1957年に完成したオリジナル機トーレンスTD124の雰囲気を驚くほどに醸し出しながら、トーンアームまですべてが新規設計されたアナログプレーヤーだ。

世界中に愛用者がいるオリジナル機のフォルムを忠実に再現

三浦孝仁

 トーレンスを代表するターンテーブルの筆頭に挙げられるのは、おそらくTD124ではなかろうか。モーターからベルト駆動されたプーリーがアイドラーを介してプラッターを回す機構は、高トルクを維持しながらモーターの振動を効果的に遮断する巧妙な構造だった。それを68年前の1957年に完成させていたのだから凄い。ラジオ局などの業務用として設計された堅牢さもTD124の特徴であり、今も世界中に愛用者がいる。

 ここで紹介するTD124DDは、オリジナル機のフォルムを忠実に再現したダイレクトドライブ(DD)機。DD方式による、最新のアナログプレーヤーなのである。現在のトーレンスは、2018年に新CEOになったグンター・キュルテン氏が主宰している。彼はデノンのドイツ支社を経てエラックの社長になり、その職を辞してトーレンスのCEOに就任したというオーディオ好きの人物。このTD124DDは、長年にわたりオーディオに関わってきた彼が企画したようである。

9インチアームTP124も新規設計。ダイナミックバランス型で、軸受け部トップのスライドダイアルで針圧調整が可能。トップカバーの内部にはアジマス調整機構を装備する。インサイドフォースの調整は糸のかけ替えで行なう。アームボードフロント側のノブで操作する電動リフターを装備。プラッターはスピンドル部にEP盤用アダプターを内蔵する。

トーンアームも往年のモデルを彷彿。電源部は別筐体で誘導ノイズと熱に対策する

 まったくの新規設計なのだが、ここまでオリジナル機の雰囲気を醸し出しているのは驚異的といえる。4カ所ある高さ微調整の機構やスピード切り換えのノブに加えて、センタースピンドルに組み込まれたドーナツ盤用のアダプターとマットの形状などはオリジナルのI型あるいはII型にそっくり。さすがに78回転と16回転は省略されているけれども、問題にはならないだろう。

 搭載されているトーンアームのTP124は、ダイナミックバランス型。こちらもオリジナルのトーレンス製BTD12SやTP14を彷彿とさせる。インサイドフォースキャンセラーがあり、型番からするとTP14のオマージュか? リフターは小型モーターを回す特許取得の電動タイプ。オルトフォンのSPUにも対応できる2種類のカウンターウェイトが付属する。RCAとXLRの両方を装備した出力端子は先進的といえる。

 ストロボスコープを装備するプラッターは3.5キロの重量。その素材はアルミニウム製なので非磁性である。オリジナルは当初は鉄製のプラッターだったので、フォノカートリッジがプラッターに引き寄せられることがあった。新たな12極のDD方式モーターには、Delrin(デュポン社が開発したPOM=ポリアセタール樹脂)のベアリングが使われているという。4極のインダクションモーターを搭載したオリジナルのTD124は電源トランスが不要だったが、DD方式の本機は電源部を別筐体にして誘導ノイズと熱の対策を講じている。

プラッターを外した状態。高精度12極モーターによるダイレクトドライブ型。電源部は独立筐体で、駆動電源はパルス幅変調(PWM)によって制御される。本体シャーシフロント側のダイヤル2基のうち、0の目盛りが付された左側のダイヤルが速度調整用。左に見えるノブで電気式のクイックスタート機構を操作できる。

キャビネットのリアにRCAアンバランスとXLRバランスの出力端子を装備する。その右が電源部の接続端子。本体シャーシはゴムブッシュでフローティング支持され、リアの2基を含め計4基のダイヤルで水平の調整が可能。

プラッターはアルミ製。78回転用を含むストロボパターンはオリジナル機の鋳鉄製プラッターのものを踏襲している。

キックドラムとベースのリズムが締まり、タンバリンの音色がクリアーに響く

 TD124DDは、本誌試聴室のリファレンス環境で聴いている。フォノイコライザーアンプにはウエスギU・BROS220Rを使い、最初はフェーズメーションのMC型PP2000を装着して鳴らしてみた。

 起動時のトルクが高く設定されているようで、すぐに定速となる小気味良い回転動作だ。デイブ・グルーシンのダイレクト盤では、無音溝でDD方式ならではの静寂感が漂い、切れ込みの鋭い音を聴かせてくれた。クラシカルなフォルムを裏切るような現代的サウンドを聴かせるプレーヤーである。音場空間も適度に広がっており、個人的な聴きどころであるタンバリンの音色もクリアーに響いてくる。アンセルメ指揮「三角帽子」は、やや重心が低い安定した演奏の展開になって臨場感もじゅうぶん。ジェニファー・ウォーンズ「フェイマス・ブルー・レインコート」では、キックドラムとベースが刻むリズムが締まっていて、しかも量感も確保している。ヴォーカル音像もソリッドに描かれているので、私は搭載する9インチ長トーンアームの剛性が高いのだろうと思っている。

 レトロな雰囲気にも相応しいと考えてオルトフォンのSPUから昇圧トランス内蔵のGTE105を組み合わせて音を聴いてみた。さきほどのPP2000よりも中低域が太めのエネルギーバランスに感じられ、バーンスタイン指揮「キャンディード」は、落ち着いた音調ながらも曲の特徴である煌びやかさや躍動感が伝わる重厚さで愉しませる。ルー・タバキンのダイレクト盤「トラッキン」で鳴り響くテナーサックスの咆哮にも勢いがあり、音を面で押してくる厚みが印象的だった。

 TD124DDは、アイコニックな外観と現代的サウンドが融合したユニークな製品だ。DD方式への賛否があるだろうが、私は復刻するうえでの最善策だったと思っている。

オルトフォンがスウェーデン・ルンダールと共同開発した昇圧トランスを内蔵し、出力電圧は4mV。自重は34g。r/R=8/18μmの楕円針を採用する。ABS樹脂製のGシェルも新規設計品。

試聴に使用したMCカートリッジ
オルトフォン SPU GTE 105
¥190,000
●問合せ先:オルトフォンジャパン(株)☎03(3818)5243

Record Player System
トーレンス TD124DD
¥1,800,000

トーンアーム部(TP124)
●型式:ダイナミックバランス型
●スピンドル/ピボット間:215mm
●適合カートリッジ重量:小ウェイト=3〜16g/15.8〜28.8g(ヘッドシェル、リード線含む)、大ウェイト=8〜30g/20.8〜42.8g(同) 

ターンテーブル部(TD124 DD)
●駆動方式:ダイレクトドライブ
●回転数:33・1/3、45rpm
●プラッター:アルミニウム/自重3.5kg
●寸法/重量:本体部W425×H185×D350mm/17kg、電源部(TPN124)W105×H78×D239/1.7kg
●備考:ヘッドシェル、カウンターウェイト2種付属。写真のカートリッジは別売
●問合せ先:(株)PDN☎045(340)5565

『管球王国』116号(2025 SPRING)より