取材協力:株式会社エフエム東京、株式会社ミュージックバード、ローランド株式会社

「sE Electronics」の共同経営者として数々の製品を世に送り出してきたジェームズ・ヤング(James Young)氏が、2015年に創業した新興マイクロフォン・メーカー、「Aston Microphones」。あらゆるソースに対応するクセの無い特性、ポップ・フィルターを内蔵したユニークな設計、ライブ・ユースにも耐える堅牢な筐体、そして圧倒的なコスト・パフォーマンスの高さで、ここ日本でも徐々に浸透してきている。本誌ではこれまで、「Aston Microphones」を愛用するプロの声を何度か紹介してきたが、今回は日本を代表するラジオ局「TOKYO FM」にお邪魔し、総務局 技術部長の川島修氏に話を伺ってみることにした。「TOKYO FM」では「Spirit」を4本、「Origin」を2本導入し、スタジオ録音や外部での収録などで活用しているという。

 

ラジオの人間が好きそうな通好みのマイクロフォン

PS まずは「TOKYO FM」さんが「Aston Microphones」のマイクを導入されたきっかけからおしえていただけますか。

川島 「Aston Microphones」のことは知らなかったんですけど、去年の秋くらいに「ローランド」さんにご紹介いただいて、形がユニークなのと出力トランスが入ってるマイクというところに興味を持ったんです。それで昨年、ジャズのコンサート録音をシリーズでやっていたので、そこでデモ機をお借りして試してみて。新しいマイクって、ライブのオーディエンス・マイクで使うと、結構特性が分かりますからね。そうしたら音が太くて、輪郭もしっかり捉えてくれるなかなか良いマイクだなと。価格もお手頃ですし、それで導入することにしたんです。安価なマイクって用途が限定されるものが多いんですけど、このマイクだったら割とオールマイティーに使えるのではないかと。

「TOKYO FM」総務局 技術部長、川島修氏

PS 「Spirit」と「Origin」、両方導入されたのですか?

川島 どちらも試したんですが、それぞれ個性があるんです。僕の印象ですと、「Origin」の方が抜けの良い音で、楽器のおいしい部分を拾ってくれる。だからギターとかには合っているんですが、逆にオーディエンス・マイクには向かない。一方「Spirit」は、少し無骨な音というか、何でもワイドに捉えてくれるので、オーディエンスやピアノに合っているんです。どちらも使えるなと思ったので、「Spirit」を4本、「Origin」を2本導入しました。

PS 普段はどんな使い方をされているんですか?

川島 もういろいろですね。スタジオ録音はもちろん、ナレーション録りや外での収録で使うこともあります。でもやっぱり、ギターだったり、ピアノだったり、楽器に使うことが多い。今のところ「Spirit」2本と「Origin」2本は外用という感じになってますね。まだ落としたことはないんですけど、見た目も頑丈そうですし(笑)。でもそれって、外の仕事では重要なので。内部の構造はよく分からないんですけど、形がとてもユニークですよね。ダイアフラムも大きいですし、ラジオの人間が好きそうなマイクという感じがします。スタジオでこのマイクを見た人、「これ何?」とみんな興味を持ちますよ。通好みのマイクですよね。

PS 10月に始まる新番組の録音でも「Aston Microphones」のマイクが活躍したそうですね。

川島 衛星デジタル放送の「MUSIC BIRD」でジャズの番組が始まるんですけど、その2回目のスタジオ録音で使用しました。そのときはピアノの録音で、僕はジャズ・ピアノを録るときは「Neumann U87Ai」と別のマイクを組み合わせるんですけど、今回は「Spirit」を使ってみようかなと。普段は「DPA 4011A」とか「Schoeps」を組み合わせることが多いんですけどね。僕はがっつりオンでマイクを立てるということはやらなくて、比較的オフめに立てることが多いんです。アンビエンス・マイクなんかもかなり上にセッティングしますね。

「MUSICBIRD」で始まる新番組の録音で「Spirit」が使用された

「TOKYO FM」スタジオで録音作業を行う川島氏

PS 「U87Ai」と別のマイクを組み合わせるのはなぜですか?

川島 「U87Ai」は良いマイクなんですけど、もう少し他のキャラクターも足したい感じなんですよ。その部分を他のマイクを併用することで補うんです。加えて、“カチン”というアタック成分や、ペダルを踏み込んだときのプレイ・ノイズは、コンタクト・マイクで拾います。

PS 今回の録音ではどのようなセッティングだったのですか?

川島 「U87Ai」をLRで立てて、その真ん中に「Spirit」がいるという感じですね。最初は両方ともLRで立ててみたんですけど、何か中抜けした音になってしまったので、「Spirit」を「U87Ai」で挟み込んで。あとはコンタクト・マイクも使って、アンビエンスも立てて。ウチのスタジオはもの凄くデッドなので、アンビエンスを拾うだけでは足りないんですけどね。だから少しリバーブを足します。

今回はジャズ・ピアノの録音で、「Neumann U87Ai」と「Spirit」がメインに使用された

PS ジャズ・ピアノの録音で使用した「Spirit」は、どんな印象でしたか?

川島 最初は「U87Ai」と別のマイクを組み合わせたんですけど、そのときよりも2種類のマイクが上手く馴染んだ感じがしますね。「U87Ai」と違うマイクを組み合わせた場合、そのマイクは「U87Ai」と比べるとちょっとガッツが足りない感じがするのですが、「Spirit」はガッツリとした音で「U87Ai」に負けない太さがあって。「Spirit」のキャラクターが上手く出て、「U87Ai」との併用でちょうど良いバランスになった感じがします。 それと今回、96kHzで録ってみたんですよ。ウチのスタジオは昨年リニューアルして、やっと96kHzで録れるようになったんですけど、普段やっている番組ではなかなかそれを生かすチャンスが無くて。今回は「MUSIC BIRD」なので、初めて96kHzでやってみようと思ったんです。

「U87Ai」の間にセッティングされた2本の「Spirit」

PS 96kHzでのジャズの録音はいかがでしたか?

川島 「U87Ai」と「Spirit」のキャラクターの違いが如実に分かったのは、96kHzで録ったからかもしれません。96kHzですとマイクの特性が48kHz以上に出るので、あまり良くないマイクは使えないですよね。しかし良いマイクをキチンと立てれば、ほとんどEQをする必要がないんです。48kHzですと、最初にちゃんとした音を得るために下準備が必要になりますけど、96kHzだとそういった下準備は必要がない。なので、作業が早いんです。一度96kHzでの録音を体験してしまうと、もう48kHzに戻りたくないですね(笑)。

PS 番組の聴きどころをおしえてください。

川島 月に1回の放送になるんですけど、番組が始まる前からジャズ界隈のミュージシャンの間では話題になっていて、もう半年先まで出演する人が決まっているんです(笑)。みなさん興味を持ってくれて、なかなか良い番組になりそうな感じですね。「Aston Microphones」のマイクに関しては、内容や楽器によりますが、今後も機会があればぜひ使いたいと思っています。

PS 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

特別企画/協力:ローランド

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『TOKYO FMイリス・スタジオ・ライブ』
2018年10月より衛星デジタル音楽放送MUSICBIRDで放送開始!
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