KEFは豊富なアクティブスピーカー・ラインナップを持つが、新製品のLS LUXE(エルエス リュクス)は、これまでのどれをも超えた新世代の音だ。非常に歪みが少なく、音楽が空間から自然に沸き立ち上がり、快感的に進行する。なにより音場がたいへん豊かで、さらにその中の音像イメージが非常に明確なのだ。その音を成した技術は、革命的というと大袈裟だが、アクティブスピーカーの歴史の中では画期的なものに違いない。インプレッションは、文末に詳しく述べる。

 

Active Speaker System
KEF
LS LUXE
¥715,000 (ペア)税込

●型式 : アンプ内蔵2ウェイ1スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット : 25mmドーム型トゥイーター+165mmコーン型ウーファー/同軸
●アンプ出力 : 100W×2(高域用)、280W×2(低域用)
●接続端子 : アナログ音声入力1系統(3.5mmステレオミニ)、デジタル音声3系統(同軸、光、HDMI eARC)、LAN1系統、ほか
●対応ストリーミングサービス : Spotify、Qobuz、Amazon Music、Deezer、TIDAL、ほか
●寸法/質量 : W223×H336×D298mm/9.88kg(プライマリー)、9.75kg(セカンダリー)
●カラリング : ダスク・チタニウム(写真)、エクリプス・ブラック、ミネラル・ホワイト
●オプション : 専用スタンド(LS-LUXE Floor Stand、¥143,000ペア 税込)あり
●備考 : AirPlay、Google Chromecast、UPnP、Bluetooth5.3ほか対応

 

 

4つの画期的テクノロジーでアクティブスピーカーの音が進化

 4つの新技術を紹介しよう。①VECO。コイル状薄型モーションセンサーをウーファーユニットのボイスコイルの内側に組み込み(磁気ギャップに4分割して搭載)、至近距離でその挙動をチェックし、トランス効果により電磁誘導による電圧変化の値を計測する。得られた値と入力信号を常に比較し、フィードバックループでの差分がゼロになるように、アンプにデータを送る。これを「VECO(Velocity Control Technology)」と名付けた。Velocityは速度のこと。

 ②電流駆動型アンプ。電圧駆動型アンプが通常使われるが、LS LUXEでは電流駆動型アンプを採用した。なぜか。スピーカー側のインピーダンス変化に影響されず、ドライバーの駆動をプライマリー(一次側)ボイスコイルに供給する電流量の多寡で直接、精密に制御できるのが、電圧駆動型に比較しての電流駆動型アンプの強みだ。換言すると入出力のリニアリティに優れ、歪みが少ない。しかし、電流駆動型アンプでは原理上、低域に対する(制動力の指標となる)ダンピングファクターがゼロになり、制動が効かない。そこで、VECOで得られたデータと入力信号を比較し、不一致があれば即座に補正電流を供給し、ボイスコイルを正確に制御するのである。低域用の280W出力のクラスDアンプ、高域用の100W出力のクラスABアンプの両者が対応した結果、リニアリティが高く極めて正確な低音レスポンスが実現された。高域は独自のMAT(メタマテリアル吸音技術)の仕組みにて、S/Nを向上させている。

 ③ドライバー自体の制振。KEFの第一世代アクティブスピーカーLS50 WirelessはパッシブスピーカーLS50と同一のUni-Qユニットを搭載していた。今回のLS LUXEはアクティブ専用となる、第12世代の6.5インチUni-Qを新開発した。このユニットは、ボイスコイル近傍で発生した振動がフレーム、ひいてはキャビネットへ伝わらないようにダンピング材を封入し、不要振動や共振を抑えた。これはすでに「Blade」や「The Reference」などの上級シリーズなどで採用された技術で、アクティブスピーカーとしては初物だ。ダンピング材については、企業秘密ということだ。

 ④音に直結したデザイン。KEFのフラッグシップスピーカー「Muon」などのデザイナー、ロス・ラブグローブ氏による曲面デザインは、私が感じた冒頭に述べた「音楽が空間から自然に沸き立つ」音場感を実現させている。流麗で有機的な曲面により、エッジによる回折が発生せず、ユニットで発せられた音は全周に向かってスムーズに拡散する。複数ユニットが違う位置に装着されている一般のスピーカーと異なり、同軸ドライバーのポイントソーススピーカーだから、音場再生における、この形とのマッチングも効く。キャビネット材はBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)。高剛性で低共振が強み。構造的な強さを持つので、内部にはブレーシングなどは最小限に抑え、その分、エンクロージャー容積を確保している。目に見える継ぎ目やネジがないのも、音のスムーズな伝播に効く。

 

背面全体がヒートシンクの役割を果たす曲線で形付けられている。この優美なカーブは、英国の工業デザイナー・ロス・ラブグローブの手によるもの。写真は中央に端子部を配置したプライマリーと呼ばれるメインスピーカー。同軸や光、HDMI eARCなどのデジタル入力端子のほかに、LAN端子やセカンダリースピーカー接続用端子が備わる。セカンダリースピーカーとは無線接続も可能だが、音質面では有線接続が有利だ

 

非常にリジッドな設置が可能な専用スタンドが用意されている。スタンドは高さ628mm、質量は1本あたり6.8kgで、接続ケーブルの隠蔽も可能だ

 

