BenQというと、ここ最近注目を集めているコンパクトなのプロジェクターを発売しているメーカーのひとつと考える人が少なくないと思う人もいるかもしれないが、1984年に台湾で設立されたメーカーで、プロジェクターだけでなく、パソコン用の液晶モニター、デスクライト、Webカメラ、マウスなどのパソコン用の周辺機器などを幅広く手がけている。パソコンに詳しい人ならば、ブランド名をご存じの人もいるだろう。
そして2001年、同グループから独立、自社ブランドとして発足したのがBenQだ。「生活に楽しさと品質を届ける」という明確なテーマが掲げられ、液晶ディスプレイ、プロジェクターを軸に、世界の市場へ本格進出を果たすこととなる。
TK705iとTK705STiの違いは、投写レンズのみ
そんなBenQのプロジェクターは、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を使って映像を表示する、DLP方式のプロジェクターを中心としている。今回紹介するTK705i/TK705STiもホームシアター向けのエントリーモデルだ。
両機に共通する特徴を紹介していくと、4K解像度(水平3,840×垂直2,160画素)表示、HDR10、HDR10+、HLGなどのHDR対応、最大輝度3,000ANSIルーメン、Google TV対応、デジタルズームや自動台形補正などのスマート調整機能、低遅延5msなどのゲーミング対応となる。これに加えて、BenQの特徴と言えるのが、光源にLEDを採用していること、独自の「CinematicColor」技術などにより、Rec.709色域で98%カバーするという忠実な色再現を実現している。
TK705iとTK705STiの違いは、投写レンズ。TK705STiは短焦点レンズを採用しており、100インチの画面を1.8mの短距離で投写可能だ。TK705iは光学ズームも備え、100インチの画面を2.2〜2.9mの距離で投写できる。その他の部分は共通なので、両者を選ぶ場合は映像を映し出すスクリーンからの距離で選べばいいだろう。
たとえば、リビングルームなどの壁面にスクリーンを設置した場合、ソファなどを置いた座る位置が2mほどの場合、TK705STiならばソファの手前のテーブルなどに置くことができる。TK705iの場合は、ちょうど座る位置の横かそのすぐ後ろということになる。どの位置に置くのが使いやすいかで選ぶといいだろう。
設置のためのスタンドも別売で用意されているので、邪魔になりにくい天吊り設置など様々な置き方に対応できる。
スクリーンからの投写位置の仕様は重要。スクリーンサイズと家具などの配置をよくシュミレートしてから製品選びを行ないたい
HiVi視聴室に常設している120インチスクリーン(キクチ Dressty 4K G2)にTK705STi(写真左)と、TK705i(写真右。光学ズームを搭載しているが、写真では最も短い投写距離となるワイド端の状態)で投写してみた。120インチ投写の場合はTK705STiは2.12m、TK705iは、2.66〜3.45mとなる
100インチ画面の場合、通常焦点+光学ズームモデルTK705iは2.2〜2.9mのポジションから、短焦点モデルTK705STiは1.8mからの投写になる。さっくりいえば、視聴位置の前にプロジェクターを設置したいのならば、短焦点モデルTK705STiを、視聴距離の後ろに設置したい場合は通常焦点+光学ズーム搭載モデルTK705iを選ぶのが基本だろう
鮮やかな赤いドレスの発色や質感が自然。フェイストーンもスムーズに再現する
さて、実際に使ってみよう。TK705i/TK705STiのボディは投写レンズのある前側がファブリック調仕上げになっていて、手前のテーブルなど目に付く場所に置いてもリビングルームの調度品になじむデザインとなっている。両側面は放熱穴が空いているが、単調に穴を空けただけでなく、模様のように見える穴の開け方をしていて、無骨な印象にならないようにも工夫されている。このあたりは、リビングルームの目に付きやすい場所に置いても悪目立ちせず、使いやすいものになっている。サイズ自体も幅229.2mm×高さ168.2mm×奥行249.7mmのコンパクトサイズなので設置場所に困ることはないだろう。
両機にはオートフォーカスと自動台形補正が備わり、設置や調整などは非常に簡単。オートアイプロテクションなどの安全機能も備えているので、小さい子供がいる家庭でも安心だ。ただし、こうした自動調整機能は画質にも影響を及ぼす。スクリーンの真正面に置いて、向き、高さなどを物理的に調整して設置した方が画質的には有利だ。筐体自体が軽量かつコンパクトなので、それでも手間は少ないだろう。
視聴では、まずTK705STiから見た。内蔵のGoogle TVで動画コンテンツをいくつか見てみる。黒がやや浮いている印象で、暗部をしっかり沈めたシネマ画質というよりも、テレビ放送やドラマなど、APL(画面平均輝度)が高めの明るい映像によりマッチするイメージだ。感心したのは、色再現が優れること。最近多いRGBレーザー光源は特に赤の原色が蛍光色になるなど、色が不自然になることが気になる製品が多いが、本機ではそれがほとんどない。
Disney+で配信されている『プラダを着た悪魔2』での、鮮やかな赤いドレスの発色や質感も自然。フェイストーンもおおむねスムーズな再現だ。解像感は十分だが、そのままではやディテイル感を欲張りすぎて、フィルムの粒状感のようなザワザワが目立ちやすかったため、「シャープネス」をデフォルトの「8」から「2」まで下げている。
回転&チルト可能なデスクトップスタンドもオプションで用意
