コンデンサーによるローカットのみで、ヴィンテージJBL製15インチフルレンジユニットD130とホーントゥイーター075を組み合わせ、現行/ヴィンテージのコンデンサーの種別と銘柄による音の違いを探る。コンデンサー種別の考察と使い方のガイドも盛り込む実践試聴企画だ。

⑪双信電機 LCK78P501S105K-01

立ち上がりの切れ味鋭く、爽快感ある音。低域の力感が増して“良い歪み”を感じる

双信電機 LCK78P501S105K-01

●静電容量/耐圧:1μF/500VAC●構造/用途:スナバ用フィルムコンデンサー●取材協力 岡田氏

──こちらも⑨と同様、1μFを片chあたり2個並列に接続して、2μFでお聴きいただきました。

岡田 ACラインでスイッチを切ったときに残る大きな電圧をノイズキラーのようにカットするためのコンデンサーです。そのため、インダクタンス成分がひじょうに小さい。振動による爆発を避けるためにアルミホイルにフィルムを巻いて、きつく固めた構造になっています。なので、オン/オフを繰り返しても発熱しないという特徴があります。

杉井 双信というメーカー名からマイカコンかと思いましたが、フィルムコンにしては低域が豊かな感じがしました。先ほどのスプラグやサンガモに通じるけれども、その2つにあったJBL感やアルテック感というのがなく、日本的なんですが、その中で最上にバランスがいいですね。フィルムコンらしい、音の立ち上がりと立ち下がりの切れ味の良さを感じます。

 特に「パガニーニ」のヴァイオリンは剃刀でスッと切ったような鋭い切れ味で、もう少し豊かに響いてもいいかなとも思いますが、独特の音の魅力があります。それでいて、音楽として違和感がない。ちょっと個性的な音で聴きたいというときに楽しめる気がします。

 ふつうの音とは違いますが、これも良いですね。偶数次高調波歪みが多い真空管や回路を選ぶとこういう音になります。日本のアンプ作りの先達たちがかつてNFBをかけなければだめだということを書いていましたが、私がオランダのフィリップスにいた頃に、初めて話をしたプロデューサーから「お前、アンプ作るんだってな。歪みなんか気にしてちゃだめだぞ。オーケストラの歪みなんて40%、50%はざらなんだから、歪みが多い少ないという考えはアンプ製作から取り去れ!」とほんの10分ぐらいの立ち話の中で言われました。以来、自分で作るアンプではNFBをかけないようにしています。そうすると、まさに今聴いたような音になるんです。

岡田 今の新さんのお話を聞いて納得したのですが、「ブルーベック」を聴いたときに、低音の感じが違っていて、お腹に響いてくるんです。ソースに入っている音はこんな感じではないのでは? と思いましたが、そこに何か足されている要素があるのかもしれませんね。「パガニーニ」でも、前2つのヴィンテージの世界とは対極にあって、すっきりした音は現代のフィルムコンに通じる要素だけれども、これは低域に力があって、興味深く聴いていました。

 結局のところ、今日やっていることは全部コンデンサーの歪みの成分と量の問題だと思うんです。良い歪みと悪い歪みがあるとしたら、良い歪みがこのコンデンサーにはあるのだと思います。耳に心地よい歪みがきちんと出ているなと。

岡田 そうですね。今日聴いたそれぞれのコンデンサーに言えることかもしれません。

⑫ウェスタン・エレクトリック 139A

凝縮された音楽の熱気が体に浸みこむ。WEならではの唯一無二の世界が展開

ウェスタン・エレクトリック 139A(戦前タイプ)

●静電容量/耐圧:2μF/500VDC●構造:ペーパーインオイルコンデンサー●取材協力 杉井氏

杉井 1933年頃に登場したWEのワイドレンジシステムで、597Aボストウィック・トゥイーターを15Aや22Aホーンに追加するときに使用するネットワークに採用されたローカット用コンデンサーです。075の音がどこか597Aの音に近くなりますし、D130もTA4151Aのような、フィールド型のひじょうにタイトで質のいいウーファーの音に感じました。全体の音圧は下がりますが、そこに何か音楽が凝縮されているような感じを受けます。

 「ブルーベック」では、量感ではなく質で聴かせるという意味で、充実した低音が感じられました。「パガニーニ」では、オーケストラが入ってくると、音楽が一気に爆発するようで、内に秘めた情感のようなものが伝わってきます。これはもっと音量を上げるともの凄い音がするんじゃないかという気がしますね。「アーメリング」は静かなんだけれども、同様に内に秘めたエネルギーを感じて、これはWE143アンプの音の出方に通じるものがあります。アルテックのアンプとJBLのスピーカーという組合せで、コンデンサーひとつ替えただけでWEの質感が出るいうのはとても面白いですね。

 今の杉井さんのお話を聞いて、私も思うところがあったのですが、このコンデンサーを通すと先ほどお話しした偶数次高調波歪みが強調されるような気がします。特に「パガニーニ」のヴァイオリンが、これまでと線の太さが違って聴こえました。やはり、高調波成分の多さが音楽を少し楽しくしてくれるのではないかなと思いました。こんなに濁った音は嫌だという人も、たくさんいると思うんですが、そもそも生演奏は歪みの塊だと思えば、今のような音にも十分納得ができる。かえって何もない、正弦波で演奏しているような音ではつまらなくて、すぐに止めたくなると思うんです。

岡田 杉井さんから音圧が下がるとのお話がありましたが、音圧は低いけれども身体に浸みこんでくるという感じがします。やはり他のコンデンサーと何かが違います。一番は、中音域の充実度でしょうか。「ブルーベック」では熱気がある雰囲気が感じられますし、「パガニーニ」は、ヴァイオリンの音が曲の中心なんだという雰囲気が出ています。「アーメリング」はピアノのサイズまで感じられました。

WE 139A(戦後タイプ)

杉井 まず、戦前40年代のWE139Aを聴いたんですが、139Aは時代によって音が違っていて、筐体も戦前が銀色、戦後がグレーです。続けて戦後タイプの139Aを聴きました。こちらは若干音圧が上がりました。戦前タイプは映像的にセピア調というか白黒映画のイメージで、戦後タイプはカラー映画のような感じがする。スプラグに少し近づく感じはあります。音楽を聴くという意味では、これはやはり凄い音なのではないかと。趣味としてWE的な音を志向するかどうかは人それぞれであるように、139Aを良いと感じるかどうかは人によって分かれると思います。今日聴いた12種の中でベストとは言いませんが、WEの存在を感じるという意味ではとても意義があると思いますね。

岡田 戦後タイプでも、極端に音の傾向は変わらないですね。最後は、前の11機種のコンデンサーとはまったく異なる世界が現れて、やはりWEは面白いなと思いました。