従来、ライブやイベントなどの現場では、音響は音響専門の会社、映像は映像専門の会社が仕事を請け負うのが常だったが、最近では音響専門の会社(あるいは音響担当の個人の技術者)が映像を手がけるケースも珍しくなくなっている。きっと読者の中にも、「映像機器のオペレートも一緒にお願いできないだろうか」と頼まれたことがある人もいるのではないだろうか。映像と言うと構えてしまう人が多いかもしれないが、音響のオペレートができる人であれば映像のオペレートはさほど難しくないと言われ(その逆は難しい)、音響と映像の両方を扱うことができる“AVミキサー”と呼ばれる便利な機材も普及し始めている。これからの時代、音響技術者といえども最低限の映像に関する知識を持っていた方が、間違いなくプラスになると言っていいだろう。本連載『音響技術者のための映像入門』では、映像オペレートに必要な基礎知識を分かりやすく解説する。第8回目となる今回は、大阪・阿倍野の音響の会社、株式会社結音の事例を紹介することにしよう。株式会社結音は、コロナ禍で音響の仕事が激減したことを受けて、昨秋からライブ配信/映像収録業務を開始。音と映像を1台で扱える便利機材=AVミキサーを上手く活用することで、まだまだ落ち着かないこの状況を巧く乗り切っている。

大阪・阿倍野の音響会社 株式会社結音(ゆいおん)

 今回お話を訊かせていただいた株式会社結音(ゆいおん)は、大阪・阿倍野にオフィス兼倉庫を構える音響の会社だ。代表取締役の藤森暖生氏は、大阪芸術大学時代に舞台音響に関わったのを機に、卒業後もそのまま音響の仕事を手がけるようになったという。

結音のスタジオ。効果音制作や作曲/編曲などで使用されるとのこと

スタジオの中心となるDAWは、SteinbergのNUENDO

「ぼくはもともと、ミュージシャンになりたくて岡山から大阪に出てきたので、舞台にはまったくと言っていいほど興味がなかったんです。ミュージカルとか、何か気持ち悪いと思っていたくらいで(笑)。でも、大阪芸大で舞台音響効果コースを専攻して、演劇などに関わるようになり、ものの見事にハマってしまいました。音響そのものもそうなんですが、チームみんなで何かを作り上げるのがとてもおもしろいなと。そう思えたのも、表方/裏方分け隔てなく接してくれる良い仲間に巡り合えたからかもしれないですけど……。それで卒業後も、大学の延長のような感じで、フリーランスで音響の仕事を手がけるようになりました。30歳のときに馬場(編注:結音所属のサウンド・エンジニア、馬場貴子氏)と知り合い、運良く自分一人では捌き切れないくらい仕事が入るようになったので、2016年に5名のスタッフとともに株式会社結音として法人化し、現在に至ります。受けている仕事は本当に様々で、芝居やミュージカル、バレエ、ダンス、コンサートの音響を基本に、イベントなどの外仕事、劇場管理などもこなしています。また、オフィスには簡単なスタジオ・スペースもあり、効果音制作や作曲/編曲などの仕事も請け負っています。こちらから積極的に営業しているわけではないのですが、いろいろな人から“これできない?”と声をかけていただいて、仕事の幅がどんどん広がっていった感じですね。テレビ関係の仕事やワイヤレスのオペ、効果音のポン出しなども手がけていますし、音に関わることであれば、何でもやっています」(藤森氏)

株式会社結音の代表取締役、藤森暖生氏

 現在、8人のスタッフが在籍し、藤森氏以外は全員女性という結音。Webサイトをチェックしていただければ分かるが、ここまでアットホームな雰囲気の音響の会社も珍しいだろう。

「楽しくてアットホームな雰囲気は、弊社の大きな特徴です。こういう和気あいあいとした雰囲気が嫌だという人もいると思いますが、この感じがあっている方はまた依頼してくれますね。弊社はリピート率が抜群に高いので、アットホームな雰囲気を求めている人が多いのかもしれません(笑)。女性スタッフが多いのは特に理由はなくて、募集をかけても男の人からの応募がないんですよ。弊社の仕事は、ラインアレイをドンと積んでという感じではないので、音響の専門学校に通っている男子にはあまり魅力がないのかもしれませんね。アットホームな雰囲気が特徴の弊社ですが、他の会社と比べて料金は決して安くはありません。これはあえてそうしていて、料金で勝負したくないと思っているんです。一度安い料金で請け負ってしまうと、それ以降はその料金が標準になってしまいますから、料金設定には気をつけていますね。その分、請け負った案件に対しては、120%の内容で返すという気持ちで取り組んでいます」(藤森氏)

