプルであると同時に、調整の道筋も多岐にわたる
杉井 最初は心配もありましたが、コンデンサーひとつ変えるだけで想像を超える音の変化があり、驚きました。075とD130の組合せに対するコンデンサーのマッチングのよしあしはありますから、他の装置で違う結果になる可能性はもちろんあります。使われていた装置と時代が合うコンデンサーがうまくマッチする結果になった気もしますが、現行製品にも素晴らしい音が聴けたものがあったのは発見です。個人的には、一番聴き慣れたブラックビューティーの音が、もっとも納得できました。現行製品の中ではソーレンがこのシステムにはダントツで合うと思いましたね。うまく中庸を行く感じだったアリゾナ・キャパシターズも良かったですし、個性的なデュエルンドも、ひじょうに良い音がしました。
新 私は075と2405を使うのを止めて20年くらい経ちます。当時使っていた075の鳴り方と今日の鳴り方とは、ずいぶんと違いました。デュエルンドを使った075+D130は素晴らしい鳴り方で驚きました。試聴は実に有意義でしたね。なかにはJBLがアルテックのように鳴るというコンデンサーもありましたが、そういうことも実験してみないと分からないですから。
岡田 最初にD130をフルレンジで聴いてとても完成度が高く、これに075を足すのはどうかと思って聴き始めましたが、最初から音がいいんですよ。075の置き方など、セッティングはひじょうに上手くいっていましたね。今日の状態なら、どのコンデンサーも使えるだろうという結果で、大きな発見でした。各々特徴があり、良さがある。面白かったのは、高域を足しているだけなのに中低域まで変わってきたことです。JBL075を使ったシステムで「パガニーニ」をこれだけ綺麗に聴けたというのは初めての経験です。先入観にとらわれずに、皆さんにも試していただきたいですね。
杉井 純正のJBL製ネットワークを使うのでなく、コンデンサーでローカットするだけという、まったく違うアプローチで試したことで、D130と07
5の可能性を引き出せたように思います。種別の違いでいえば、フィルムコンの方が今様のハイファイ調で高域が細身になる傾向、オイルコンは音が太くなるという傾向があったかと思います。
──コンデンサーによるローカットは、フルレンジユニットに高域を足したいというときに、取り組みやすい手法と言ってよいのでしょうか。
岡田 奥は深いんです。まず、トゥイーターのレベル調整が上手くいっていたことが、素直な音が得られた大前提だったはずです。そして、周波数特性にディップが発生しないように、配置を位相調整など他にも追い込む部分が数多くあります。
杉井 メーカー製のマルチウェイスピーカーやネットワークの場合、コイルとコンデンサーを組み合わせてスロープ−12 dBでクロスするといった手法が一般的ですが、自作でそれをするとなると調整の難易度は高いですよね。コンデンサーだけでなくコイルも加える、音決めの要素がいっそう複雑になります。コンデンサーによるローカットだけで音が作れれば、取り組みやすさはあると思います。
新 きょうはトゥイーターを足しても、良質のフルレンジにいちばん近い感じで聴けたように思います。
岡田 あからさまに足したという感じがないのがいいんでしょうね。「高域が補われているな」ぐらいが丁度いいのだと思いますが、075はなかなかそういうふうには聴けないトゥイーターですから。
新 プリアンプのトーンコントロールによる調整を加えれば、さらにいい音が作れるでしょうね。
岡田 実際に試す上では、トゥイーターに低域を入れて破損させることのないよう、コンデンサー容量に特に注意する必要があります。075はスロープ−12 dBで2.5kHzクロスですから、−6dBの場合は5kHzより上で切るようにすれば、トゥイーターを壊すことはまずありません。仮に3μFのコンデンサーで切ると、低域が多く含まれるソースでは大音量でトゥイーターを飛ばしてしまいます。
杉井 075やプロ用の2405は頑丈ではありますが、他のトゥイーターで試す場合、コンデンサーの容量決定には注意が必要ですね。
岡田 ヴィンテージのコンデンサーは容量抜けしているケースも多くありますから、LCRメーターなどで測定して、容量が変化しているものは除外するべきですね。そして、繰り返しになりますが、ユニットの位置関係に始まり、2ウェイとしての位相や周波数特性をきちんとセッティングできていることが、今日の手法を試す前提として重要です。チェックディスクのスイープ信号やピンクノイズを使った調整が理想的でしょう。コンデンサー1個でこれほど音が変わったことは驚きですし、自分の手で音を作る喜びも大きいはずです。皆さんも取り組んでいただけると嬉しいですね。
『管球王国』116号(2025 SPRING)より
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