IMMERSIVE PRODUCTION
P's STUDIO/NeSTREAM LIVE
東京・麻布台にあるP's STUDIO(ピーズ・スタジオ)は、いち早くMA室をDolby Atmosに対応させたことで知られ、サカナクションのBlu-ray/DVD『SAKANAQUARIUM 2019 “834.194”』をはじめ、話題になったイマーシブ・コンテンツの多くが同スタジオで制作されている。そんなP's STUDIOは昨年末、増加する音楽作品のイマーシブ・ミックスに対応するべく、『MA-2』を改修して3部屋目のDolby Atmosスタジオとしてリニューアル。また、親会社のメモリーテックは同時期に、Dolby Atmos対応のライブ配信サービス『NeSTREAM LIVE』をローンチした。そこで今回の“IMMERSIVE PRODUCTION”では、イマーシブ・コンテンツを積極的に推進するP's STUDIOにお邪魔し、新しい『MA-2』のコンセプトと『NeSTREAM LIVE』の詳細について話を伺った。
NEW IMMERSIVE CONTENTS
Yamaha New AFC〜国産イマーシブ・オーディオ
本誌では、イマーシブ・オーディオの特集を組んできました。「Soundscape」(d&b audiotechnik)、「L-ISA」(L-Acoustics)、「Astro」(Martin Audio)、「SpaceMap」(Meyer Sound)等をご紹介しました。このような中で満を持して登場したのが今回ご紹介する純国産のヤマハ「AFC」です。昨年11月24日、静岡県浜松市にあるヤマハ本社を訪ね、実機操作と試聴を交えながら開発チームの方々に開発経緯から実用面に至るまで様々な話を伺いました。
PROSOUND FEATURE
東京屈指の巨大劇場型ホールが有明に誕生!
東京ガーデンシアター[後編]
さまざまなスタイルのライブイベントを筆頭に、国際会議や各種セミナー、受賞式や展示会などあらゆる催事にフレキシブルに対応する巨大劇場型ホール、東京ガーデンシアター。2020年7月のオープン以来、常に音楽業界のトップトピックスにのぼり、耳目を集めている。本誌226号に掲載した前編では、最大収容約8,000人という巨大空間でありながらアーティストとの距離が近くに感じられ、かつクリアで迫力ある音場をもたらすサウンドシステムの要諦についてご紹介した。今号ではその後編として、電源まわり、FIRフィルタの利点と課題、ネットワーク構成、映像関係等について、話を伺った。
Inter BEE REPORT
Inter BEE 2021
幕張メッセに、日本最大級のプロフェッショナル機器の展示会「Inter BEE」が帰ってきた。3年前に始まったコロナウィルスの蔓延により、2020年度はオンライン開催のみとなり、展示された新製品やプロトタイプ機を見ながら、同業の友人、知人と近況を話すという大切な時が失われていた。しかし、昨年はワクチン摂取の開始などにより感染者は大幅に減少、経済活動も回復しつつある。そうした時世の下、オンライン配信に加えて、幕張メッセでの展示会を再開。プロオーディオ部門の展示も、規模こそ縮小したものの賑わいは回復しつつあると体感できる取材となった。
また、昨年同様のオンライン会場では、出展社による動画公開はもちろん、幕張メッセで行なわれた各種セッションやセミナーの多くを配信(期間は12月17日まで)。さらに、InterBEEアフターセッションなど、配信でしか味わえないイベントも興味深かった。
本誌では、2年ぶりに行われた幕張メッセ会場に出展した会社の注目製品を紹介していきたい。
LIVE SOUND REPORT
AI 20周年記念TOUR “IT’S ALL ME”
コンパクトな音響システムが問いかけるもの
実力派シンガー、またソングライターとして人気を博し、つい先日の「NHK 紅白歌合戦」にも4度目の出場を果たしたAIが敢行した「AI 20周年記念TOUR“IT’S ALL ME”」。2021年11月1日にはツアーを締めくくる最終公演“AI BIRTHDAY SPECIAL”を東京・有楽町の「東京国際フォーラム」で開催。その模様は衛星放送「WOWOW」でもライブ中継された。本公演を含むツアーの音響を手掛けたのはPAカンパニー「KENNEK KNOCK」と「Arxiduc Audio」からなるチームだが、ツアーを通じて先進のデジタルミキシング・システム「WAVES eMotion LV1」をFOHに導入するなど、注目のトピックが試みられていた。「コンパクト」をキーワードにしたという当ツアーからは、これからのライブ音響の運営におけるひとつの方向性が見えてくるようだ。
RECORDING REPORT
ボブ・ジェームス Feel Like Making Live!
