読者の皆さんは、“AVミキサー”という機材をご存じだろうか。ざっくりと紹介するなら、『ビデオ・スイッチャーとオーディオ・ミキサーが統合され、USBストリーミング機能も備えたオール・イン・ワンの機材』ということになる。昔はこのような機材はほとんど存在しなかったのだが、ライブ配信人気の高まりに合わせてここ数年の間に一気に普及し、“AVミキサー”という呼称も普通に使われるようになった。そしてそのAVミキサーのスタンダードとして、プロ/アマ問わず人気を集めているのが、ローランドのVRシリーズである。

映像の切り替えと音声のミックスを1台で操作でき、そのままライブ配信までコンパクトな筐体で完結できるVRシリーズは、講演会や結婚式といったイベントからYouTube Liveなどのライブ配信用途に至るまで、幅広いアプリケーションで使用されている。おそらくは本誌の読者の中にも、現場で見たことがある、あるいは実際に操作したことがあるという人は、少なからずいるのではないだろうか。

そんなVRシリーズの最新機種が間もなく発売になる。6月の『InfoComm 2019』で発表されたVR-50HD MK IIは、大ヒットを記録したVR-50HDの後継機で、VRシリーズの新たなフラッグシップ・モデルとなる製品。あらゆるフォーマットに対応する汎用性の高さ、スイッチャー/ミキサー/USBストリーミングを1台で操作できる利便性、優れたコスト・パフォーマンスといったVR-50HDの特徴はそのまま受け継ぎ、業務用ミキシング・コンソールに匹敵する高音質とさらなる操作性の良さを実現した新世代AVミキサーだ。

ローランドの新製品、VR-50HD MK II。映像の切り替え/合成、音声のミックス、USBストリーミングを1台で行うことができるAVミキサーのフラッグシップ・モデル

オート・ミキシングやビデオ・フォロー・オーディオなど、ワンマン・オペレーションを支援する自動化機能も強化され、これまで以上に幅広いアプリケーションに対応するVR-50HD MK II。特に本誌読者にとっては、ゼロから開発されたというオーディオ機能は注目と言っていいだろう。そこで本誌では、ローランドの浜松研究所に赴き、VR-50HD MK IIの開発コンセプトとその機能について話を伺ってみることにした。取材に応じてくださったのは、ローランド RPG第1開発部 製品リーダーの茶谷弘行氏である。

映像と音声を一元的に扱えるAVミキサー、VRシリーズ

本題のVR-50HD MK IIの話に入る前に、ローランドの業務用映像機器への取り組みについておしえてください。ローランドがこの市場に参入したのはいつ頃になるのでしょうか。

茶谷 映像機器に関しては、おそらく皆さんがイメージしているよりも長く取り組んでいて、かれこれ四半世紀以上関連製品を世に送り出しています。最初に発売したのは、“ビデオくん編集スタジオ”というパソコン用の映像編集システムで、これはDTV(デスクトップビデオ)のはしりとなった製品でした。そして1990年代半ば、弊社は当時クラブ/DJシーンに初めて進出したのですが、その流れでVJをターゲットにしたV-4という製品を発売したんです。V-4は4ch入力/3ch出力のテーブルトップ型ビデオ・ミキサーで、これが世界的な大ヒット商品となりました。VJをターゲットにしたV-4でしたが、当時は合成機能まで備えた安価なビデオ・ミキサーが市場にほとんど無く、ユーザーの約半数が業務で映像を扱っている方だったんです。プロの皆さんにここまで評価していただけるのであれば、業務用映像機器に本腰を入れてもいいのではないかということになり、この市場に本格参入した感じですね。それが2000年代に入ってからのことで、以降、ビデオ・スイッチャーやビデオ・コンバーターなど、徐々にラインナップを拡充していきました。

世界的に大ヒットを記録したビデオ・ミキサー、V-4

今やローランドは、業務用映像機器市場で確固たる地位を築いています。この世界のプロに、自社製品のどのあたりが支持されているのだと思いますか。

茶谷 一番は、製品のユニークなコンセプトや機能だと思っています。もともと映像機器のメーカーではないので、先入観なく皆さんのニーズに合った製品を開発できている。あとはやはり価格も大きいと思います。今でこそ低価格な業務用映像機器を展開しているメーカーはありますが、我々がこの市場に参入したときは業務用イコール高価というのが当たり前でしたから。それとサポートがしっかりしている点も高く評価していただいているのではないでしょうか。業務用製品ではサポートが重要になってきますからね。

