ヴィンテージ編
⑨スプラグ 4TM-M1 Black Beauty
JBLがアルテックに変わったよう。演奏に脂が乗り、情感が醸し出される
スプラグ 4TM-M1 Black Beauty
●静電容量/耐圧:1μF/400VDC●構造:ペーパーインオイルコンデンサー●誘電体:ペーパー+ポリエステル●取材協力 杉井氏
──ここからはヴィンテージのコンデンサーを聴いていきます。スプラグは静電容量1μFを片chあたり2個並列に接続して、静電容量2μFで試聴していただきました。
杉井 カラーコードのバンブルビーの時代から入れると膨大な数のオイルペーパーコンデンサーをスプラグは作っていまして、真空管アンプの時代はずっと現役だった製品です。マッキントッシュのアンプは40年代の終盤から60年代初頭までバンブルビーで、それ以降はブラックビューティーです。アルテックの1568、9辺りは60年代中盤から71年あたりまでブラックビューティーをカップリングに使っています。期待を裏切ることなく、良かったですね。
新 聴き始めてすぐに、スピーカーがJBLからアルテックに変わったような感じがしました。杉井さんのお話を聞いて、なるほどと思ったのですが、いずれにしても私もいちばんしっくりきた音ですね。
杉井 「ブルーベック」はサックスの情感と彫りの深さが初めて聴けたように思います。やはり、時代や国といった要素が揃うと音も決まるなと。どの曲を聴いても、エキサイティングというか、演奏に脂が乗っている感じがしますね。現行のスピーカーと組み合わせたときの効果は未知数ですが、新さんが仰るように、アルテック的できょう聴いた中では一番好きな音です。
新 「ブルーベック」を聴くと、音に輝きがあり、実体感が出るんです。より大型のスピーカーに匹敵するような豊かなサウンドだったと思います。『管球王国』創刊時から聴いてきた“いい音”が、まさにこの音です。先ほどまで聴いた音が少し違うなと感じるくらい。たった1個のコンデンサーでこれだけ音が変わるというのは、得難い体験です。
「ブルーベック」はさんざん聴いた音源ですが、今聴いた音が、当時このレコードを作っていた時代に聴いた音です。まだ20代でしたが、わざわざカッティングルームまで行って、制作現場に立ち会ってこの音にしてください、とお願いした経験があるんですよ。その時の音がスピーカーから出てきて、驚きました。「パガニーニ」のヴァイオリンの音は少しイメージからずれるところがありますが、「アーメリング」は、エリーの素の声がこういう声で、演奏家の情感がよく醸し出されています。
岡田 やはり聴き慣れた音なんですよね。ハイファイな音とは違って、このレンジ感が個人的にしっくりくるんです。音だけで人が演奏していることが強く感じられて、すごく面白いと思います。こういうペーパーインオイル形式のコンデンサーは今となっては貴重です。「パガニーニ」のヴァイオリンに関しては、私もちょっと違う感じがしましたが、今日聴いたコンデンサーの中では一番JBLにマッチしていた気がします。
⑩サンガモ CP53B1EF205K
中域の量感が増し、線が太く芳醇な音に。JBL製ユニットの魅力が十分に表れる
サンガモ CP53B1EF205K
●静電容量/耐圧:2μF/600VDC●構造:オイルコンデンサー●取材協力 岡田氏
杉井 バスタブ型のコンデンサーはアルテックだとN3000というネットワークの古いタイプに使われていて、602A/Bの時代は耐圧50V/2μFのバスタブ型のオイルコンを使っています。
岡田 基本的には軍用機器の補修部品で、コリンズやハマーランドの通信機でも使われていたコンデンサーです。同じ型番でもエアロボックスやウェストキャップ製のものがあり、作りにも違いがあります。
杉井 ⑨のブラックビューティーはアルテックのような音でしたが、これは完全にJBLの音ですね。それもD130と075の間に375が入ったように中域が豊かで逞しい。075と同等のトゥイーターを使った70年代のモニター系の音ではなくて、50年代に登場した家庭用のパラゴンやハーツフィールドの音を想起させました。
「パガニーニ」を聴くと075が足されているというよりD130がフルレンジで鳴っているようなバランスの良さです。中域のエネルギーがしっかりとしているので、「アーメリング」の歌唱も豊かで芳醇。JBLの音が好きな人にはたまらない音ですね。
新 レコードを聴くときは再生装置以前に、これを作るときにどんな装置を使ったかということを最初に考えます。「ブルーベック」はアメリカのコロンビアから日本に送られてきたマスターテープを使って、カッティングからプレイバックまでウェストレックスの針で作りました。サンガモはアメリカ系ですから、このレコードとスピーカーにぴったり合っていて、心地よく音楽を聴けました。
スプラグではアルテックが鳴っているという感じで、サンガモではやはりJBLの香りが強い。十分に魅力的ですが、全体の聴こえ方としてはスプラグの方が魅力が上回っている気もします。
岡田 太めの音は、075+D130そのものの魅力だと思います。そこがうまく引き出されていると思いました。ただ「パガニーニ」のヴァイオリンなどは線が太すぎるところもあるし、「アーメリング」の声ももう少し細身で、すっきり聴けたほうがいいという感じもします。濃厚な音が好みならぴったりだと思いますが、同じようなアメリカ製コンデンサーでも、2つ並べて聴くとはっきりと分かる違いが出て、面白いですね。