本特集に掲載した試聴取材は全てD&M試聴室で実施した。まずマランツブランドの試聴室で2chシステムでの試聴を行なったのち、デノンブランドの試聴室(写真)で5.2.6構成でのサラウンド再生を試した。ベッドスピーカーは、801 D5(L/R)、HTM81 D5(C)、802 D5(LS/RS)、DB1D×2(LFE×2)で、オーバーヘッドスピーカーは全てBowers &Wilkins製の埋め込み型モデルを6本用いている。AVセンターはマランツ製AV10+AMP 10、4KレコーダーのパナソックDMR-ZR1を用いている
①圧倒的なリアリティと感情喚起力にノックアウト ─── 麻倉怜士
見た目やユニット構成は旧シリーズの800 D4と事実上同じ、違いは制振、ネットワーク、ウーファー関連など些少だが、音の磨き込みの凄さに唖然とした。その広大なる情報性、音楽性、そして感動喚起力は圧倒的で、大幅向上が確認できた。
まず805 D4と805 D5を比較する。格段に情報量が増え、低域の重心がさらに下がり、安定感が増した。高域はヌケがさらにクリアーになり、倍音の量が目に見えて増えた。立ち上がり、下がりの輪郭がさらに鋭利になり、トータルでは音楽の実体感が格段に増した。まとめると①高S/N。音場の透明感が並外れている。②ディテイルの再現性。たいそう自然で、強調感が全くない。③質感の素晴らしさ。それは音楽に奉仕する質感であった。
805同士の比較で、表現性の伸長ぶりがわかったところで、上級スピーカーをそれぞれ一言で評価しよう。804 D5「音楽の動きがダイナミック。細かな感情の動きも克明に表現する。空間に忽然と浮くヴォーカルに感動」、803 D5「量感と倍音が豊潤。音の核のリジッドさ、3D的な音場内で音像描写が確実」、802 D5「稠密で透明感の高いピラミッド的音調が、ハイスピードで驀進する」、801 D5「風格を湛えた、一音一音までの音楽的解像感は格別」。
800 D5シリーズで組んだサラウンドも凄い。一言、圧倒的にリアリティを持った場の高品位性、ダイナミックな感情喚起力にノックアウトされた。
②劇場をはるかに凌ぐ圧倒的情報量。まさに衝撃のサラウンドサウンド ─── 小原由夫
マイナーチェンジと受け取る向きも多いBowers & Wilkins 800 D5シリーズだが、内容を知れば知るほど、これが大きな進化・改善であるとわかる。801 D5/802 D5/HTM81 D5/DB1D×2が揃い踏みとなったD&M視聴室にてサラウンド環境で体験して、私はそれをより強く実感した。見慣れたコンテンツ/シーンでの、それは、それは衝撃的な体験だった。
UHDブルーレイ『フォードvsフェラーリ』のテスト走行シーンでは、チャンネル間の音の繋がりはいわずもがな、フレーム外のエキゾーストノートの相関も非常に稠密だ。ギアチェンジの効果音の小気味よいレスポンスとトランジェント、その中でもフォード首脳陣の会話が全くスポイルされずにくっきり迫り出してきた。センター専用モデルHTM81 D5のセリフの浸透力の強さとボディ感も素晴らしい。
『TAR/ター』の廃屋地下の場面では、雫の反響が醸し出す鬱蒼としたムードに包まれた。雨垂れの音の迫真性と奥行の再現も見事で、主人公の緊迫感と焦りが克明に浮かび上がる。このような均整の取れたサラウンドのパフォーマンスの向上ぶりは、私のこれまでの経験では、AVセンターの更新時に感じたことがあるが、スピーカー刷新時では記憶がない。
スクリーンサイズでは劇場に叶わないものの、現代テクノロジーに基づくホームシアターにあって800 D5シリーズでサラウンド環境を揃えたならば、音の情報量という点では劇場をはるかに凌ぐに違いない。
③圧巻の完成度に満ちた音。立体音響も強い説得力に満ちる ─── 亀山信夫
エメット・コーエンのCD『ユニヴァーサル・トゥルース』で5モデルを一気に聴き、さらに三次元立体音響対応7.2.6スピーカーシステムでBD『ゼロ・グラビティ』のドルビーアトモス音声を視聴。その印象報告である。
805 D5のみ、前世代805 D4と比較。見た目は基本的に同じだが、音は驚きの変化。抜群にスムーズな広帯域感の中に、濃密/濃厚な音像描写やヌケのいい空間印象で魅せる。
804 D5は、ややボトムエンドが気になる。エージングが足りなかったかもしれないが、もう少しほぐれて鳴って欲しいとも思った。
