わが家のサブシステムで使っているAVセンターは、マランツCINEMA 70sだ。コレを選んだ最大の理由は、使用中のテレビラックの棚板の上にすんなり載るサイズだったから。なんて言うと「なんだよ、身もふたもない話だナ」と思われるかもしれないが、もちろんその音を聴いて気に入り、コレならぼくがサブシステムで使っているエラック330CE(メイン用)、310CE(サラウンド用)を十分に鳴らせると踏んでのことだ。

 実際にこのエラックの2組4本で4.0ch再生を実践しているが(330CEはバイアンプ駆動)、音質面の不満はほとんどない。HEOS機能を用いてQobuzの音源を聴いたり、マグネターUDP900MKⅡで音楽サラウンド・コンテンツを楽しんだりしている。

 それから、フロントパネルの両サイドをディンプル処理した、近年のマランツ・アンプのデザインをぼくはとても気に入っているが、CINEMA 70sは上位モデルよりも薄型で、筐体のプロポーション(縦/横/高さの比率)が美しいというのも購入した大きな理由だったりする。

 さてこの秋、そのCINEMA 70sの後継モデルであるCINEMA 70s SERIES2が発売されることになった。同時にわが国では市場導入されなかったCINEMA 70sの上位モデルCINEMA 60のSERIES2もお目見えすることに。HiVi視聴室でいち早くこの両モデルをテストしたので、その詳細をお伝えしたい。

 

CINEMA 70s SERIES2
薄型機のイメージを払拭する強力なバイアンプ駆動時の実力

 CINEMA 70s SERIES2は薄型デザインを継承していて、縦/横/高さの比率はオリジナル機と違いはない。市販されているAVセンターの中で、最も美しい製品だと思う。

AV Center
Marantz
CINEMA 70s SERIES2
¥187,000 税込

●型式 : 7.2ch AVセンター
●搭載アンプ数 : 7ch
●定格出力 : 50W+50W(8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.08%)
●接続端子 : HDMI入力6系統、HDMI出力1系統、アナログ音声入力4系統(RCA、MMフォノ含む)、デジタル音声入力2系統(同軸、光)、7.2chプリ出力(RCA)、LAN端子1系統、ほか
●寸法/質量 : W442×H109×D384mm/8.7kg

 7chのパワーアンプを内蔵しているが、回路はシンプルで、素直な特性が得られる差動1段のAB級。高利得と広帯域化が実現できるカレントミラー回路と定電流回路が投入されている。プリアンプ回路は電圧帰還型。

 電源回路はカスタム部品によるリニアパワーサプライで、最大出力は100W(6Ω)/chだ。採用されたDAC素子は電流出力型8chチップ。HDMI端子は6入力/1出力。最新のデバイスが採用され、ジッターを含んだマスタークロックをクリーンなクロックに書き換え、正確なタイミングでDACを動作させるという。

 サラウンドフォーマットはドルビーアトモス、DTS:X、MPEG4-AACなどに対応(Auro-3Dは非対応)、ドルビーアトモス再生時はオーバーヘッドスピーカー2本を鳴らせる5.1.2再生が可能だ。

 まずHiVi視聴室のリファレンス・スピーカーBowers & Wilkins 802 D4を繋ぎ、本機のネットワークオーディオ機能HEOSを用いてQobuz音源を聴いてみた。ポルトガル出身の女性シンガー、マリア・メンデスのライヴ作品等を再生してみたが、さすがにこの8インチ・ダブルウーファーを搭載した大型3ウェイ機を鳴らすには力不足か。低音が軟調で、音が前に出てこない。少し眠たい音になってしまうのである。

 そこで同じBowers & Wilkinsの小型2ウェイ機805 D4にスイッチ、シングルアンプ設定で鳴らしてみると、納得のサウンドが得られた。6.5インチ・ウーファーをしっかりとグリップ、ヴォーカルに浸透力が、オーケストラと声との立体的な対比が生まれた。アンプとあまりにもアンバランスなスピーカーとの組合せでは満足できる音を得るのはむずかしいということだろう。

