落ち着いてクリーンな音の出方は特筆。ヴァイオリンの陰影と色彩美も魅力的だ
三浦孝仁
半導体企業の出身である唐木志延夫氏は回路設計者であり、熱心なオーディオファイルであり、そして楽器演奏者でもある。真空管ならではの音質をリスペクトしている彼は、2010年にオーロラサウンドを興した。以降、趣味性が高く個性的なオーディオ製品を世に送り出している。
ここで紹介する新製品のHFSA02は、オーロラサウンドとして初めてとなるオール真空管のインテグレーテッドアンプだ。たとえば直熱3極管300BプッシュプルのモノーラルアンプPADA300Bは、前段が半導体構成で出力段のみ真空管増幅という半導体/真空管のハイブリッド構成である。同じように、インテグレーテッド機のHFSA01は5極管EL84/6BQ5のプッシュプル構成で、やはり前段は半導体回路で仕上げていた。それが本機では、伝統的といえるオール真空管の構成。オーロラサウンド初の全段管球式なのだ。
HFSA02は基本的にインテグレーテッド機であるが、オプションでパワーアンプ仕様やMM対応フォノイコライザーアンプを内蔵する仕様、そしてバランス入力を備えた仕様も用意されるという。ここではRCA端子4系統のライン入力という、標準的なインテグレーテッド機の仕様で聴いている。
オーロラサウンドの製品は海外市場でも販売されており、優れた諸性能と動作安定性の高さから人気を博していると聞く。オール真空管のインテグレーテッドアンプは海外からのリクエストがきっかけらしいが、オーロラサウンドの音質水準で仕上げるべく、試作を繰り返しながらまとめていったという。
全段真空管で回路を構成するインテグレーテッドアンプ/パワーアンプは同社初。初段は12AX7パラレルで、12AU7によるムラード型位相反転段、EL34プッシュプル出力段の構成。出力段UL接続・自己バイアス動作で31W+31Wの出力を得る。出力管ソケット部のテスターポイントでバイアス電流のモニターが可能だ。リア側には、カスタムメイドの国産電源トランスとチョークコイル、瑞ルンダール製の出力トランスを配置。22mm厚の無垢カエデ材フレームと4mm厚アルミニウムの天板と組み合わせることで、シャーシ全体の剛性を高めている。セレクターとボリュウムのノブも木製。
内部はプリント基板を活用しながら手配線で構成。パーツ類の吟味を重ね、カップリング用フィルムコンデンサーはWIMA、電解コンデンサーはTDK-EPCOS製を採用。抵抗器はVishay、PRP、タクマン製を組み合わせ、銅箔の厚みを増やしたプリント基板の採用など、音質と安定性を追求した。B電源整流回路はローム製SiCショットキーバリアダイオード採用でチョーク濾波。
初段は12AX7パラレル、位相反転段は12AU7で構成
試聴機はエレクトロ・ハーモニックスのEL34を搭載していた。いわゆるムラード型の位相反転段とウルトラリニア出力段回路を採用しながら、オーロラサウンドの製品らしくSN比や全高調波歪みなどの物理特性を追求したという。初段は12AX7のパラレル動作になっており、高いSN比と低歪率を確保しながら次段となる位相反転段の12AU7に低インピーダンスで音声信号を送っている。プッシュプル構成のEL34はスウェーデンのルンダール・トランスフォーマーズ製の出力トランスと組み合わされ、31W+31Wのパワーを獲得。金属製のトランスケースもルンダール製である。
品質と信頼性にこだわり、固定抵抗器にはヴィシェイやPRP、国産のTAKUMANを使用。フィルムコンデンサーには独WIMAを、電解コンデンサーには独TDK-EPCOSを採用している。半導体構成による整流回路のダイオードには、ローム製シリコンカーバイドの素子を奢った。電源トランスとチョークコイルはオーロラサウンドの国産カスタム仕様とのこと。個人的に興味深かったのは、放熱器を兼ねているトップカバーだ。4ミリ厚のアルミニウム製で、真空管と電源トランスが発する熱を40℃ほどで安定的に放出している。本機のフレーム部分は22ミリ厚のメイプル無垢材ということだ。
リアビュー。通常仕様の入力端子はLINE(RCAアンバランス)4系統。スピーカー出力端子は1系統のみで、4~8Ωに対応する。
ジャズは力強く抑揚豊かで、音離れの良さも秀逸
HFSA02は本誌試聴室で聴いている。モニタースピーカーはB&W801D4シグネチュア、DELAのN1とアキュフェーズDC1000をUSB接続としたデジタルファイルの送り出しである。
質感がきわめて高く、落ち着いた音を聴かせてくれる真空管アンプだ。CDリッピングの石塚まみ「みずいろの雨」は、声色の瑞々しさと表情の細やかさで魅せる。ピアノは濃厚で音色の複雑さもじゅうぶんに得られており、レンジ感も不足ないバランスの良さを感じさせた。ブランフォード・マルサリス「ビロンギング」は、演奏の力強さと抑揚感の豊かさで鮮やかに展開される。音離れの良さも特筆できるし、一音一音に付帯音がまとわりつかないクリーンな出音が好ましい。
ムターが弾くヴァイオリンの、陰影豊かな表現と色彩的な美しさも素晴らしかった。オーロラサウンド初のオール真空管アンプHFSA02は、魅力的な音を奏でる注目作だ。
開発中のオプション入力パネル。リア側の入力パネルは前述の通常仕様のほか①ライン専用:XLRバランス×1、RCAアンバランス×3 ②フォノ入力あり:MM(RCAアンバランス)×1、RCAアンバランス×3 ③パワーアンプ仕様:XLRバランス×1、RCAアンバランス×1 の3種類に変更可能。パワーアンプ仕様ではフロントパネルも電源スイッチのみの専用品に変更される。
付属する真空管保護カバーはフロントパネルと同様のシルバー塗装が施され、外観意匠の統一感が保たれる。
同社の出力管EL34アンプはステレオパワーアンプPADA-EL34(2015年発売。現在は生産完了)以来約10年ぶり。PADA-EL34は入力段にトランジスターを用いたハイブリッド構成で、EL34パラレルプッシュプルの出力段とトランス結合する設計だった。
Integrated Amplifier
オーロラサウンド HFSA02
¥860,000(税抜)
●出力:31W+31W(8Ω)●入力端子:LINE 4系統(RCAアンバランス)●入力感度/インピーダンス:440mV/25kΩ●スピーカー出力端子:4~8Ω●使用真空管:12AX7(Electro-Harmonix)×2、12AU7(Electro-Harmonix)×2、EL34(Electro-Harmonix)×4●寸法/重量:W440×H228×D290/20kg●備考:入力パネルはLINE入力のみの標準仕様のほか、各種オプション入力パネルに変更可能●問合せ先:オーロラサウンド(株)☎045(953)6708