現在の業務用映像機器の製品ラインナップをご紹介ください。

茶谷 ビデオ・スイッチャーのVシリーズ、AVミキサーのVRシリーズ、マトリックス・スイッチャーのXSシリーズ、ビデオ・コンバーターのVCシリーズ、ビデオ・プロセッサーのVPシリーズ、ビデオ・プレゼンターのPRシリーズという6つのラインナップで製品を展開しています。Vシリーズは、一番最初のV-4の流れを汲むテーブルトップ型のビデオ・スイッチャーで、XSシリーズは、主に設備向けのラックマウント型マトリックス・スイッチャーですね。

その中でもVRシリーズは、AVミキサーのスタンダードとして、プロからアマチュアまで多くの人たちに愛用されています。“AVミキサー”とはどのような機器なのか、あらためておしえていただけますか。

茶谷 映像の切り替えと合成、音声のミキシング、USBストリーミングといった機能が統合された製品のことをAVミキサーと呼んでいます。映像と音声をシームレスに操作でき、1つの機器の中ですべて完結できるというのが大きなコンセプトですね。講演会や結婚式といった映像出力と音声のPA、両方が必要な現場では、ビデオ・スイッチャーとオーディオ・ミキサーという2種類の機材を用意しなければなりませんが、AVミキサーがあれば1台で完結する。接続もスマートで、設置場所も取りません。小規模なイベントでは映像と音声、それぞれに専任のオペレーターを付けるのは難しいと思いますが、AVミキサーなら1人で両方を操作することができます。そういったニーズに上手くハマり、ここ数年でAVミキサーは急速に普及しました。

 我々がAVミキサーの最初の製品、VR-5を発売したのは2011年のことになりますが、当時はAVミキサーという言葉自体、ほとんど使われていませんでしたね。ビデオ・スイッチャーにオーディオ機能を統合した製品はありましたが、完全に業務用の高価なものばかりで、VR-5のような価格帯ではまったく存在しませんでした。

VR-5は、標準でUSBストリーミング機能を備えていた点も非常にユニークでした。当時、Ustreamなどのライブ配信が流行り始めていましたが、最初からそういった用途も見据えて開発された製品だったのでしょうか。

茶谷 いいえ。レコーダー機能の搭載は最初からアイデアとしてありましたが、USBストリーミングに関してはまったく考えていませんでした。開発の中盤くらいからライブ配信が盛り上がり始めて、急遽追加した機能だったんです。現在、VRシリーズはライブ配信の定番機材として使われていますが、それは最初から意図したものではなく、たまたまタイミングが合ったという感じですね。VR-5の発売から約8年が経った今でも、映像の切り替えと合成、音声のミキシング、USBストリーミングといった機能が統合されたVRシリーズは、非常にユニークな機材で、ドンピシャに競合する製品は無いと思います。

妥協のない高音質を実現した新製品 VR-50HD MK II

今年6月に開催された『InfoComm 2019』で、VRシリーズの新しいフラッグシップ・モデル、VR-50HD MK IIが発表されました。VR-50HD MK IIは、大ヒットを記録したVR-50HDの後継機ということもあり、大きな注目を集めています。VR-50HD MK II 開発のスタート・ポイントについておしえてください。

茶谷 前モデルのVR-50HDを発売したのは2013年のことで、この約6年の間にユーザーの皆様からたくさんのフィードバックが寄せられていたんです。それがかなりたまってきたので、皆様からの要望をできるだけ反映させ、より使いやすい製品に進化させたいなと。プロジェクトがスタートしたのは昨年のことで、このクラスのビデオ機器としてはかなり急ピッチで開発を進めた感じですね。

 

VR-50HD MK IIの全体写真(上)と背面の写真(下)。大型のタッチパネル・モニターが備わった右側でビデオ機能、左側でオーディオ機能を操作するという分かりやすいレイアウトになっている。左側には一般的なミキシング・コンソール同様、フェーダーやソロ/ミュート・ボタンなどが備わり、本誌読者であればすぐに使用することができるだろう。

背面には計12chのオーディオ入力が搭載され、XLR/TRSフォーン兼用のコンボ端子が4ch(マイク・プリアンプを装備)、TRSフォーン端子が4ch(うち2chはマイク・プリアンプを装備)、RCAピン端子が4ch備わる。オーディオ出力はメインがXLR端子で、他にもステレオ2系統のAUX出力を装備(TRSフォーンとRCAピン)。