 

昨年4月にVR-4HDを導入しライブ配信/収録業務を開始

 そんな結音がライブ配信/収録業務を手がけるようになったのは昨年のこと。他の多くの音響会社同様、新型コロナウイルスの問題がきっかけになったとのことだが、映像に関しては以前から興味を持っていたという。

「映像に関しては前々から興味があり、一昨年、会社のブランディングの一環として、YouTubeチャンネルを開設してみたんです。今のところ大したコンテンツは公開していないのですが、そのYouTubeチャンネルを通じて、ウチに興味を持ってくれる人が増えればいいなと。外現場での映像の切り替え用に導入していたローランドのビデオ・スイッチャー、V-1HDがありましたし、馬場が趣味でカメラをやっていたので、何か新しいことを始めてみようという感じですね。でも、映像に興味があったと言っても、“i”と“p”の違いとか知らなかったですし、HDMIケーブルもAmazonで買ったメーカー不明のもので、“とりあえず映ったからOK”というレベルでした(笑)。

 そうこうしているうちに起こったのが新型コロナウイルスの問題で、昨年2月くらいからキャンセルの連絡が入るようになり、例年3月は劇場が動く時期なのに、ほぼすべての仕事がキャンセル。4月はかろうじて京都でミュージカルの仕事が1本あっただけ。5月は完全に真っ白で、スタッフもいますし、これは何とかしないといけないだろうと。そんなときに録音業務で関わっていたマーケティング会議の仕事が入り、今回は初めて東京や埼玉と繋いでオンラインで行うという話だったので、ローランドのAVミキサー、VR-4HDを導入してチャレンジしてみることにしたんです」(藤森氏)

 ライブ配信を始める人たちの間で大ヒット商品となっているVR-4HDは、4chのビデオ・スイッチャー機能、18ch入力のオーディオ・ミキサー機能、USBストリーム機能などを備えたコンパクトなAVミキサー。これ1台で、映像の切り替えと音声のミックス、パソコンと繋いだライブ配信が行えてしまう優れもの機材だ。結音所属のサウンド・エンジニアである水落くるみ氏によれば、映像と音声を集中的に扱える点が気に入ってVR-4HDの導入を決めたとのこと。

「ライブ配信についての知識はそれほど無かったのですが、実際の業務では映像と音声のズレと、配信時の音圧が問題になるなと思ったんです。ですので、映像と音声を揃えることができるディレイと、オーディオ・ミキサーの出力にトータル・コンプレッサーが入っているものがいいなと思い、オール・イン・ワンのVR-4HDを導入することにしました」(水落氏)

株式会社結音のサウンド・エンジニア、水落くるみ氏

 

初のライブ配信の現場となったオンライン・マーケティング会議

 VR-4HDを使用した初の現場となったのは、企業が消費者の意見を訊くというオンライン・マーケティング会議で、司会者がZOOMを使って消費者にインタビューを行い、それを東京と埼玉にいる企業の幹部に向けて配信するというもの。企業の幹部からは司会者と消費者の姿は見えるが、司会者と消費者からは企業の幹部は見えないという一方通行のライブ配信だ。話を聞く限り、シンプルなセットアップで済んでしまいそうだが、水落氏によれば、上手く機能するシステムの構築にかなり苦労したという。

初のライブ配信仕事となったオンライン・マーケティング会議の様子

「音声に関しては、ピン・マイクで拾った司会者の声と、マイクを立ててオーディオ・インターフェース(ローランド Rubix24)経由で収音した消費者の皆さんの声を、オーディオ・ミキサーで整音してからVR-4HDに送ったのですが、これがめちゃくちゃ大変でした。音はマイナス・ワンで送り合わないといけないですし、何よりZOOMの音質が良くない。どうすれば良い音になるのか、送り込む音量はどれくらいがベストなのか、それが一番苦労した部分ですね。それとZOOMで注意しなければならないのが、バージョンによって音の扱いが変わるんですよ。前のバージョンでは問題なかったのに、アップデートした途端に音が途切れるようになってしまったり、音量感が変わってしまったり、背景の雑音が目立つようになってしまったり……。これは今でも注意しなければならない部分ですね。また、リハーサルのときは大丈夫だったのに、本番になった途端に音が来なくなるという原因不明のトラブルにも見舞われました」(水落氏)

 何とかオンライン・マーケティング会議を乗り切り、次にVR-4HDが活用されたのは、昨年6月に堺市立西文化会館ウェスティで開催されたキューバ音楽のコンサート。このコンサートは、結音が企画/運営/ホールと共催したのだという。