LS LUXEの核が、165mm口径の同軸ユニットUni-Q。中央のボイスコイル前方のフィルム状部分に、配線パターンを施し、振幅動作速度データを取得、入力信号を比較し、その不一致を即座にフィードバック補正する「VECO」というベロシティコントロールという回路を搭載。この仕組みにより、電流駆動型アンプのダンピングファクターが少ないという課題を克服、リニアリティに優れた電流駆動型アンプの搭載を実現したという

 

 

音場と音像がとも高密度に展開。音楽誕生の場にいる臨場感あり

 冒頭のインプレッションの続きを書く。音がなんのバリアもなく、円滑にハイスピードで全周に拡がり、上下左右、そして奥行方向の3D的な音場感が実に濃密なのである。まさに、まさに目の前の空間から、ごく自然に音楽が生まれ出るという生々しいリアリティに感動した。ここからが大事なのだが、音像位置とその輪郭、さらにはその密度が並外れて高いのである。つまり音場が部屋全体に広がり、その中に正確で明確な音像が立つのである。ここにまず刮目した。

 巷間、「音場スピーカーに音像なし、音像スピーカーに音場なし」といわれるが、LS LUXEは別物である。「音場も音像も、どちらも高密度」なのだ。再生音楽を聴いているというよりも、その音楽が生まれる場に立ち会っているような高度な臨場感、現場感が聴けた。

 二番目の刮目は、非常に歪み感が少なく、音場の透明度が高いこと。もの凄く微小な信号まで再生してくれるのだ。私がプロデュースした情家みえの声には、ミックス時にごくわずかリバーブを付与しているが、LS LUXEでは発声直後にそのかすかな響きが音場に拡散する様子が聴けた。これは稀な体験だ。演奏者が音楽に込めた想い、エネルギー、熱情などのエモーションが、真摯にヴィヴィッドに伝わってきた。

 これらの美質はまさにVECO+電流駆動型アンプ+ユニットの制振+流麗なフォルムという革新的な技術開発の賜物であろう。まさに新世代のKEFの音だ。

 

Key Man Interview

KEF CTO
ジャック・オクリー=ブラウン博士

アクティブスピーカーは新しい期待に溢れた、イノベーティブな製品ジャンルです

今回は東京・南青山にあるKEF Music Galleryで試聴を実施、日本での発表会にあわせて来日した、KEFのR&D(技術開発)部門のトップ(CTO)であるジャック・オクリー=ブラウン博士にインタビュー取材を実施した。(取材・構成/麻倉怜士)

── 素晴らしい音でした。どのように開発されたのでしょうか。

 まず私たちは「アクティブスピーカーはパッシブスピーカーより優れるはず」という信念を持っています。これまでもたくさんのアクティブスピーカーを作っていても、なかなか到達点が見えませんでしたが、LS LUXEでそれにようやく可能になりそうだと、今、興奮しているところです。

── それは、具体的には?

 歪みを徹底的に減らせたことと、通常の電圧駆動型アンプではなく、電流駆動型アンプが使えたことです。ドライバーの駆動力を電流量で制御できるのが、電流アンプのメリットです。つまり入力と出力のリニアリティが良いのです。電圧式だと直接、電流コントロールは不可能で、電圧電流変換が必要になります。

── それほど良いのなら、以前から使うべきだったのでは?

 電流駆動型アンプは、ダンピングファクターがゼロなのが理由でした。これはスピーカーの低音特性に対して何の制御もできないことを意味します。つまり何も対策をしない通常の使い方では電流駆動型アンプは使用できないのです。

── 電流駆動型アンプの使用を可能にしたのが、VECOですね。

 そうです。自社で、コイルと磁場によるフィルムシート状のユニークなセンサーを開発し、特許を取りました。もともと密閉型のサウンドバーXIOで先に搭載しましたが、HiFiスピーカーであり、さらにバスレフ方式のLS LUXEに、いかにVECOを搭載するかに苦労しました。

── 成果は見事に音に反映されましたね。

 はい。ダンピングファクターに頼る通常の電圧駆動型アンプに比べ、よりリニアリティの良い音がLS LUXEで実現できました。アクティブスピーカーはたいへん興味深く、また面白い分野です。新しい期待に溢れていますし、電気的にも新しい技術を適応する余地が大きいと思います。イノベーションという意味では、パッシブスピーカーよりはるかに改善の余地があります。それが、KEFが積極的にアクティブスピーカーをリリースしている狙いです。この電流駆動型アンプ、MAT、Uni-Qという開発チームの成果物をまとめ上げたLS LUXEは、われわれの大いなる誇りです。

 

ラグジュアリーで高品位なKEFの最新アクティブスピーカー「LS LUXE」

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本記事で紹介した製品は、東京・青山にあるショールーム『KEF Music Gallery Tokyo』で試聴可能です。

ラグジュアリーブランドやデザイナーブランドの発信地である青山らしい、スタイリッシュな空間で、KEF製品各種の魅力を実際に体験できます。

試聴予約は公式サイトのフォームまたは電話(03-3409-2150)にて受付中。お気軽にお問い合わせください。

【KEF Music Gallery Tokyo 】

住所: 東京都港区南青山5丁目5番6号
東京メトロ表参道駅A5出口徒歩3分

電話: 03-3409-2150
営業時間: 11:00 ~19:00

>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』