電源回路の整流管は、真空管アンプの音を決める上で大きな役割を果たす。新旧の整流管5U4GB/5U4Gを、かつて電蓄に内蔵されていたヴィンテージ6V6プッシュプル・パワーアンプ米国マグナボックス185AAを使って差し替え試聴。整流管1本の構成のステレオアンプでストレートに表れる音質の違いを探り、整流管差し替えの留意点も詳細解説する。

2 │ JJエレクトロニック 5U4GB

帯域バランスがよく、S/N感が向上。プログラムソースの音を十全に引き出す

JJエレクトロニック 5U4GB
●TV7試験値(実測値) 58/56 ●B電圧(実測値) 288V
¥3,480
テクソル

スロバキアのJJエレクトロニック製現行管。基本構造は米国系。リブのないアルミクラッド鉄製プレートはなめらかな表面で、スポット溶接で接合してある。フィラメントは平面リボンで自立式。材質が柔らかめのため、下部は小金属片を付けてしっかりと電気溶接している。マイカは独特の丸形で、アルミナ処理は薄い。ベースはRCA系より口径が小さく、丸い頭が特徴のバルブはやや背が高い。(岡田)

──TV7の試験値は先に聴いたエレクトロ・ハーモニックスより小さいですが、棄却値まではまだまだゆとりがあります。

 これはよい音だと思います。演奏の場を想像できるような響きが3曲すべてにありました。「ペギー・リー」はベニー・グッドマンとペギー・リーに焦点を当てて、六重奏団の他の部分は陰に隠れたような音の録り方をしていますが、その隠れた部分まできちんと聴こえてきます。音量を上げなくともしっかりと演っていることが全部伝わってくるというふうに聴こえました。整流管でこんなに変わるのかと、驚くところがありますね。

「ブレイキー」も、主役はドラムスですが、他の楽器の響きが濁らず、録音スタジオの中で展開している音がすべて聴こえてくるというような印象です。何度も聴いている音源ですが、出色の再生といってもいいでしょうね。「展覧会の絵」は世界一流のホールの響きと、レオポルド・ストコフスキー、ユージン・オーマンディの流れを汲んだ一流のオーケストラの響きが感じられる、よい再生だったと思います。

岡田 電極を見ると古い米国球を元にJJエレクトロニックが独自に作った構造です。「ペギー・リー」は瞬発力がありました。整流管の設計が難しいのは、本機でいえば出力管4本分の大電流が常に流れるということがあるわけです。そして、出力管とのいちばんの違いは逆電圧がかかる点。具体的には、整流管内で電圧降下、ドロップが起こるわけですが、降下量が大きいと音量も低下します。一方、平均的に流れている電流に対して瞬発力のある電流を流せるかどうか、カソードの材質が重要になるんです。

 このJJ球はピーク時の大きな変化に対応できるカソード設計だろうと思います。それがはっきりと出たのが「ブレイキー」で、ジャズらしい演奏の熱気が増した感じなんですよ。シンバルのアタック音がくっきりと見えて、先程のエレクトロ・ハーモニックスとはやはり異なります。「展覧会の絵」はメリハリが効いて、より静粛感が感じられる。幅広い音楽にしっかり対応できる、いい整流管ですね。

 エレクトロ・ハーモニックスは使い込んでいくうちに音が変わってくるかもしれないね。

杉井 確かにエージングの違いは音に出るだろうなと思いますね。最初の「ペギー・リー」ですが、エレクトロ・ハーモニックスではアメリカの歌手が歌っているという感じが薄かったように思うんです。それが、アメリカ的な陽気さ、“サニー・サイド”だからそうあってほしい陽性の感じが出てきました。ただし、底抜けに陽気なわけではなく、クールな部分も残っています。エレクトロ・ハーモニックスとの共通点としては、スクラッチノイズが楽音と一体化している感じがあるところ。ベンチマークで聴いたRCAでは、そこがしっかり分離していたんですよ。

 「ブレイキー」は、エレクトロ・ハーモニックスではクラシックの演奏家が即興演奏をしているような響き方を感じましたが、JJではジャズのミュージシャンという感じが出てきました。全体に明るくなりましたが、本来内包している熱気が迸るところまでは至らないという具合でしょうか。「展覧会の絵」も、エレクトロ・ハーモニックスが全体的にヨーロッパ的な、少し霧に包まれる感じのあるオーケストラの音だったのに対して、フィラデルフィア・サウンドといえるアメリカ的な音に少し近づいた感じがします。さらに明るく輝かしい音が加わってもいいのですが。帯域バランスはとてもいいですね。ヴィンテージ管よりも現行管のほうが、ワイドレンジ感が得やすいのではという感じもあります。

