高真空と平均寿命4万時間の達成
岡田 章
本年の3月よりウェスタン・エレクトリック(WE)300Bの販売を完実電気株式会社が行なうことになった。戻ったと書いた方がいいかもしれない。WE300Bは1988年にいったん生産終了されたが、国内ファンの要望により1997年に再生産。2006年に再び生産停止するまで、輸入総代理店となっていたからだ。新生WE300Bについては2021年の本誌102号に速報記事を執筆した。不足分やその後の情報を含め、深耕したい。
米国WEは2018年にロスヴィルに新工場を建設し、WE300Bを復活させた。そのホームページには、規格などの情報のほかYouTube動画も多数アップされている。驚くことに、かつて情報がほとんどなく、規格さえ不明な点が多かったWE300Bの製造の様子や実際の工程など、以前は「極秘」であったことさえもはっきりと見て取れる。
グリッドは、時代物の巻線機が使われ、水素アニールの工程後、厳しく寸法検査される。金メッキがされていないのにグリッド電流が流れにくい理由が見える。ノウハウの塊であるフィラメントは、バリウムとストロンチウムの炭酸塩に粘着剤を混ぜ、ボールミルで粉砕・混合し微細なスラリーとして、フィラメントリボンに段階的に塗布乾燥し、切断・成形する工程までが見られ、旧式機械によるステムのガラス部作成、ステムマウント溶接、ガラス封入、プレートを高周波加熱しながらの真空引きなどほとんどすべての工程が分かる。
一方、バーニングや電気的検査やペア取りは、コンピューターによる自動化が導入され、WE伝統のしっかりした品質管理も窺える。
最新WE300Bの電極。吊り構造のフィラメントと「おむすび型」のマイカ板形状が見て取れる。渋めのシルバーの光沢を持つプレートは先端素材であるグラフェンでコーティングされている。本ページのメイン写真が構成パーツ類だ。
プレート材は5Nの高純度ニッケル。
最新のターボ分子真空ポンプが投入される
しかし、プレートについてのみは、あまり触れていない。それは炭素原子が網目のように六角形のシート状になったグラフェンを使用した熱放射率と電気伝導度に優れた表面処理が特許申請中のためだと思う。新生WE300Bを見ると、誰でもプレートの色が変わったことに気が付くだろう。完実電気のご厚意で、実際のプレートパーツを確認することができた。旧い金型でプレスされた独特な4本のリブ付きの表面は艶があり緻密で、従来の真っ黒なグラファイト系処理とは異なる。再生産期のWE300Bと比べ改良が進んでいる。
高真空化のため、プレート材に5N(99.999%)の高純度ニッケルを使用し、ガラス材の洗浄と焼き出し、クリーンルームの使用など脱ガス対策を行ない、最新のターボ分子真空ポンプの使用により、従来品より20倍低い2×10マイナス6乗Torrの高真空とし、公表定格内で動作させた場合の平均寿命は4万時間を達成している。
こうして、保証書で90日間、専用サイト登録で5年間まで保証が延長される。また、2本ペアセットおよび4本クアッドセットも用意されている。一方で、公表定格はオリジナルのWE300A/Bに添付されていた注意書きの動作例と同じで、最大定格はEp=450V、Ip=60mAであることには注意したい。オリジナル定格を引き継ぎ、品質において現代的な進化を遂げた300Bなのである。
1997年のWEカタログ。右が再生産開始当時の完実電気のWE300Bパンフレットで、全盛期の製品の規格と性能の再現が謳われている。
ウェスタン・エレクトリック(WesternElectric)300B
WE300B
¥100,000(1本、木箱なし)
WE300B-MP-BOX
¥210,000(マッチドペア2本、木箱入り)
WE300B-MQ-BOX
¥440,000(マッチドクアッド4本、木箱入り)
●問合せ先:完実電気(株)☎050(3388)6838