昨年6月に行われた結音主催のキューバ音楽・コンサートのライブ配信の様子

「仕事がすべて止まってしまって暇だったので、大阪芸大時代の後輩のミュージシャンを誘って、自分たちでコンサートを企画してみたんです。管理で入っている堺市立西文化会館ウェスティに相談したら、協力してくれるということになって。後輩がキューバ人のボーカリストとか仲間を集めてくれて、出演者7人、60分くらいのコンサートを無観客で開催しました。皆がやっているような音楽の生配信に興味があったので、YouTube Liveを使って無料で配信してみたんです」(藤森氏)

 そのコンサートは無観客だったものの、コロナ禍でなかなか現場を経験できない若いスタッフのために、オーディオ・コンソールを持ち込んでスピーカーから音を出し、照明なども通常どおり使用されたとのこと。結音所属のサウンド・エンジニアである馬場貴子氏は、「右も左も分からなかったので、すべてが大変でした」と振り返る。

「カメラは、あるものは全部置いてみようと4台セッティングしたんですが、現場でズーム・リングを操作すること自体初めての経験でしたし、画作りの知識も皆無だったので、とても苦労しました。寄るつもりだったのが引いてしまったり、どっちに動かしたらどういう画になるかが体に馴染んでないので、めちゃくちゃダサい映像になってしまうんです。私はカメラに付いて、VR-4HDをオペレートする水落とはインカムでやり取りしながら操作したんですが、今は恥ずかしくて見ることができないですね(笑)」(水落氏)

「コンサートのライブ配信を初めてやってみて難しかったのは、やっぱり音量感と音圧です。PAのミックスのままですと、ボーカルとMCの音量差があり過ぎて聴きづらいですし、どれくらいのレベルがライブ配信には最適なのか手探りでオペレートしました。PAと違い、ライブ配信だとドンと音量を上げてもハウリングしないので、“そのあたりは違うね”と皆で話したのを覚えています」(水落氏)

 自分たちでライブ配信を企画したことがきっかけとなり、秋にはクラシック・コンサートのライブ配信の依頼があったとのこと。そして年末にかけて、徐々にライブ配信や収録の仕事が舞い込むようになったという。

昨年6月に行われたクラシック・コンサートのライブ配信の様子

オンライン・セミナーのライブ配信の様子

今年3月の劇場でのプロモーション動画収録時の様子

「依頼される仕事の内容は様々だったのですが、いろいろこなすうちにカメラの設置位置やスイッチング、配信用のミックスのコツを掴んでいった感じですね。11月になると、イベントの主催者が申請していた文化庁の助成金が下りるようになったので、それからどんどんライブ配信の仕事が増えていきました。助成金が絡むイベントは、記録として残さなければいけなので、収録の仕事もけっこうやりましたね。昨年4月にVR-4HDを導入して、自分たちでコンサートを企画していなければ、ここまで仕事がくることもなかったと思うので、頑張ってライブ配信に取り組んだ甲斐があったと思います」(藤森氏)

 

ライブ配信のセッティングとオペレーション

 現在の結音のライブ配信システムは、核となるのは引き続きVR-4HDで、4系統以上の映像を扱わなければならない場合は他社のビデオ・スイッチャーを使用することもあるという。カメラは、パナソニック AG-CX350、同 LUMIX AG-GH4U、キヤノン XA55(2台)の計4台で、VR-4HDの出力はCerevo LiveShell Xを使って配信するケースが多いとのこと。カメラはグレード・アップしているものの、基本システムは昨年ライブ配信をスタートしたときとほとんど変わっていないとのことだ。

結音のライブ配信/映像収録業務の核となる機材、ローランド VR-4HD。4ch切り替えのビデオ・スイッチャー機能と18ch入力のオーディオ・ミキサー機能、そしてUSBビデオ・キャプチャー機能を備えたオール・イン・ワンの“AVミキサー”だ。DSKやPinPといった映像合成機能、オート・ミキシングやエコー・キャンセルといった音声機能も搭載し、大型のタッチ・モニターを内蔵しているので、本体だけで映像を確認することができる。A4サイズというコンパクトさも魅力の一つだ(問い合わせ:ローランド株式会社 お客様相談センター Tel:050-3101-2555)

