PROSOUND 2022年10月号は、9月16日発売! TIPSTAR DOME CHIBA、Xylomania Studio、大阪Cygames サウンド部エディットルーム、日比谷音楽祭2022 YAON など、PROSOUNDならではの記事が満載です!

PROSOUND的“設備”検分録
TIPSTAR DOME CHIBA
「脱ギャンブル」を目指す新しい競輪場のスタイル

スポーツ施設の中でも競輪場はプロ選手の試合を観戦する場であると同時に、競馬場やボートレース場と同じく公の機関が開催する公営競技場でもあるのですが、今回の「TIPSTAR DOME CHIBA」(ティップスタードームチバ)は千葉市が開催する公営競技場でありながら、敢えて「脱ギャンブル」を前面に打ち出して新たなファンの獲得を目指すというユニークなコンセプトの下に建て替えが行なわれ、競輪場でありながら車券売場が無く!車券販売はインターネットのみという特色に始まり、専属のダンスチームを持ち、レーザーショーありファイヤーエフェクトありCO2ありDJあり、さらに観客がバンクを歩けるバンクウォーク、中央アリーナ部のソファーからのごろ寝レース観戦等々、今までとは全く異なる楽しみ方やショーアップされた演出の数々!そして当然ながらその演出に欠かせない演出用音響機器類。
今回は自転車トラック競技の競輪や自転車のお話を交えながらそれらを検分していきます。

PROSOUND SPECIAL
Xylomania Studio
エンジニア 古賀健一氏のイマーシブ・スタジオ

Apple Musicの空間オーディオとソニーの360 Reality Audioによって、音楽の世界でも注目を集めているイマーシブ・オーディオ。本誌前号で紹介した音響ハウスをはじめ、イマーシブ対応ルームを開設する商用スタジオも現れており、今後空間オーディオ/360RAでの再生を前提とした楽曲制作に取り組むアーティストも増えていくに違いない。そんな“音楽のイマーシブ・オーディオ”に、国内でいち早く取り組んできたのがレコーディング・エンジニアの古賀健一氏だ。
Dolby Atmosに大きな可能性を感じた氏は、自身のスタジオ『Xylomania Studio(シロマニア・スタジオ)』をDIYで(!)Dolby Atmosに対応させ、音楽のイマーシブ・ミックスを他に先駆けて実践。Official髭男dismのライブ盤やミュージカル『モーツァルト!』など、多くの作品のDolby Atmosミックスを手がけ、昨年は『ヴェルディ・ナブッコ 第2部 御身は預言者たちの唇を通して』で、第27回日本プロ音楽録音賞Immersive部門優秀賞を受賞した。そこで本誌では、“音楽のイマーシブ・オーディオ”を牽引するキー・パーソン、古賀健一氏にインタビュー。これまでの歩みとDolby Atmosに取り組み始めたきっかけ、そしてDIYで開設された『Xylomania Studio』の概要について話を伺ってみることにした。

PROSOUND FEATURE
大阪Cygames サウンド部エディットルーム

『グランブルーファンタジー』や『シャドウバース』、『ウマ娘 プリティーダービー』など、ヒット作を次々に世に送り出しているゲーム会社、Cygames。東京と大阪などに開発拠点を擁する同社は先頃、Dolby Atmosの音響制作に対応したインハウス・スタジオ=“エディットルーム”を開設した。
そこで本誌では大阪の“エディットルーム”にお邪魔し、スタジオ開設の狙いとそのコンセプト/導入機材、Cygamesのイマーシブ・オーディオへの取り組みについて話を伺ってみることにした。

PROSOUND REPORT
日比谷音楽祭2022 YAON に見るサウンドシステム

2022年6月3日から5日かけての3日間、東京・千代田区にある日比谷公園とその一帯で「日比谷音楽祭2022」が催された。日比谷公園内の「大音楽堂」「小音楽堂」「第二花壇」、ミッドタウン日比谷の「ステップ広場」「パークビューガーデン」の全5箇所に音楽演奏のステージが設けられ、多くのアーティストが出演、観客を楽しませた(6月3日は大音楽堂のみの特別開催)。主催は日比谷音楽祭実行委員会で、東京都と千代田区が後援にまわるという興味深いイベントである。ここでの最大規模のステージとなったのは「YAON」と名付けられた野外ステージ。通称・野音の名で親しまれた大音楽堂で、日本の野外コンサートの歴史をつくってきた。
この催事は「誰にでも開かれた音楽イベント」というコンセプトを掲げ、入場無料。一般からのクラウドファンディングでのご支援、多くの企業からの協賛、助成金で運営され、世代やジャンルを超えてさまざまな音楽に出会える場を作りたい。それが音楽の楽しみを知るきっかけになれれば、そうした思いがベースとなっている。
この催しで大音楽堂の音響を務めたのが著名エンジニア、志村 明氏が率いるスターテック。そして主力システムは同社が保有するヤマハの機材群を中心に構成された。来年、2023年で100年の時を刻む大音楽堂。歴史あるこの会場で開かれたイベントの音響について前出の志村氏、そして同社の高田義博氏のお二人に話を聞いた。

PROSOUND最前線
Aki Mäkivirta氏に訊くHRTFへの個人性適用

2022年5月に開催されたAES(Audio Engineering Society)主催の152nd Convention 2022で発表されたワークショップ「Enabling headphones for monitoring: Personal HRTF and the Genelec Aural ID Plug-In」は、イマーシブオーディオの視点からとても興味深い内容でした。イマーシブ・バイノーラルサウンドを、制作者の意図通りの空間印象で楽しむために、バイノーラルレンダリングに利用するHRTFに個人性を適用するという研究が近年活発に進んでおり、これらの研究結果に基づく製品やアプリケーションも市場に投入されています。
このワークショップでは、そういったHRTFへの個人性適用に関する研究動向や技術要素が分かりやすく解説されていましたので、講演者であるGenelecのAki Mäkivirta氏にこのワークショップの内容に沿って、HRTFへの個人性適用についてあらためてお話を伺いました。
本稿では、AESでのワークショップの講演内容をベースとしながら、Aki Mäkivirta氏に伺ったお話も併せてご紹介します。

STUDIO ENGINEERING
イマーシブオーディオ制作のすすめ
第6回 音を観る

最近、Apple Musicでは、空間オーディオのラインナップが非常に増えている。むしろ、空間オーディオでリリースすることがステータスなのか、新作はおしなべて空間オーディオでリリースされているようだ。昨年のサービス開始時点では、これが空間オーディオ?というような作品も多かったが、最近の作品はかなり熟れてきている。しかしながら、それでもまだまだ玉石混淆であり、感動できる作品に出会える機会は少ない。
本連載で何度も述べているが、音質が悪いと、せっかくのイマーシブオーディオの魅力は半減してしまう。Apple Musicで空間オーディオと同時に始まったロスレス・ハイレゾサービスには、空間オーディオと同じ曲がアップロードされるケースも増えている。皆さんも音の良くない空間オーディオか、音の良いロスレスか、究極の選択を迫られたことはないだろうか?
音の印象を向上させるために、プリプロ、ポスプロの各段階で様々な工夫を行うが、本稿では、先ずプリプロにおいて、録り音を向上させる方法について考えてみたい。