PROSOUND SPECIAL
山麓丸スタジオ
東京・青山にオープンした360 Reality Audio 対応の新スタジオ

ソニーが開発したオブジェクト・ベースの立体音響技術、360 Reality Audio。そのコンテンツ制作に特化したスタジオ、その名も『山麓丸スタジオ』が東京・青山にオープンした。
株式会社ラダ・プロダクションが運営する同スタジオは、Genelec The Ones(8331A)を360 Reality Audioのレギュレーションに沿って常設したミックス・ステージで、膨大なセッションでも余裕を持って作業できるように、DAWはカード 2枚のPro Tools | HDX システムを2システム用意。オーディオ・インターフェースはもちろんPro Tools | MTRX で、360 Reality Audio のプロダクションを高品位に遂行できる環境が整えられている。
そこで本誌ではオープン間もない『山麓丸スタジオ』にお邪魔し、スタジオのコンセプトとシステム構成、そして360 Reality Audio の制作ワークフローについて話を伺ってみることにした。

IMMERSIVE PRODUCTION
ソニーPCLのイマーシブ・プロダクション

音響技術者の昨今の関心事と言えば、何と言っても3Dオーディオだろう。Appleは“空間オーディオ”とネーミングされたイマーシブ・コンテンツの配信を開始し、ソニーは立体音響技術を使った新しい音楽体験=360 Reality Audioの普及に注力している。イマーシブ・コンテンツを制作するための敷居もどんどん低くなっており、あらためて興味を持ち始めている読者も多いのではないだろうか。
そこで本誌では、イマーシブ・コンテンツ制作にいち早く取り組んでいるソニーPCL株式会社に赴き、これまでの取り組みと現在のワークフローについて話を伺ってみることにした。

BRAND PROFILE
PMC
創立30周年を迎えたスタジオ・モニターの名門ブランド

1991年、英国BBCの技術者だったピーター・トーマス氏によって設立されたスピーカー・ブランド、PMC(The Professional Monitor Company Limited)。スタジオ用モニター・スピーカーとして唯一、“スピーカーへのベース・ローディング・テクノロジーの搭載”を確立したPMCの製品は、第一線のプロフェッショナルから高い評価を受け、ロサンゼルスの『Capitol Studios』、ロンドンの『Dean St. Studios』、ニューヨークの『Dolby Screening Room New York』など、世界中の名だたる現場に導入されている。近年はDolby Laboratoriesと連携し、イマーシブ・オーディオ向けの研究開発に注力しているPMCだが、製品がどのような体制で生産され、どのような技術を基盤に開発を行なっているのかということについてはあまり知られていない。
そこで本誌では、PMCのシニア・ビジネス・デベロップメント・マネージャーであるダン・ジンベルマン(Dan Zimbelman)氏に、同社の現在の体制と製品開発におけるフィロソフィー、イマーシブ・オーディオへの取り組みについて話を訊いてみることにした。また後半のページでは、PMCのモニター・スピーカーを使ってイマーシブ・スタジオを構築したエンジニア 古賀健一氏に、同社製品の魅力について語っていただいた。

PROSOUND LIVE STREAMING
ライヴ業界の復興を願う在郷の音響従事者たち

プロサウンド誌では、コロナ禍が始まった昨年の春以降、それまでひとつの専門分野であった「配信」という業務を新たに第一歩から手がけることになったSRカンパニーやエンジニアを紹介してきた。今回で6回目、本誌は隔月発売だから期間的には約一年目の回となる。
残念なことに新型コロナウイルスは新種が次々と出現し、特に都市部ではこの原稿を書いている8月の時点でまったくと言えるほど感染収束は見えない。そうした毎日の不安のなかで、ふと遠くの仲間たちはどうしているのかと気になった。今は公演で日本の各地を巡回する機会も少なくなり、長く友の顔も見ていない。そこで長期の暇を詫びる思いで連絡を取り、今回のリポートのきっかけが始まった。
まず四国は高知の懐かしい番号を押す。電話に出てくれたのは、ライヴハウス「X-pt.(クロスポイント)」を運営する西岡隆宏氏。話を聞くと、業務の最重要ではないが、配信は大事なポイントだと言い切る。そして次は博多へ。これも懐かしい電話番号だ。「福岡市民ホールサービス」に籍を置く富岡喜久夫氏。彼は会社の仕事とは関連を持たないところで興味深い動きをしていた。そして最後は大阪。「スタジオえむ」の森 正人氏だが、音大出身の氏らしく、これもまた独自と言えるこれまでの音楽・音響経験を活かした動きが頼もしい。まさに三者三様と言える、これまで失敗も経験しながら屈することなく手に入れた力強い音響マンらの生き様を一挙紹介する。