 ここからは、ライブ配信時のセッティングやオペレーションについて、エンジニアの水落氏と馬場氏に話を伺ってみた。

▶︎1 : カメラのセッティング

「4台のカメラは、一番ズームができるAG-CX350が舞台の正面、AG-GH4Uはピアノの手元やドラムの真横といった舞台上、2台のXA55は左右両サイドか引き画用にセッティングすることが多いですね。ミラーレス一眼のAG-GH4Uは、人が常に着いていなくても背景がボケたお洒落な画になるので、そういった映像が欲しいポイントで使用しています」(水落氏)

メイン・カメラのパナソニックAG-CX350

ミラーレス一眼レフのパナソニック LUMIX AG-GH4U

舞台の上下で使うことが多いというキヤノン XA55(×2)

「現場で使用するカメラの台数は、イベントの内容によります。ソロ歌手のライブとかですと、カメラを4台立てたとしても、結局2台しか使わなかったりするんです。逆に多くのミュージシャンが同時に演奏するようなイベントでは、やはりカメラの台数が必要になります。また、現場のスタッフは、カメラに付いて操作する人と、AVミキサー/ビデオ・スイッチャーを操作する人、最低2人が基本になります。カメラを操作するスタッフは、できれば2人、1人だと現場によってはしんどいですね。最近はカメラの操作は若いスタッフに任せることが多いのですが、スイッチング側になるといろいろ感じることがあります。操作に慣れてないと、どうしても早く動かしてしまうので、ゆっくりなめるように動かすだけでも雰囲気は出ると思います」(馬場氏)

株式会社結音のサウンド・エンジニア、馬場貴子氏

「カメラとビデオ・スイッチャーは、大きな現場ではSDIで接続しますが、セミナーなどのコンパクトな現場ではHDMIのまま接続してしまうこともあります。音に関しては、基本オーディオ・ミキサーでミックスしていますが、PA屋さんから2ミックスを貰って、VR-4HD内蔵のオーディオ・ミキサーでエアーを混ぜるケースもありますね。セミナーや会議といったコンパクトな現場では、VR-4HDだけで音をまとめてしまうことも多いです」(水落氏)

▶︎2 : 映像のオペレーション

「AVミキサーのオペレーションの基本となるのは、カメラのスイッチングです。音楽のコンサートであれば、ステージ上で歌っている人、演奏している人に合わせてカメラを切り替える。でも、ギター・ソロだからと言ってギタリストをずっと映すのではなく、2小節に1回は切り替えるくらいの気持ちで操作しています。何秒間に1度は切り替えた方がいいですね。曲のテンポが早いときはカット、バラードなどのゆっくりした曲はフェードで切り替えるのが基本で、フェード・タイムはテンポに合わせて調整します。VR-4HDは、フェード・タイムを瞬時に切り替えられるのがいいですね」(馬場氏)

「スイッチング以外でAVミキサーで行うのは、セミナーのときのPinP(ピクチャー・イン・ピクチャー)くらいですね。あとは遠方にいる人をクロマ・キーで合成することもあります。グリーン・バックを準備してもらって、こちらにいる人と並んで喋っているように合成するのですが、グリーン・バックの濃淡で上手く抜けなかったり、ブルーライト・カットのメガネをかけている方ですと緑色が反射して目が抜けてしまったりするので、注意する必要がありますね」(水落氏)

手慣れた様子でVR-4HDをオペレートする水落氏(手前)と音声卓を操作する馬場氏(奥)

▶︎3 : 音声のミックス

「普通のPAとライブ配信では、音の作り方はまったく違ってきます。ライブ配信では、PAのようなダイナミック・レンジは要らないので、コンプレッサーなどを使ってレンジを抑えて、言葉がしっかり聴こえるようにする。小さい声は大きくして、常にコンプレッサーはかけている感じですね。もちろんマスターには、ピークで歪まないようにトータルのリミッターが挿さっています。また、現場の空気感を演出するにはエアーが重要になってくるんですが、これも上手くミックスするのが意外と難しい。例えば、ガン・マイクを普通に客席に向けて立ててしまうと、マイクに近い位置に座っている2~3人の拍手しか拾ってくれなかったりするので、少し離れた場所に立てるようにしています」(馬場氏)

▶︎4 : これから始める人へのアドバイス

「これから機材を揃えるのであれば、ビデオ・スイッチャーはAVミキサーがいいと思います。音声と映像が1台で扱えるというのは、やっぱり便利。小規模な現場ですと、ライブ配信と一緒に収録も依頼されるケースが多いので、その点でもAVミキサーが有利です。単体のビデオ・スイッチャーにもオーディオ機能は備わっていますが、XLR端子のステレオ・オーディオ入力や、フェーダーが付いているものはないんですよ。マルチバンド・コンプレッサーやディレイも内蔵されていて、リバーブのノブもしっかり表に出ていますから、音響屋としてはとても操作しやすい。これからライブ配信を始めるのなら、AVミキサーがおすすめです」(水落氏)