デスクトップスタンド(ST30、¥12,000税込)もオプションで用意されている。5mmの湾曲アームとメタル製台座を組み合わせたスタンドで、水平方向の360度回転機構に加えて、垂直方向に最大20度のチルト(傾き)調整が可能だ。本体を天地逆にしてのセットもできる
外部レコーダーとのHDMI連携でテレビ放送を楽しむ。スポーツ中継やディスクパッケージの再生も相性に優れて、解像感が高く高品位が楽しめる
次に、テレビ放送の大画面再生用途の実力を測るべく、視聴室に常設しているパナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1を使ってTK705STiとHDMI接続し、地デジ放送やBS4K放送を見た。ZR1のチューナーが優れているためもあるとは思うが、これは画質的にもなかなか優秀だった。エアチェックしていたワールドカップサッカーのHLG方式の4K中継では、細部まで見通しがよく、色も豊かだ。色については派手な感じではなく、落ち着いた色調だと感じるが、忠実感があり自然な色という解釈もできよう。
なお、試みにマニア定番のストリーミング端末であるApple TV 4Kを使って、HDMI入力から動画配信サービスなども見たが、TK705STi内蔵Google TVで再生するよりも、Apple TV 4Kからの映像の方が、コントラスト感が高まる印象で、ディテイル感なども優れていた。プロジェクター内蔵のスマート機能を使うよりも使い勝手は悪くなるが、画質を優先するならば、Apple TV 4Kなどの動画配信端末をHDMI入力で使う方が良さそうだ。
DMR-ZR1に接続を戻してUHDブルーレイの『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を確認してみよう。惑星パンドラの極彩色で彩られた自然や現地のナヴィ族の姿をリアルに描き、4Kらしい解像感やHDRらしい輝きがしっかりと再現され、プロジェクターとしての基本的な実力の高さがよくわかった。
標準的な焦点距離のレンズを採用したTK705iをチェックしてみよう。
色再現など基本的にはTK705STiと共通。画質的には、非常にシビアに見るとTK705iのほうが、コントラスト感が少し高いようにも思えたが、個体差のレベルのようにも思われた。画質的にどちらが上という判断をできるものではなく、設置場所や視聴距離で選んで問題がないレベルの違いと考えてもいいだろう。
個人的には、プロジェクターは自分よりも後方位置に置きたいので、自分で使うのならばTK705iがベターと思った。設置位置の融通をつけやすい光学ズーム機能を備えるTK705iの方が使いやすいかもしれない。
5msの低遅延表示などゲーム機との連携機能も万全。色再現の自然さや正確性はアニメーション作品でも有利に働くだろう
視聴では試せなかったが、最後にゲームのための低遅延表示なども充実していることを記しておこう。より滑らかな動きを再現できるMEMC(動画補完)機能も備えるし、ALLM(自動低遅延)にも対応する。2系統のHDMI入力は1つがeARC対応で、薄型テレビや家庭用ゲーム機などの接続が容易に行なえる。外部オーディオ出力(ステレオミニ)や最大30Wの給電能力もあるUSB-C端子も備えるなど、接続性は十分だろう。
ゲームならば、もともとコントラスト感の高い映像だし、ゲーム機によっては、HDR表示のための調整機能も備えるので、やや暗部が浮き気味という印象もカバーできると思われる。また、ぼくの好きなアニメも基本的には明るい映像が多い。しかも色再現も自然で正確というのはアニメには重要なポイントであり、相性は良いと思われる。
完全暗室で映画を本格的に満喫するような使い方では、本格的な価格の高級プロジェクターには及ばない点もあるが、価格を考えれば、基本的な実力は十分に高い。特にアニメやゲームを中心に楽しむ人には相性もよく、満足度の高い大画面体験になると思われる。薄型テレビの延長として、テレビドラマやアニメ、ゲームを大画面で楽しみたいならば、ぜひTK705i/TK705STiに注目して欲しい。
(撮影:後藤敦子)
4K DLPプロジェクター:TK705i ¥229,000 税込
●型式:1チップDLPプロジェクター
●投写デバイス:0.47インチDMD
●光源:4LED
●スクリーン上の解像度:水平3,840✕垂直2,160画素
●輝度:3,000 ANSIルーメン
●色域:98%(Rec709カバー率)
●コントラスト比:600,000:1(FOFO値)
●投写比:1.0〜1.3
●ズーム倍率:1.3倍
●レンズ仕様:F=1.8〜1.85、f=10.55〜13.68
●内蔵スピーカー:8W✕2
●接続端子:HDMI入力2系統(2.1、HDCP2.2対応、1系統はHDMI eARC対応)、USB Type A1系統、USB Type C 1系統、アナログ音声出力1系統(3.5mmステレオミニ)、12Vトリガー端子1系統
●ノイズレベル:24dB(Ecoモード)、26dB(標準モード)
●消費電力:250W(標準)、0.5W未満(スタンバイ時)、2W未満(ネットワークスタンバイ時)
●オプション:天吊金具CMP-80(¥19,800税込)あり
●内蔵OS:Google TV(Android 11)
●Bluetooth対応:5.2対応
●Wi-Fi対応:802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz対応)
●寸法/質量:W229.2×H168.2✕D249.7mm/3.8kg