1984年、台湾の大手PCメーカー、Acer(エイサー)の周辺機器部門から独立し、同グループ内の映像機器を扱う別会社、明碁電腦(Acer Peripherals)を設立。1990年代、PCの爆発的な普及という追い風を受けて、モニター、及びその周辺機器の開発、製造に意欲的に取り組み、高度な技術、ノウハウを蓄積している。その製品開発レベルの高さは、瞬く間に広まり、世界のメジャーブランドからも、一目置かれる存在となる。
そして2001年、同グループから独立、自社ブランドとして発足したのがBenQだ。「生活に楽しさと品質を届ける」という明確なテーマが掲げられ、液晶ディスプレイ、プロジェクターを軸に、世界の市場へ本格進出を果たすこととなる。
2017年の発売以来、世界的な爆発的ヒットとなったScreenBar(スクリーンバー)をご存じの方も少なくないだろう。クリップ固定式でスペースを取らず、非対称光学設計により、画面に光が映り込まない。さらに周囲の明るさに合わせる自動調光機能まで搭載済だ。
ScreenBarは非常にわかりやすい事例だが、BenQのモノづくりに共通して言えるのが「実用性の高い独自機能と技術」を重要視していること。これは一般向けの映像モニターに限らず、LED照明、電子黒板についても言えることで、もちろん今回の主役でもあるプロジェクターも例外ではない。
高純度の発色が特徴的なR/G/BのLEDを光源に採用
BenQではビジネス用からモバイル用、そしてホームシアター用まで幅広いラインナップを確立しているが、表示部にDMD(Digital Micromirror Device、デジタル・マイクロミラー・デバイス)を投じたDLP方式を採用している。コントラストに優れ、経年劣化が少なく、小型化しやすいなど、DLP方式の優位性を考慮しての選択だが、ここでも独自の技術を大切にする姿勢がしっかりと貫かれている。
その1つが光源として、多くのモデルで高効率、高純度の発色が特徴的なR/G/Bの3色のLEDを採用していることだ。もちろん高輝度、低遅延を追求したTK710STiや、天井投影にも対応したGV50など、レーザー光源モデルも存在しているが、現在の標準はLED光源と言っていいだろう。
では、なぜBenQのプロジェクターはLED光源を採用したモデルが多いのか。まず基本的な色純度が高いことだ。最新のRGBレーザーと比べると、数値(スペック)ではやや見劣りするかもしれないが、現在入手可能なコンテンツに対しては、必要にして十分な色域の確保が可能。実際、LED光源を採用したホームシアター向けの最高峰、W4100iでは映画コンテンツの広色域基準となるDCI-P3色域のカバー率、100%を達成している。
レーザー光源の物理的な干渉によって生じる微細な斑点状のスペックルノイズが回避できるのも大きい。高輝度、広色域はRGBレーザーの強みだが、反面、画面にザラザラした、このスペックルノイズが見えやすいという大きなウイークポイントがある。
最新モデルのうち一部の製品では、このスペックルノイズの対策は進み、だいぶ改善されてはいるが、完全に取り除くのは至難の業。これに対してLED光源は光がマイルドに拡散するため、ザラつきのない、滑らかな映像として表示することができるというわけだ。
通常焦点モデルのTK705i。4K表示可能な高輝度プロジェクターとしては、筐体は幅22.9cm、高さ16.8cm、奥行24.9cmとコンパクト。自動台形補正や自動フォーカス調整などの多機能と、3000ANSIルーメンの4K画質を両立している
さらに単板式DLPプロジェクターで問題になりやすい虹色状のカラーブレイキング(色割れ)ノイズが目立ちにくいのもLED光源の強みだ。単板式のDLPの場合、RGBの光源を高速で切り替えることでフルカラー表示を実現しているため、原理上、どうしてもカラーブレイキングノイズが目につきやすい。特に日本人が視聴することが多い、字幕付き映画の鑑賞時での字幕の入れ替わりの際に、このノイズが指摘される傾向が強い。
R/G/B光源を独立してスクリーン上で表示できる3板式DLP(映画館はこのタイプ)では問題にならないが、単板式のDLPでは避けては通れない課題だ。現在、考えられる唯一の対策は、RGB光源を高速で切り替えること。この超高速制御に対応しやすく、かつコストパフォーマンスに優れたシステムを構築できるのがLED光源というわけだ。
反面、レーザー光源におよばないのが明るさ。ハイパワーのRGBレーザー光源を搭載した最新のDLPプロジェクターでは5,000ANSIルーメンを超えるモデルも登場してきたが、通常のRGB LED光源(3RGB)モデルでこのレベルに到達するのは難しい。
そこで開発されたのが4LEDという技術だ。LED光源を採用したDLPの場合、R/G/B構成のLEDを使うのが一般的だが、BenQではさらに緑色(G)の光を増幅させるLEDを追加し、R/G/G/B構成の4LED光源システムを開発。サイズ的にも発熱的にも、ハンディを背負うことなく高輝度化を実現したのである。
ただLED光源は、輝度などのスペックの点では、RGBレーザーと同等とまではいかない。ただその数値はあくまでも最高輝度を示すものであり、発色のバランスまで考慮した画質とは言い難い。「実用になる明るさ」という見方で考えると、かなり高いレベルに達していると見て間違いない。
