吉田伊織
高品質電子ボリュウムを新搭載し、伝送経路最短化など信号の純度を高める
トライオードは、現代的な多機能と真空管アンプの音質的な魅力を備えた製品を入手しやすい価格で提供することに尽力してきた。しかし高級機も手掛けてきたわけで、JUNONE(ジュノン)はさらに、理想追求型のハイグレード・ブランドとなる。
今回のJUNONE 845SEは2020年に発表された845Sの後継機であり、外観からもそれがうかがえる。しかし内容は別物だ。
電圧増幅段を12AU7パラレルとして845はプスヴァンWE300Bで励振
固定バイアスの845(トライオード銘)シングル出力、自己バイアスのプスヴァンWE300Bによるドライブという終段側の構成は同じ。電圧増幅段は従来SRPPだったのが12AU7のパラレルとなり、さらにその前段が12AU7の片ユニットというメインアンプの構成になっている、つまり3段アンプが4段となり、6Ωのみの出力端から初段にNFBがかけられている。このパワーアンプ部は独立使用が可能だ。
そのメインアンプの前のフラットアンプとして12AU7の片ユニットを使用。ここはNFBループ外にある。その前に音量調整が置かれるのだが、以前の機械ボリュウムのモーター駆動を止めて、音量調整IC、MUSES72323を採用している。その出力はICオペアンプ受け。ライン入力は機械接点リレーによって、使用していない入力は抵抗を介してアースに落としてクロストークノイズ対策としている。
全5段の真空管増幅段相互の結合はすべてコンデンサー結合ということも注目される。安定度を重視し、また全段に内部抵抗が低い3極管を用いて音質の統制を図っているわけだ。
1000V級の高電圧を作る電源部は、2つの独立巻線からの整流電圧を積み上げる方式であり、出力管以外に供給する低い電圧の方も含めてそれぞれチョークコイルで平滑している。また全段直流点灯方式だ。それとバイアス調整用のメーターは上面に移動。前面には大型のドット式LED表示窓が設けられ、視認性が良好。リモコンは音量調整、入力選択、消音、電源オンオフが可能。シャーシは前作より8㎝奥行きが伸びて部品配置のゆとりをもたせている。
フラットアンプ部、パワーアンプ部初段と電圧増幅段に12AU7を採用し、300Bで出力管845を励振するオール3極管の5段増幅回路。メインシャーシは鉄製で、トランス類と真空管は左右対称配置。出力管845は天板上のメーターを確認しながらバイアス調整が可能だ。ハムバランサーも天板上に装備する。
内部を見る。前モデルのJUNONE 845Sから奥行きを80mm伸長して、トランス類の重量を支える堅牢な構造と、電気的な相互干渉を抑える理想的な部品配置を実現したという。ボリュウムICには、0.25dBステップ制御まで可能な日清紡エレクトロニクスのMUSES72323を採用。カップリング用の独ムンドルフ製フィルムコンデンサーMCap Supreme Classicなど、高品質パーツが投入されている。
柔らかなタッチと豊かな音色を聴かせて211由来の精密感と純度感を表す
その音だが、同じ外観の送信管211は精密感と純度感に秀でているのが身上。それに対して、211の内部抵抗を半分以下にして音声出力管とした845は柔らかいタッチと豊かな音色の半面、純度感では見劣りする場合もあった。そこで、それらが両立する845アンプを実現するべきなのだが、本機はそれによく応えている。
LINE入力の音は、分離がよく明朗にして快活な鳴りっぷり。アマーロ・フレイタスの「Y’Y(イーエイーエ)」は、各種の打撃音が少しふっくらとしながら力強さを保って、長大な余韻の質感が良好。遠くで聴こえるインディオの歌と前景の鳴り物の乾いた響きの対比も鮮やか。もっと鮮烈な音であってもいいのだが、アマゾンの森の情景はよくイメージできる。ジョニー・ホッジスのビッグバンドは重厚にして柔軟。分厚いブラスの音群や背景できちんと刻みを入れるドラムスの意志も伝わる。
MAIN INでは鮮度が確実に向上。打撃音の鋭さ、明敏な響きがスリリング
次にMAIN INを試す。入力切替え、音量調整、フラットアンプをパスできるので鮮度は明らかに向上する。アマーロ・フレイタスのブラジルジャズは、奥行きが何層にも設定された音場空間の見通しがすこぶる良好。打撃音の鋭さ、明敏な響きがスリリングだ。縦笛の立体的な重なり合いも生々しい。ビッグバンドはさらに重厚にして鮮明。ブラスの音圧感どころか、背後でスナップを利かせる刻みまで中身が詰まっている。
そこで次々と優秀録音を聴くことになったのだが、エリゼッチ・カルドーゾのサンバ歌謡のような古びた録音から、生々しい肉声や哀感まじりの吐息唱法が巧みに演技力を発揮して驚かされた。音楽の大事なところをグリップしつつ、現代的な応答性や精密感を得ているのだ。それならばとばかり、アナログ盤も試聴。クラウス・マケラ指揮/パリ管弦楽団の「ペトルーシュカ」は、超高域まで繊細の精神が行き届いていて、装飾的なフレーズが身体演技を想像させる描写力が秀逸。田舎節の挿入など時間の流れが急にゆったりするような変化=運動性が魅力だ。金管の輝かしさもひとしおであり、優秀なプリアンプと組み合わせる意義は極めて大きい。
というわけで大型直熱3極管845の真価に触れることができた。万難を排して試聴する価値のある逸品が誕生した!
出力管のTRIODE銘845。845用ソケットはJUNONE 845Sで開発した4ピンのソケットを引き続き採用する。バヨネット式ではなく、テーパー状の金メッキピンで真空管を確実に保持する。
入力端子はRCAアンバランス4系統。左端に入力セレクター、ボリュウムなどをバイパスするMAIN IN端子を備え、入力端子とMAIN IN端子の間にあるトグルスイッチで切り替えられる。スピーカー端子は1系統で、4~8Ωに対応する。
本機の試聴は、送り出しにアキュフェーズのデジタルディスクトランスポートDP1000+D/AコンバーターDC1000、スピーカーにB&W 801D4 Signatureを使用して行なった。MAIN IN試聴時はウエスギU・BROS280Rをプリアンプとして使用している。
845 Single Integrated Amplifier
ジュノン JUNONE 845SE
¥1,350,000(税抜)
●出力:22W+22W(8Ω)●入力端子:LINE 4系統(RCAアンバランス)、MAIN IN 1系統(RCAアンバランス)●入力感度/インピーダンス:410mV/20kΩ(LINE)、1V/220kΩ(MAIN IN)●スピーカー出力端子:4~8Ω●使用真空管:12AU7×4(JJ Electronic)、300B(PSVANE WE300B)×2、845(TRIODE銘)×2●寸法/重量:W450×H300×D490mm/55kg●備考:リモコン、真空管保護カバー付属●問合せ先:(株)トライオード☎048(940)3852