803 D5はボトム域が厚みと伸び感を得て、躍動の表現力で魅せる。4つのユニットがまるで1ユニットであるかのような、まとまり感が素晴らしく、そこに勢いや生命感が輝く。
802 D5は、さらに楽器の大きさや太さやスケールなどで惹く。一方で微小音のオブリガートを印象深く聴かせ、只者にあらずと思わせる。新生800 D5シリーズの圧巻の完成度を想った。
801 D5は大口径のスケール感やダイナミズムを土台にしつつ、雑味のない圧倒的上質感で魅了する。これぞ旗艦の風格であろう。
ドルビーアトモス再生では、一人残された宇宙船での独り言はやはり雑味のないセリフとして音像化、しかし強い説得力に満ちる。船内爆発の緊急場面では全周囲の移動軌跡も鮮明に、どこに隠し持っていたのかと思う迫真的パワーを開陳。わがドルビーアトモス基準映画が新鮮に感じられた。
④立体音響は正確で感動的であり懐の深さも加えた音へと進化した ─── 鳥居一豊
Bowers & Wilkinsの800シリーズがモデルチェンジし、800 D5となった。外観は800 D4シリーズとそっくりで、背面アルミニウム材のパターンが曲面を帯びたものとなるが、その他はほぼ同じ。正面から見たら見分けるのは難しい。そんな見た目がほとんど変わらない800 D5シリーズに対面して、相当に音に自信があると感じた。そうでなければ、あれこれと飾って見た目を変えるはずだから。
変更点は、キャビネット内の金属製バッフルを大幅に強化するなどの剛性向上。B&W史上最も静かなキャビネットだという。そしてウーファー磁気回路の更新。交流磁界による変調を防ぎ、駆動時の振動板の動きのブレをなくし、S/Nが向上しているという。
低音の力感の向上やリズムの躍動。確かにムダな音がしない。805 D5は小型ながらさらに精密になった。804 D5は本機のみ内蔵された中域に専用の金属製バスケットを組み込みS/Nを向上。タービンヘッド採用機との差をさらに縮めた。803 D5、802 D5と低域はさらに雄大かつ透明になり、801 D5で本領を発揮。理詰めの設計と改善で、800 D4シリーズとはまるで異なる領域へ到達した。
音楽の魅力が溢れ出るような音だ。映画のサラウンド再生も正確でしかも感動的だ。800 D4シリーズは正確さや性能は見事だが、自分が家で使うには音が真面目すぎる感覚だったが、800 D5シリーズはそれに加えて、自宅でリラックスして音楽を楽しみたいとさえ思う懐の深さのある音への進化した印象だ。
⑤環境音とセリフのリアリティが向上。あまりにも完成度の高い音に驚嘆 ─── 土方久明
D&Mの試聴室で、Bowers & Wilkins 800 D5シリーズを体験した。キャビネットの強化、ベース部の再設計、スピーカーユニットの磁気回路、ネットワークなど、800 D5シリーズは各部が刷新されている。800 D4シリーズと比べて、全帯域での付帯音が減少し、低域のリアリティと迫力が高まるなど、予想以上の音質向上が確認でき、音楽性も高まっていた。という印象でのステレオ環境での試聴が終わったら、サプライズが待っていた。なんと800 D5シリーズをフロアスピーカーに使用した5.2.6構成のサラウンド再生が体験できるという。
マランツのセパレートAVセンターAV 10+AMP 10をアンプに用いて、L/Rに801 D5、サラウンドL/Rに802 D5、センターにHTM81 D5、サブウーファーにDB1Dを2台配置した構成だ。
UHDブルーレイ『トップガン マーヴェリック』のダークスターが格納庫から離陸するシーン。情報量の多さと周波数レンジの広さ、ローレベルのリニアリティの高さに感心する。ただ、このレベルの表現は800 D4シリーズでもほぼ体験できたのだが、800 D5シリーズでは、そこから大きな上積みが感じられた。環境音とセリフのリアリティが大きく向上、低音域の再現力が高まり、離陸時の迫力も大きく上がっている。
僕は、自宅でオールフルレンジスピーカー+サブウーファーによるサラウンド環境を構築しているが、それとはまた異なる魅力を持つ、あまりにも完成度の高いサラウンド再生に驚嘆したのであった。
⑥骨格の太い音が素早く立体的に拡がる興奮と熱狂の立体音響に進化を実感 ─── 藤原陽祐
約5年の歳月を経て生まれ変わったBowers & Wilkinsの最高峰、800 D5シリーズで構築したサラウンドシステム。その外観は前作の800 D4シリーズと瓜二つだが、実際のサウンドを体験すると、確かな進化が実感できた。