「VR-4HDで気に入っているのは、大型のタッチ・モニターが内蔵されているところですね。ビデオ・スイッチャーの多くは、外部モニターを繋げないと映像を確認できないのですが、VR-4HDは本体だけで4分割の画面を見ることができる。ライブ配信を始めたばかりの頃は、本当に映っているのか心配になるものですが、VR-4HDは自分の目で確認できるので安心です。それとボタンなどの操作体系が二段になってないのもいいですね。分かりやすく、操作ミスをすることがありません。それと凄く良いのが、HDMIのINPUT 4にスケーラーが備わっている点。他社のビデオ・スイッチャーは、フォーマットが合っていないとまったく映らないんですが、VR-4HDはどんな信号を入れてもしっかり表示されるんです。パソコンなどは、インターレースでしか出力されないものもあったりするので、このスケーラー機能はとても心強いですね」(馬場氏)

「カメラに関しては、1台だけでも良いカメラがあると違うと思います。民生機ですと、いくら設定しても明るさや色味に限界があるんですが、1台良いカメラがあって引きの画がきれいだと何とかなりますね」(水落氏)

「XA55のような民生機は、ピントが合いやすいので素人には使いやすいんですが、良くも悪くもテレビのような画になってしまいます。これからカメラを導入するのであれば、できるだけメーカーは揃えた方がいいですね。メーカーが違うと、一生懸命色温度を合わせても、同じ色味にはなりませんから。これは私たちの課題でもあります。それと声を大にして言いたいのが、三脚はケチらない方がいいということ(笑)。安い三脚は動き出しが絶対にカクカクいうので、どうしても気になってしまうんですよ。10万円くらいの三脚ですと、動きがとても滑らかで、ビックリするくらい違います。同じように、HDMIケーブルやLANのエクステンダーなどもケチらない方がいいですね。安いものですと、この機材では認識するけれど、あの機材では認識しないということになって、結局買い直すことになります(笑)。それと現場ではスタッフ間のコミュニケーションが重要になるので、インカムも必須ですね」(馬場氏)

オフィス内に設置されたライブ配信用機材

最後に

 新型コロナウイルスの感染拡大で仕事が激減したのを機に、ライブ配信/収録業務をスタートした結音。藤森氏は「まだまだ事業の柱と言うだけの数をこなしていませんが、手探りでも始めて良かった」と笑う。

「おもしろかったのが、スタッフの誰も映像についての知識が無かったこと。皆で、“ああでもない、こうでもない”と試行錯誤しながらやったのが凄くおもしろかったですね。まだまだ2年くらいはこの状況が続くと思っているので、とりあえず始めて良かったと思っています。それと現在、自分たちでライブ配信の勉強会を企画しているんですよ。ライブ配信を始めて、いろいろ分からないことがあるので、テレビの音声マンに講師をお願いし、配信用音声の作り方を講義してもらおうと。似たようなオンライン・セミナーはたまに行われていますし、ぼくも受講してみたことがあるんですが、業務で音響をやっている人間にとっては内容が物足りない。指向性の説明とかは要らないので(笑)、実際にどれくらいのレベルで、どれくらいの音圧にすればいいのかという実践的な情報を知りたいんです。こういう情報を知りたがっている人は多いと思うんですが、なかなかその術がないので、だったら自分たちで企画してしまおうと。6月2日にクレオ大阪中央のセミナー・ホールを借りて、オフラインとオンラインのハイブリッド形式で行いますので、ライブ配信を始めたばかりの人や、これから始めるという人はぜひ受講していただければと思います」(藤森氏)

結音のスタッフの方々。写真手前左から、多鹿百香氏、代表取締役の藤森暖生氏、稲垣亜衣子氏、写真奥左から、松本里歩氏、合田加代氏、水落くるみ氏、馬場貴子氏、藤森亜耶氏(と藤森允仁ちゃん)

監修:ローランド株式会社 写真:鈴木千佳

AVミキサー VR-4HDに関する問い合わせ:
ローランド株式会社
Tel:050-3101-2555(お客様相談センター)
https://proav.roland.com/jp/

株式会社結音 大阪府大阪市阿倍野区阪南町7 丁目1-1 Tel:06-6697-8582
https://yuionn.jp/
※結音主催のオンライン・セミナーについては、同社のWeb サイトをご覧ください。