一方、映像入力は4系統で、HDMIとSDIの他、1~2chはRGB/コンポーネント入力とコンポジット入力も搭載されている。映像出力はHDMIが3系統、SDIが2系統、RGB/コンポーネント出力が2系統で、コンバーターの類を使用することなく様々な用途に対応できる万全の仕様と言っていいだろう。

その他、USBストリーミング用のUSB 3.0/2.0端子、リモート用 のLAN/RS-232C端子なども装備。大きさは横幅437mm×奥行き325mm、高さ125mm、質量は本体のみで5.9kgだ

 

ユーザーからは、具体的にどのような要望が寄せられていたのでしょうか。

茶谷 最も多かったのは、オーディオの品質を上げてほしいという要望でした。VR-50HDは、会議室や小規模なイベント・スペースといったそれほど広くない場所で使われることを前提に開発した製品だったのですが、実際には中規模~大規模なイベントやライブ配信などで使用されるケースも多かった。しかしそういった広い場所で使用すると、少しS/Nが気になってしまうという意見がありました。特に普段、音響の仕事をしている人にとっては、決して満足のいく音質ではなかったのかもしれません。なので新しいVR-50HD MK IIでは、大規模な現場での使用に満足できる高音質、ハイエンド・コンソールと比較しても遜色のないサウンドを実現したいと考えたんです。

 次に多かったのが、より直感的なユーザー・インターフェースにしてほしいという要望です。AVミキサーを使用するような現場では、仕込みの時間もそれほど取ることはできません。そこでVR-50HD MK IIでは、頻繁に使用するボタンをパネルに実装し、迅速かつ直感的に操作できるユーザー・インターフェースを実現しようと考えました。

 それと今回、開発コンセプトの一つとして掲げたのが、自動化への対応です。1人で映像と音声のオペレートをするのは大変ですから、自動化できるところは対応させてしまおうと。ですので、オーディオ機能の音質の向上、ユーザー・インターフェースの改善、自動化への対応という3つがVR-50HD MK IIの大きな開発コンセプトになります。

まずはVR-50HD MK IIの基本機能についておしえていただけますか。

茶谷 VR-50HD MK IIは、ビデオ・スイッチャー、オーディオ・ミキサー、タッチパネル仕様のマルチビュー・モニター、USBストリーミング機能をコンパクトな筐体に収めたオール・イン・ワンのAVミキサーです。あらゆるフォーマットに対応した映像入力はSDI、HDMI、RGB/コンポーネント、コンポジットの各端子を備え、ミックスやカット、ワイプといった9種類のスイッチング機能だけでなく、PinP(小画面)やクロマ・キー、ルミナンス・キーといった合成機能も搭載しています。オーディオ・ミキサーはモノ4ch/ステレオ4系統の12ch入力仕様で、チャンネル数はVR-50HDと同じですが、マイク・プリアンプの数が4基から6基に増えました。USBストリーミング機能はUSB 3.0対応で、パソコンと接続するだけで簡単にインターネットにストリーミングすることができます。

USB端子にパソコン(Mac/Windows両対応)を接続してライブ配信が可能。特別なドライバーのインストールなどは不要だ

コンセプトの一つであるオーディオ機能の音質の向上ですが、前モデルのVR-50HDからどのあたりをブラッシュ・アップされているのですか?

茶谷 オーディオ機能に関しては完全に刷新し、すべてゼロから設計し直しました。背面の端子の並びなどはほとんど同じですが、中身は別物と言っていいと思います。回路的には現行のミキシング・コンソールの次の世代を見据えて開発を行い、部品も現在手に入る最も高音質なものを採用しました。本当に新しいミキシング・コンソールに取り組むような感覚で開発を行い、それをAVミキサー用にチューニングして実装したという感じですね。業務用ミキシング・コンソールと比較しても遜色のない音質を実現できたと自負しています。

音質を向上させるにあたって、ポイントとなった部分というと?

茶谷 やはりマイク・プリアンプですね。映像系の回路は大きなノイズの発生源なので、それを遮蔽しながらオーディオの回路をいかに実装するかというのがポイントでした。苦労した甲斐あって、大きな現場で大音量で鳴らしてもS/Nはまったく気にならないと思います。

マイク・プリアンプの数を4基から6基に増やしたのはなぜですか。

茶谷 4基だと少し物足りないという要望が寄せられていたんです。でもほとんどの現場で8基も必要としない。筺体サイズとのバランスを考えて、6基という仕様にしました。チャンネル数に関しては、レイヤーの概念を取り入れれば倍にすることもできたんですが、ミキシング・コンソールを理解していない人には操作が難解になってしまう。使いやすさを重視して、モノ4ch/ステレオ4系統の12chという仕様を維持しました。

音質が向上したこととマイク・プリアンプの数が増えたこと以外、オーディオ機能で進化した点はありますか?