UHDブルーレイ『グレイテスト・ショーマン』、ヒュー・ジャックマン演じる主人公バーナムが、奇跡の声を持つオペラ歌手ジェニー・リンドに出逢い、出演交渉するチャプター10から、彼女の歌声が劇場に響き渡るステージの再生。透明感溢れる歌声といい、雄大な空間の拡がりといい、これまで聴こえなかった音が鮮明に浮き上がる。そして場内の興奮、熱狂をダイレクトに感じさせる観客の拍手や歓声など、情報量の豊富さに驚かされる。
米国盤UHDブルーレイ『シビル・ウォー アメリカ最後の日』チャプター5の激しい銃撃戦は、その銃弾の強さ、勢い、スピード感に圧倒された。耳のすぐ横を銃弾が通り抜けていくようなリアリティで、その映像を見ながら思わず身構えてしまったほどだ。
しかも単に解像度の高さを強調するようなこともなく、全体に刺激臭のない肌触りのいいサウンドで、セリフの質感が滑らか。輪郭に刺々しさがなく、品位が高く、穏やかに聴かせる。声、効果音、音楽と、激しさを前面に押し出すことはないが、ここぞという場面では、骨格の太いサウンドが素早く、立体的に拡がり、臨場感を際立たせる。次元の違いを感じさせるサラウンド再生だった。
⑦センターHTM81 D5の力強く豊かな感情表現能力が圧巻だ ─── 山本浩司
デノン視聴室でBowers & Wilkinsの最新モニターのトップエンド800 D5シリーズでサラウンドサウンドを体験した。L/Rが801 D5、センターがHTM81 D5、サラウンド用が802 D5という贅沢な布陣である。
5.1chとドルビーアトモスのコンテンツを諸々体験してみたが、まず感心させられたのは、HTM81 D5の表現力の豊かさだった。25cmダブル・ウーファーの801 D5にたいしてHTM81 D5は20cmダブルだが、エネルギーバランスが見事に揃っていて肉厚で力強いダイアローグを眼前に提示、男声、女声ともに心の襞の沁みとおるエモーショナル・フィデリティに優れたセリフを聴かせてくれたのである。本機はシングルバスレフポートになっており、声のボディ感を重視した設計が採られているようだ。
800 D5シリーズは、前世代に比べてキャビネットの剛性強化が図られていて、聴感上のSN比が明らかに上がっている。『SINNERS』を再生してみて、様々な環境音がこれまで聴いたことがないレベルで浮き上がってきて、情報量の豊かさに息をのんだ。後半のアクション・シーンでは銃撃音などが恐ろしいスピードで炸裂し、そのダイナミック・コントラストの鮮やかさにも吃驚仰天した。この800 D5シリーズ、ローレベル方向のみならずハイレベル方向のリニアリティにも優れるのである。
最新映画のワイドレンジ化、ハイダイナミックレンジ化に見事に適応した超高音質ホームシアターサウンドの誕生を喜びたい。
⑧映像系音声機器に変革を迫るそれほどの高みに達した音だ ─── 吉田伊織
かつてのマトリクス801はドーム型トゥイーターが非力なのに周波数フラットレスポンスにこだわるあまり薄い高域が常時つぶやくようで感心しなかった。それが後ろに角が生えたノーチラス・チューブトゥイーターが登場して大きく改善。特に最近の800 D4シリーズでは中/低域の応答性まで向上した頼もしいモニターとして一大進化を達成してきた。
今回の800 D5シリーズは、各ユニットの原理的な改善もさることながら、キャビネットの力学的な確かさを合目的的に追求する苛烈な姿勢が印象深い。映画の音ではどうか?
当初は『地獄の黙示録』のだみ声、語勢が目立つラフな英会話がきれいすぎる印象で危ぶんだ。しかし次第に本領を発揮。胸板の共鳴感や伝声管のような語勢のエネルギーがいかにもヤンキー英語風で爽快だ。冒頭のウィラード大尉が密命を受ける場面など、会話を浮き彫りにするさりげない残響処理の効果が明瞭。淡々とした語りで舞台のように沁みとおる。それに冒頭のヘリの壁伝いのような精密な定位が最高水準。乾いたローター音は合成音なのだが、ドアーズの「ジ・エンド」はギターの粘性や官能性がたっぷり詰まっていて絶妙。たしかにドラッグの匂いがする! 出陣場面の金属音や爆破音の迫力も精密な定位と微小音の応答性があってこそだ。
映像系音声の再生装置にも変革を迫りそうな高みに達した800 D5シリーズ。これは大歓迎だ。
>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』