 次にCINEMA 70s SERIES2の7ch内蔵アンプの4ch分を使って、805 D4をバイアンプ駆動してみた。805 D4は低域/高域個別に接続できるバイワイアリング入力端子を持っているので、それぞれの入力にアンプをあてがうという駆動法だ。

 お、これはいい。シングルアンプ駆動に比べて、ヴォーカルに伸びやかさが加わり、オーケストラ・サウンドがよりダイナミックに描写されるようになった。ドラマーのブラッシュワークも克明になり、情報力が格段に増えたことがわかる。

 自室での経験を踏まえて、バイアンプ駆動なら好結果が得られるに違いないと考えていたが、予想以上の音質向上を目の当たりにし、スピーカーをもう一度802 D4に戻して、本機でバイアンプ駆動してみた。なるほど、シングルアンプ駆動の物足りなさ、「音が眠い」「前に出てこない」という不満はだいぶ解消されることがわかった。

筐体を固定するネジが銅メッキ仕様となった程度で、背面端子部は、CINEMA 70sとほぼ同じ。機能や仕様はほぼそのままに、サウンドパフォーマンスを大きく向上させたモデルチェンジと考えればよいだろう

内部構造は大きな変更はないようだが、HEOS関連処理を担うデバイスがヒートシンク付きの最新仕様に変更している。それ以外は、DACチップが電流出力型に変更されたことやHDMIジッターリダクションなど、パーツ単位での品位向上を目指した格好だ。なお、カラーはブラック仕上げのみとなった

 

CINEMA 60 SERIES2
圧倒的な駆動力を備えたオーディオアンプとしても魅力的

 では、CINEMA 60 SERIES2で802 D4を鳴らしてみたらどうだろう、CINEMA 70s SERIES2とどんな違いが出るだろうか。おっとその前に、本機の概要について触れておこう。

AV Center
Mrantz
CINEMA 60 SERIES2
¥242,000 税込

●型式 : 7.2ch AVセンター
●搭載アンプ数 : 7ch
●定格出力 : 100W+100W(8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.08%)
●接続端子 : HDMI入力6系統、HDMI出力2系統、アナログ音声入力5系統(RCA、MMフォノ含む)、デジタル音声入力4系統(同軸×2、光×2)、7.2chプリ出力(RCA)、LAN端子1系統、ほか
●寸法/質量 : W442×H165×D354mm/10.9kg

 CINEMA 70s SERIES2に比べて56mm高い、ずんぐりしたいかにもAVセンター然としたルックス。基本的な設計はCINEMA 70s SERIES2と共通するが、やはり5万円強高いだけに物量投入に違いがある。

 まず大きな違いはプリアンプ部。マランツの高級アンプでお馴染みの高速アンプモジュールHDAMを投入した電流帰還型を採用。これは汎用のICオペアンプを使わずに厳選したパーツを基板上に配置するディスクリート構成によってハイスルーレート(電圧変化に対する追随性)を実現、全帯域に渡ってレスポンスの良いサウンドを実現しようというものだ。CINEMA 60 SERIES2では、初段の電流源を抵抗から定電流回路に変更した最新HDAM-SA2回路が採用されている。電源ラインの変動による影響やハムノイズの混入を低減、音の明瞭度を向上させたという。電源回路の規模も大きく、CINEMA 70s SERIES2の100W/ch(6Ω)に対して2倍の200W/ch(6Ω)の出力を実現している。

 802 D4をシングルアンプで鳴らしてみた。CINEMA 70s SERIES2のシングル駆動と違って、音に鈍さや縮こまった感じはないが、クォリティ感はCINEMA 70s SERIES2のバイアンプ駆動時とほぼ同等と言う感じがする。そこでまたCINEMA 60 SERIES2で802 D4をバイアンプ駆動してみたところ、これまた音が激変。全体に響きが厚くなり、ゴージャスなライヴの雰囲気が甦ってきた。ヴォーカルの線の細さが雲散霧消し、ベースに実体感が伴なうようになり、オーケストラの響きに色彩が加わり、それぞれの楽器の解像感が上がるのである。今回のテストで、CINEMA 70s SERIES2、CINEMA 60 SERIES2ともにバイアンプ駆動の効果はとても大きいことがよくわかった。