茶谷 チャンネルEQやマスターEQのバンド数は3バンドから4バンドに増え、新たにアンチ・フィードバックやボイス・チェンジャーを搭載するなど、内部のプロセッシング機能もかなり強化しました。AUXもステレオ1系統では物足りないという意見が多かったのでステレオ2系統に増やし、プリ/ポストも選択できるようになっています。リバーブの送りは2系統のAUXとは別に用意し、アルゴリズムはM-5000のものを搭載したのでより高品位になりました。

完全に業務用ミキシング・コンソールといった感じのスペックですね。

茶谷 音質だけでなく、機能面でも妥協のない仕様にしました。ディレイもあらゆるポイントに搭載し、どこでズレが生じても合わせられるようにしてあります。それとマスター・エフェクトとして15バンドEQを搭載しているのも注目してほしい点ですね。PAを行う現場でVR-50HDを使用しているユーザーから、“出力にグラフィックEQのような機能を搭載してほしい”という要望があったので、それに応える形で搭載した機能です。ここまでのバンド数のEQを搭載したのはVRシリーズでは初めてですね。

ミックスのリコールには対応しているのですか?

茶谷 ビデオ機能とオーディオ機能のすべてのパラメーターをメモリーとして保存できるようになっています。保存したメモリーはUSBスティックで管理することも可能です。

画期的な自動化機能ビデオ・フォロー・オーディオ

ユーザー・インターフェースはどのあたりが改善されたのでしょうか。

茶谷 ビデオ機能に関しては、AUXやPinP(小画面)、STILL/INPUT SOURCEのボタンを実装し、より直感的に操作できるようにしました。前モデルのVR-50HDも、それほど複雑な操作体系だったわけではないんですが、タッチパネルからメニューに入らなければならない操作が多かった。それを専用ボタンで直感的に操作できるようにした感じですね。これによって連続的な切り替えなどにも迅速に対応できるようになりました。オーディオ機能に関しても、チャンネルごとにソロ/ミュート・ボタンが備わるなど、よりミキシング・コンソールらしいユーザー・インターフェースになっています。操作子のレイアウトなどは弊社のM-5000/V-Mixerを踏襲しているので、ミキシング・コンソールの扱いに慣れた方であれば、マニュアルを見なくても操作していただけるのではないかと思います。

大型のタッチパネル・モニターを使って、指先で快適に操作することができる

ビデオの入力選択ボタンなどが、業務用機らしいものに変わりましたね。

茶谷 従来の楽器用のボタンですとチャタリングが生じることもあったので、もっとしっかりしたボタンにしてほしいという要望が寄せられていたんです。なので今回、業務用機と同じブロードキャスト・スタイルのボタンを採用することにしました。

ユーザー・インターフェース以外、ビデオ機能で進化した部分というと?

茶谷 前モデルのVR-50HDもビデオ機能はかなり充実していたので、対応フォーマットや画質などに違いはありません。VR-50HDは、本当にどんなフォーマットでも受けれるAVミキサーで、そういった汎用性の高さはそのまま受け継いでいます。新機能としては、4つの静止画をSTILL/INPUT SOURCEボタンで簡単に切り替えられるようになった点が大きいかもしれません。VR-50HDでは、ボタンで4つの静止画を切り替えることはできなかったので、本番で複数の静止画を使い分けることが難しかった。しかしVR-50HD MK IIでは、4つの静止画を直観的に選択できるようになったので、客入り前、オープニング、休憩、エンディングと静止画を使い分けることが可能になりました。これもユーザーから寄せられていた要望を反映したものです。また、パナソニックやJVC製のPTZカメラを最大6台までLAN経由でコントロールすることも可能になっています。VR-50HD MK IIから外部のカメラをリモート・コントロールできるというのは配信などでは非常に便利な機能だと思います。