3 │ プスヴァン 5U4G

中域のエネルギー感が増して躍動的。6V6特有の小気味よさが際立つ

プスヴァン 5U4G
●TV7試験値(実測値) 62/60 ●B電圧(実測値) 295V
¥4,425
テクソル

中国のプスヴァン・ブランド製。RCA系の最後期型5U4Gの構造と規格を再現している。2つのプレート間隔はやや広く、少しつや消しの灰色のリブ付きアルミクラッド鉄製で、スポット溶接で支柱に溶接してある。フィラメントは補強リブのない柔らかめの平面リボンで自立式だが、上部マイカと接触する部分は白い酸化物を塗布していない。旧式のつまみステム部引き出し線の枝ぶりはよくできている。上部マイカは独特の丸形で、透明でアルミナ処理はしていない。ベース、バルブ形状はRCA系に近く、ヴィンテージ管に近い姿となっている。(岡田)

 プスヴァンは5U4Gですね。B電圧の測定値以上に、出力電圧が高そうな音に聴こえました。

杉井 確かに音量感が上がって聴こえました。

岡田 ステムは274A/Bのような格好です。5U4GBはフィラメントをリボンにして吊っていない構造が特徴で、コストダウンのために吊り構造を止めてしまったんです。その代わりにフィラメントを帯状にして、RCAなどは中央に筋を入れて補強しています。暖まってくると上に持ち上がってきて浮いたような状態になりますから、これは折衷案のような構造になっているわけです。この5U4Gは、現行管の中では素晴らしく綺麗な作りですね。ゲッターの飛ばし方もよく考えられて、まっすぐに飛んでいます。整流管ではゲッターはとても重要で、カソードに寄りすぎるとスパークするんです。

 ギターアンプにこの整流管を使えば、迫力が増して絶対に演奏がよく聴こえるだろうと思いました。音量がやや大きく聴こえて、すなわち、各々のソースの演奏の形がここまでとは少し変わったと思います。

 「ペギー・リー」は1941年のSP盤音源です。先の2本ではベニー・グッドマンとペギー・リーのバランスがよく取れていましたが、プスヴァンでは演奏の躍動感や迫力が増して、かなりソロが前に出てくる感じです。SP時代の録音であることが少し強調されすぎるきらいがあったかもしれません。「ブレイキー」「展覧会の絵」も、圧倒的な迫力のある演奏に変化したと思います。大迫力の演奏になりました。楽器への適性がある整流管というところはあるかもしれないですね。

岡田 最初の印象として、確かに音量感がわずかに大きいように感じられます。「ペギー・リー」は何か懐かしさが感じられる再生で面白かったです。先の2本に比べて迫力は増すのですが、中域が目立って、その分、低域はやや薄めの表現に変わりました。整流管で音楽全体の聴こえ方が変わってくるところがありそうだなと思わせます。「ブレイキー」を聴くと、もの凄い迫力があるんですが、重低音がちょっと薄い。言いかえると低域で音のカブりがなくなって明快傾向になる。それが躍動感につながって、そこはプラスに捉えられるかもしれませんし、ステレオ機の場合には中央に音が集まる印象が出てくるかもしれません。

 プレートとカソード間の距離を小さくしてパービアンスを上げることで出力電圧を平均的に上げているけれど、ピークでのカソードの力はJJの方がある。そんなことを考えながら「展覧会の絵」を聴くと、バランスよく聴こえるように感じるけれど、やはりちょっと硬質感がある。これは低音を抑えた音作りなのかもしれません。現行管ですからエージングで変わるかもしれませんが、効果的に使える整流管かなと思います。

杉井 全体に好印象ですが、私は音が大きく聴こえるというより、最初の出音が速いというか、立ち上がり立ち下がりが速いというように聴こえました。それでエネルギーが増しているように聴こえるのではないかと。このアンプ本来の音が出てきているようにも思いました。6V6の小気味好さがきちんと感じられるんですね。先の2本が楽器でいえばコンプレッション&サスティーンがかかった音だったのに対して、そういうものを外して、アタックの効いた、シールド1本だけでギターアンプを鳴らす感じに変化しました。

 「ペギー・リー」は中高域が目立って低音が足りないようにも感じましたが、「ブレイキー」と「展覧会の絵」に関してはローエンドも割と出ていました。「ブレイキー」のシンバルの音は少し金属の感じが薄くなってシャンシャンと軽く聴こえるところが気になりますが、バスドラムはズシンという低音で、キレもいい。「展覧会の絵」は爽快で切れ味がよいオーケストラで、アメリカ的な雰囲気は薄いですが、出てくる音にはオーディオ的快感があります。6V6が支配的になるような音かなと思いますね。

PART.1PART.3PART.4はこちらから。なお、PART.3、PART.4の記事は、それぞれ1月12日(PART.3)、1月14日(PART.4)の12時に公開します。