 強烈なキックとベースが収録されたプリンスの『レインボー・チルドレン』を聴いてみて驚かされたのは、タイトに引き締まった低域の解像感の高さだった。サウンドステージの広がりも抜群で、Bowers & Wilkinsのスピーカーらしい魅力が引き出されたことがよくわかった。

 児玉麻里が夫君ケント・ナガノとベルリン・ドイツ交響楽団と共演した『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 2楽章』を聴いてみた。低弦の伸びと力感表現がすばらしく、渋い輝きを感じさせるピアノとの対比も見事だ。エベーヌ弦楽四重奏団の『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番』1楽章の若々しい、フレッシュなハーモニーにも魅了された。躍動的でしなやかなベートーヴェンである。一方でECM録音のマルチン・ボシレフスキ・トリオの最新作で聴ける立体的なサウンドステージの広がりや粒立ちの良いピアノの響きの美しさにも感心させられた。

 802 D4をバイアンプで鳴らしたときのCINEMA 60 SERIES2の魅力は極めて大きい。オーバーヘッドスピーカーを使わずに、フロントスピーカーをバイアンプ駆動にした5.1chもしくは4.1ch再生で本機を使いこなすのもありではないかと思う。天井にスピーカーを取り付けるなんてムリムリ、という方も多いでしょうしね。

日本以外で展開されていたCINEMA 60の第二世代機が本機。CINEMA 70s SERIES2と仕様は近似しているが、筐体高が増したことによる内部空間的な余裕を活かし、音質面での向上を目指したモデルと解釈できよう。デジタル/アナログ音声入力やHDMI出力端子が増えているが、主だった接続端子はCINEMA 70s SERIES2と同等だ

内部はCINEMA 70s SERIES2とよく似た回路/基板レイアウトとなっているが、電源部の充実などが施され、最大出力が倍増、圧倒的なハイパワー化が果たされている。パワーアンプ部を駆動するプリアンプも、HDAM-SA2採用の電流帰還型回路となっている。なお、筐体高は高まっているが、奥行はCINEMA 70s SERIES2よりも短い

 

両機種ともにドルビーアトモスで本領を発揮、非常に魅力的だ!

 などと言いながら、CINEMA 70s SERIES2に戻してドルビーアトモス再生を試してみよう。フロントスピーカーは802 D4、センタースピーカーはHTM81 D4、サラウンドスピーカーは805 D4、トップミドルはイクリプスTD508MK4である。フロント、センター、サラウンドは「フルレンジ」設定、トップのみ110Hzクロスの「スモール」設定だ。再生前にHDMI入力の音質向上に資するように、「WiFi」や「Bluetooth」などの不要なネットワーク関連設定を全てオフにした。

 ドルビーアトモス収録の『トップガン マーヴェリック』。超音速テスト機ダークスターでマーヴェリックがマッハ10に挑戦する冒頭を観たが、鮮やかな軌跡を描く飛行音の空間定位の移動感など申し分ないし、登場人物のささやき声から声を張った叱声までを見事に描写し、中域のリニアリティの良さを実感させた。映像のない2ch再生では音質面でやや物足りないところのあったCINEMA 70s SERIES2だったが、ドルビーアトモス再生で一気にその魅力を発揮した印象だ。

 CINEMA 60 SERIES2で再生したドルビーアトモス収録『狂気/ピンク・フロイド』BDオーディオ盤の3次元立体定位もすばらしかった。L/C/Rのフロントチャンネルの音像の厚みは申し分ないし、音場が疎にならない空間の密度感にも感動させられた。「タイム」で聴ける数多の時計が鳴り響くところの音数の多さは明らかにCINEMA 70s SERIES2を上回る。

 本体価格は5万円高いが、上位モデルならではの魅力があることをドルビーアトモス再生でも実感させられた次第。

 

リファレンス機器
●4Kレコーダー : パナソニックDMR-ZR1
●スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 802 D4、HTM81 D4、805-D4
●スイッチングハブ : バッファローBS-GS2016/A
●ミュージックサーバー : デラN1A/3

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』