3Dイマーシブオーディオの制作
本稿は筆者がリミックスを担当したボブ・ジェームスのビデオ作品『Feel Like Making Live!』の3Dイマーシブオーディオ制作手法について解説したものである。3Dオーディオ制作について興味があったり、今後制作を考えていたりするエンジニアの方へ、少しでも参考となれば幸いである。なお、本アルバムは2020年4月にはマスターが上がり、同年夏頃には発売予定だったが、新型コロナの影響で遅れに遅れ、2022年1月28日にようやく発売に漕ぎ着ける。その間にApple Musicの空間オーディオが始まるなど、3Dオーディオへの関心が高まっている。
PROSOUND LIVE STREAMING
配信事業のパイオニアが見るUstreamから今日に至るまでの変遷
この1年あまり、プロサウンド誌に毎号配信に関連するリポートを採りあげてきた。そのきっかけはコロナ禍により、仕事が激減した音響業、おもにSRを手がけているカンパニーが配信業務に参入したことから。それぞれのカンパニーは手探りと言える状况下で、特にこれまで触れる事がなかった映像関連の技術を積み上げ、催事における配信費を受け取ることができるほどのスキルを体得してきた。そうした経緯や動機を読者に紹介していくことで、今後これから配信を検討しているカンパニーなどへの一助になればと思ったのがその理由だが、今回は配信を主に長く業務を続けている、いわば老舖のひとつを紹介していきたい。
配信はインターネットの普及が始まったころからその動きと併送しながら顕著化した業務として長い時間をかけて成長を続けてきた。そこに未来の光があると見通し、またビジネスチャンスとして組織を立ち上げたひとりの音響マンがいる。マイクロサウンド代表、須藤(すとう)高宏氏である。今回は起業当時やその頃の時代背景など、配信業務がどのように進化を遂げてきたのか、また長年培った経験のなかで、配信業務で肝になるポイントなどを語っていただいた。
PROSOUND最前線
オーディオ・ストリーミングにおけるラウドネスのガイドライン
米国のDavid Bialik氏、フランスのMatthieu Parmentier氏、そして日本の濱﨑公男(筆者)が共同議長を務め、米国のJim Starzynski氏が副議長を務めている、放送とオンライン配信に関するAES(Audio Engineering Society)技術委員会(AES Technical Committee on Broadcast and Online Delivery)では、「AES技術文書 TD1008 : インターネットによるオーディオのストリーミングやオンデマンド配信におけるラウドネスに関する勧告(AES Technical Document TD1008 : Recommendations for Loudness of Internet Audio Streaming and On-Demand Distribution)」を、2021年9月24日に発行しました。この技術文書は、インターネットを介して、多様なオーディオコンテンツをストリーミングしたり、オンデマンド配信したりするうえで知っておくべき、ラウドネスレベルの取り扱いについてのガイドラインです。したがって、何らかの形でこういったオーディオの配信に携わっていらっしゃる方々には、必須といえる知識だと思います。
2021年10月にオンライン開催されたAES第151回コンベンションでは、この技術文書を紹介するワークショップ「Guidelines for Stream Loudness」が行なわれました。そこで、このワークショップの内容を紹介することにより、TD1008の概要を説明します。