BenQのプロジェクターは、基本、自社生産ラインで1台ずつ明るさ/色の出方を測定し、最適な状態にチューニングした後に出荷されているという。ユーザーに特別な調整を強いることなく、製作者が意図した通りの画質、色合いを楽しんでもらいたいという考え方だ。
そして長年使い続けていくと、R/G/Bの各LEDが徐々に劣化し、色のバランスが崩れてしまうという問題(経年劣化)についても、色調の変化をセンサーで検知し、自動調整するシステムを組み込んでいるという。
LED光源採用のDLPプロジェクターTK705iとTK705STi
今回の連続企画で採り上げるTK705i(標準焦点モデル+光学ズーム対応)、TK705STi(短焦点モデル)でも4LED光源システムが採用され、色再現の自動調整するシステムも搭載済みだ。熱効率にも優れた設計で、標準モードで20,000時間、エコモードなら30,000時間の長寿命を約束している。仮に毎日2時間、27年余り使い続けたとしても、正確なホワイトバランスが維持されるというわけだ。
こうしたBenQプロジェクターの特徴は、TK705i、TK705STiの両モデルにもしっかりと受け継がれている。写真からもお分かりのように、無骨な業務用のイメージを払拭するような、洗練されたスマートなデザインが特徴的だ。
DLPプロジェクター:TK705STi ¥249,000 税込(短焦点モデル)
●型式:1チップDLPプロジェクター
●投写デバイス:0.47インチDMD
●光源:4LED
●スクリーン上の解像度:水平3,840✕垂直2,160画素
●輝度:3,000 ANSIルーメン
●色域:98%(Rec709カバー率)
●コントラスト比:600,000:1(FOFO値)
●投写比:0.8
●投写距離:100インチ=1.8m、120インチ=2.1m、150インチ=2.7m
●レンズ仕様:F=1.8、f=8.498
●内蔵スピーカー:8W✕2
●接続端子:HDMI入力2系統(2.1、HDCP2.2対応、1系統はHDMI eARC対応)、USB Type A1系統、USB Type C 1系統、アナログ音声出力1系統(3.5mmステレオミニ)、12Vトリガー端子1系統
●ノイズレベル:24dB(Ecoモード)、26dB(標準モード)
●消費電力:250W(標準)、0.5W未満(スタンバイ時)、2W未満(ネットワークスタンバイ時)
●オプション:天吊金具CMP-80(¥19,800税込)あり
●内蔵OS:Google TV(Android 11)
●Bluetooth対応:5.2対応
●Wi-Fi対応:802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz対応)
●寸法/質量:W229.2×H168.2✕D249.7mm/3.8kg
●ラインナップ:通常焦点+光学ズーム対応モデルTK705i(¥229,000税込)あり
上質なファブリックで仕上げられた前面部といい、クリーンな幾何学模様に主要な操作部を配置した側面部といい、シルバーカラーを基調としたデザインは凝縮感があり、プラスチック筐体にありがちだったチープさは皆無だ。
また高さを抑えたフラットなフォルムは、天吊り設置、テーブル設置を問わず、存在を必要以上に主張せず、空間への圧迫感を感じさせない。両モデルはレンズ部分の納まりがやや異なるが、基本、同一デザインと言っていいだろう。
気になる画質だが、明るく、色彩豊かな再現性で、柔らかな独特のテイストが持ち味だ。明るさ、コントラスト、色再現と両機の差は僅少。厳密に言えば、画面周辺部の歪み、四隅のピントと言った部分で、短焦点モデルのTK705STiは、通常焦点+光学ズームモデルのTK705iの方がやや有利だというが、90インチ前後の投写では、その差はほとんど検知できないレベルだった。
最近、流行りのRGBレーザー光源モデルに比べると、明るさはやや控えめに感じられるものの、コントラスト感、階調性の推移、色彩描写と不満はない。そして気になるカラーブレイキングノイズだが、皆無とは言えない。ただノイズ自体のピークが抑えられ、面積も小さいため、視聴時のストレスは極めて少ない。実際、RGBレーザー光源のDLPモデルと比較すると、長時間視聴した際の目の疲れは少なく、映画1本、集中して鑑賞することができた。
強調感のないニュートラルなタッチ。ストレスがなく心地よい映像が好印象
Disney+で観た『プラダを着た悪魔2』の再生でも、強調感のない、ニュートラルなタッチの映像は健在だ。純度の高い色再現、穏やかな黒の締まり、そして冷静に描き分けるフェイストーンと、随所でプロジェクターとしての素姓の良さを確認することができた。
視聴後、今、私が感じているのは、かつて一世を風靡した3管式プロジェクターに通じる映像のテイストを持ち合わせていること。RGB独立の光源で、しかも蛍光体による発色であることを考えると、当然と言えば当然のこと。
コントラスト感、色再現、階調性と、あくまでも落ち着いた、穏やかな表現に徹しているため、長時間の視聴でもストレスが少なく、疲れにくい。その映像からある種の心地よさを感じるのは私だけではないだろう。
(撮影:後藤敦子)
TK705i/TK705STiは、「4K表示」「3000ANSIルーメン」「Rec.709色域98%カバー」に対応。Google TV OS搭載や充実したスマート調整機能も搭載している
※投写比0.8は短焦点モデルのTK705STiの値。通常焦点+光学ズームモデルのTK705iは投写比1.0〜1.3となる