パナソニック/JVC製PTZカメラのリモート・コントロールにも対応

もう一つの開発コンセプトである自動化機能についておしえてください。

茶谷 音に関しては、音量を検知して自動でバランスを取るオート・ミキシング機能を搭載しました。オート・ミキシング機能のアルゴリズムは自社開発したもので、人間がミックスしているかのような自然な切り替わりが大きな特徴ですね。実験を繰り返し、時間をかけてチューニングしたアルゴリズムです。多くの人が壇上に上がる会議などでは非常に有効な機能なのではないかと思います。

 加えて音に合わせて映像を自動的に切り替えるビデオ・フォロー・オーディオという機能も搭載しています。各マイク入力に対して、スレッショルドと対応するカメラを設定しておくことで、その人が喋り始めたときに自動的に映像が切り替わるという機能です。これだけだったらよくある機能なんですが、VR-50HD MK IIのビデオ・フォロー・オーディオが優れているのは、複数の人が同時に喋ったときはどうするか、誰も喋っていないときはどうするかというのも細かく設定できる点です。例えば、Aさんが喋っているときはAさんの映像、Bさんが喋っているときはBさんの映像、2人が同時に喋っているときは少し引いた映像、誰も喋っていないときは別の映像というのを設定しておける。ビデオ・スイッチャーとミキシング・コンソールが一体化したAVミキサーならではの便利機能と言えます。

そこまで自動で映像を切り替えてくれれば、オペレーターは音のミックスの方に集中できますね。

茶谷 そうなんです。逆にオート・ミキシング機能を使えば、音のミックスの方を自動にして、映像の切り替えの方に集中することができる。音に集中したいときはビデオ・フォロー・オーディオ、映像に集中したいときはオート・ミキシングと使い分けていただければと思います。

講演会や結婚式などのイベントでも、VR-50HD MK IIがあればワンマンでオペレーションすることが可能だ

実機を目の前にすると、より業務用機らしい精悍な外観になったという印象を受けます。

茶谷 そうですね。最近のローランドの業務用映像機器と同系統のデザインで、フラットで厚みもできるだけ薄くしてあります。ゴツくせず、なるべくコンパクトに。カラーリングはM-5000とほぼ同じブラックです。

リア・パネルにはACアダプター用の電源入力に加えて、XLR-4-32 typeの補助電源入力も備わっていますね。

茶谷 補助電源入力は、現場にあるDC9V~16Vの電源を利用できるように実装しました。両方接続しておくことで、電源を二重化できるようになっています。

完成までに苦労した点というと?

茶谷 内部の構造設計でしょうか。VR-50HDと横幅や奥行きは変えず、できるだけ薄くしたかったので、限られたスペースの中に回路をどのように収めるかというのが一番頭を悩ませた部分です。先ほども言ったとおり、オーディオ回路のS/Nのことも考えなければなりませんからね。あとは何と言ってもオーディオ機能の音質です。本当にゼロから開発したので、細かいチューニングにはとても時間がかかりました。

S/Nが向上したことで大規模なイベントでも問題なく使用できるようになり、これまで以上に多くのアプリケーションで活躍しそうな感じですね。

茶谷 VRシリーズはイベントとライブ配信、2つの用途で使われることが多いんですが、最近はその2つが一緒になった催しが増えているんです。現場にお客さんを入れて、なおかつライブ配信も行うというケースですね。VR-50HD MK IIでは、自動化機能も強化されましたし、様々なイベントでお使いいただけるのではないかと思います。

今後、ファームウェアのアップデートなどは予定されているのでしょうか。

茶谷 リリース時期は未定ですが、Webブラウザを使ってLAN経由でリモート・コントロールできる機能を検討しています。

最後に、プロサウンド誌の読者にメッセージをお願いします。

茶谷 VRシリーズの大きな強みとなっているのがオーディオの機能です。音響と映像のどちらも手がける数少ないメーカーとして、AVミキサーにも映像専門メーカーではなかなか実現できないような、ハイクオリティーなオーディオ機能を搭載しています。特に今回のVR-50HD MK IIは業務用ミキシング・コンソールに匹敵する音質と機能を実現できたと思っていますので、現在、音響を中心に業務をされていて、これから映像業務も始めたいと思っている方々にも、ぜひ試していただきたいですね。ミキシング・コンソールに慣れた人であればVR-50HD MK IIの映像操作はすぐにできるようになると思います。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

ローランド RPG第1開発部 製品リーダーの茶谷 弘行氏

取材協力:ローランド株式会社

 

VR-50HD MK IIに関する問い合わせ
ローランド株式会社
Tel:050-3101-2555(お客様相談センター)
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