PROSOUND FEATURE
より豊かな音文化の発信地
池袋グローバル リング シアター

仕事帰りや散歩の途すがら、遠くからふと音楽が流れてきた時、耳が吸い寄せられてしまう。それが普段なじみのないジャンルであったとしても、生演奏であれば足を留める。読者にもそうした経験があるのではないだろうか。スピーカーシステムから流れる既製音源の再生音と生演奏とでは、届く心までの深さが違うと見え、後者の場合は聴き入ってしまうことが多い。やはり生演奏の持つエネルギーは人間を惹きつける説得力を感じ、加えてパフォーマンスが素晴らしければ、終演まで観てしまうことも少なくない。こうした巡り会いのチャンスはそうそう多くはないから良いのだ、と言う向きもいるかも知れない。が、東京・池袋という繁華な街にその出会いを実現する会場が存在する。
池袋西口公園野外劇場「池袋グローバル リング シアター」。2019年11月16日にオープンした屋外ステージ。舞台上部には大型ビジョンを備え、客席にあたる部分には中空に直径35mのリングを設置。要所には照明や音響設備も敷設され、多彩な演出も可能となっている。

STUDIO ENGINEERING
イマーシブオーディオ制作のすすめ
第3回 イマーシブオーディオ制作の前に知っておいた方が良い音響学

皆さんは3Dオーディオ収録にトライしたことがあるだろうか? 3Dオーディオ制作への敷居はそれほど高くなく、やり始めるのは簡単だ。だから、先ずやってみるという姿勢が大事である。5.1ch制作の経験がある人なら、先ずは2本、ハイト用のマイクロフォンを設置してみよう。そして聴くときは、2本のスピーカーを本棚の上に設置して聴くだけでも初めて聴いたときには感動するものだ。
3Dオーディオは感動を伝えられるシステムであることを、先ず知って欲しい。初期の頃のマイクアレイで4本の無指向性マイクを1.5m四方に並べ、オムニクスエアとかオムニクロスと呼んでいた。
 しかし、だんだん欲が出てきて多くのマイクを使い始める。2本が4本になり、8本になってと増え続ける。そうなるとマイクロフォンの使い方について様々な疑問が湧いてくる。組み合わせが増えるに従い、マイクロフォンと再生音の関係は想像の域を超えてしまう。このように、3Dオーディオ制作に際して、闇雲にトライアンドエラーをやり始めると、出口のない道に迷い込んでしまう。
なにしろ2chステレオは2つのスピーカーの間だけ考えれば良かったが、9.1chになると2点間の組み合わせだけでも36通りの組み合わせがある。その中にモノオブジェクトを用いた定位設計、ペアマイクの配置、などを考えると、その際限ない組み合わせに途方に暮れてしまう。
かく言う私もその深みにはまり、試行錯誤した時期があったわけだが、その経験を音響学の知見に照らし合わせてみると、ある一定の理が見えてきた。

PROSOUND最前線
AES 150th Conventionにみるプロサウンド最前線

AES(Audio Engineering Society)が主催するAES 150th Convention 2021(AES SHOW SPRING 2021)は、5月25日から28日までの4日間開催されました。COVIT-19の影響で、前回の第149回コンベンションに続き、今回も完全なオンライン開催となりました。オンライン開催は、2020年春の第148回コンベンションから3回目となりますが、AES本部や各コンベンション実行委員会によって、そのメリットを活かせる形式の模索や、より最適なオンラインツール等の導入が図られてきました。今回のコンベンションでも、オンライン参加時に、発表者や参加者とのコミュニケーション向上が実現するなど、さらなる改善が行なわれていました。
 このコンベンションの技術プログラムのなかから、プロサウンドの最新動向として特に注目した講演の概要をご紹介します。

お詫びと訂正

9月18日発売「プロサウンド2021年10月号」(Vol.225)掲載の『IMMERSIVE PRODUCTION Vol.1 ソニーPCLのイマーシブ・プロダクション』(P.26)におきまして、記載内容に誤りがありました。
読者の皆様、関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びし、以下のように訂正させていただきます。
 
【誤】
また、今月発売される『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE』もDolby Atmosでミックスを行いました。Dolby Atomos Musicのミックスも2曲作業しました。
 
【正】
また、今月発売される『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE』も外部のエンジニアさんに来てもらい、Dolby Atmosで『405 Immersive Sound Studio』を使ってミックスして頂きました。Dolby Atomos Musicのミックスも音楽のエンジニアさんに来てもらって2曲作業しましたね。