2024年のオートサウンドウェブグランプリでシルバーアワードを獲得したフランス、ブラムの最上級スピーカー「シグネチャー・マルチックス・バレル」。3ウェイスピーカーのミッドレンジとウーファーはシリーズ名にもなったマルチマグネットのユニットを採用。そこに組み合わされるトゥイーターも、シルクソフトドーム、マグネシウムハードドーム、エアモーショントランスフォームの3種を揃え、好みに応じたシステム構築を可能にしている。メイドインフランスというこだわりも見せる高級スピーカーだ。ここでは選考会で各賞を確定した直後の座談会を紹介する。[編集部]

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、鈴木裕、長谷川圭、藤原陽祐、黛健司、脇森宏]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

Auto Sound Web(以下ASW):グランプリ、シルバーアワードを獲得いたしましたブラムのシグネチャー・マルチックス・バレルシリーズのスピーカーについてお話をうかがっていきます。本機は、フランスはブラムの最上級シリーズスピーカーとしてデビューしたモデルで、3種類のトゥイーター、2種類のミッドレンジ(フルレンジ)、2種類のミッドベース(ウーファー)といったシリーズラインナップから、フェイズプラグタイムの165mmユニットと80mmユニットをウーファーとミッドレンジとして使い、28mmソフトドームトゥイーター、28mmマグネシウムハードドームトゥイーター、エアーモーショントランスフォーマートゥイーターの3種類をそれぞれ組み合わせて3ウェイスピーカーとして聴きました。どの組み合わせも魅力的ということで、シリーズ製品全体の評価として採点していただいています。みなさんどの組み合わせが良かったなど含めてお話しいただければと思います。それでは鈴木先生からお話しいただけますか。

鈴木裕氏

鈴木 裕(以下、鈴木):AMTの音が印象的でした。コンプレッションドライバーとホーンを組み合わせたような良さもありました。また、ネットワークの仕様についても各ユニットに合わせた調整ができるようで、とてもいい印象でした。あと、マグネシウムのトゥイーターもよかったですね。マグネシウムは、さすがに現代的な素材で繊細さをうまく表現していました。ソフトドームのトゥイーターは聴きなれた音という印象でした。3つともそれぞれに魅力的で、どれを選ぶか悩ましかったです。

ASW:ありがとうございます。続いて、脇森先生はいかがでしたでしょう。

脇森 宏(以下、脇森):個人的な好みはマグネシウムでした。ソフトドームもよくまとまっていていいんですが、令和の時代からすると昭和の香りがする音。

ASW:懐かしい感じですね。

脇森:懐かしい音、それはそれでいいんですが、マグネシウムの方が切れが良くて、厚みがあって気持ちよく聴けました。3ウェイなので、結構調整は大変かもしれませんね。

脇森宏氏

ASW:石田先生はどう聴かれましたか?

石田 功(以下、石田):はい。僕もマグネシウムが一番好きでした。これは好みでいいのでしょうけれど、マグネシウムが一番声がはっきりしていて良かったです。アタック音もとてもインパクトがあって良かったと思います。ほかのトゥイーターだと少しおとなしく感じました。

ASW:藤原先生はいかがでしたか?

藤原陽祐(以下、藤原):僕もどのトゥイーターかと聞かれたらマグネシウムが良かったという答えになります。全体のバランスからすると、とてもキリッとした、ホーン的な鳴りの良さを感じました。とても気持ちのいい音がするんだけれど、音源によっては独特の響きを感じることがあって、トゥイーターが主張している感はあるんですがマグネシウムが価格の点でも選びやすいと思いました。

藤原陽祐氏

 ソフトドームは耳当たりがいい聴きやすくて繊細で天井の高い音、フォーカスもいい。ただ、パワーを入れていくと少し息切れするような、ちょっとつらそうな鳴り方になる。その点、一番高額になるAMTはボリュウムを上げて鳴らすと鳴りっぷりは一番立派でした。

 今回ブラムの製品は、同じフランスのフォーカルのにおいがありましたけれど、このシグネチャー・マルチックス・バレルになって一皮剥けたような、開放的な響き、ニュートラルな音に変化してきた感じがします。

黛 健司(以下、黛):みなさん、マグネシウムトゥイーターの評価が高いようですが、私はAMTトゥイーターがいちばんよかった。価格順にソフトドーム~マグネシウム~AMTと聴いていきましたが、トゥイーターを替えるごとに、どんどん音がよくなっていく。ソフトドームトゥイーターの3ウェイでも充分満足できる、とてもいい音なのですが、マグネシウムトゥイーターにすると、声の艶やかさがいっそう引き立つ印象で、弦の響きがしなやかなことにも好感をもちました。今井美樹の声が蠱惑的で、なんとも色っぽい、抜群の音で楽しませてくれました。トランペットの音像がクッキリと引き締まって、響きも美しい魅力的なサウンドを堪能できたことも印象に残っています。

黛健司氏

 高音が変わると、低音も変わることはよく経験しますが、トゥイーターをAMT1にすると、高域のクォリティが向上するだけでなく、低域も充実して、ベースの音がとてもしっかりしたのも印象的でした。私が重視する音場空間の再現能力……拡がりや深さの再現……も、AMTトゥイーターが際立っていた。

ASW:長谷川先生はどうでしたか?

長谷川 圭(以下、長谷川):私はマグネシウムかAMTです。ソフトドームは、脇森さんもおっしゃってましたが懐かしい感じで、聴きやすいんですけれど、ちょっと刺激が足らない感じだったんです。その点マグネシウムもAMTも現代的で聴いていて面白かったんです。聴こえ方の面白さでいうと、AMTが最も上で、特に聴こえ方の点で、音像が目前に迫るようなイメージで聴かせてくるところが印象的でした。左右スピーカーの中央にヴォーカルがいるんですが、ほかのトゥイーターよりも一歩こちらに近寄って歌っているように感じました。この聴こえ方はクルマに組み込んだ時に面白い効果を生むんじゃなかろうかと感じました。

長谷川圭氏

 あと、今回の聴き方として、ミッドレンジの高音域はカットせずに鳴らしていました。つまり、ミッドレンジの高音とトゥイーターの高音は重なって再生されていました。聴いていて違和感なくというか、とてもスムースに聴けた印象なんです。つまりこのミッドレンジの出来が相当いいのだろうなとも思いました。

石田:ひずみのないユニットですよね。もともとフルレンジを謳うユニットですし、相当に優秀でしょう。

長谷川:ブラムって中低音が少しふくよかな印象がありますが、それがこのモデルでは鳴りを潜めている。バランス良くなっています。そこが藤原さんのおっしゃられたフォーカルっぽさが抜けたと同じなのかもしれないですね。もしかするとギー社長が鳴らしたかったフレンチサウンドというのはここにきて高度に完成へと迫ってきたのかななどとも考えていました。

石田:でもブラムの社長、ギー・ボネビル氏は低音好きですからね、これにサブウーファーまで足して完成かもしれません。

ASW:先ほど脇森先生は3ウェイで音をまとめようとするとなかなか大変そうとおっしゃられてましたが、3つもユニットがあるとインストールも大変でしょうね。

脇森:2ウェイにしたときのつながりがどうなのか、今回そこまでは確認しきれていないのだけれど、うまく鳴ってくれそうではありますね。それならば新しいマルチックス2ウェイでもかなり楽しめそうです。

石田:たぶん近接配置するよりも、車室内で上手くばらしてあげた方がつながりはいいように感じます。

ASW:マグネシウム推しが多いご意見でしたが、どのトゥイーターもそれぞれ良さがあるということでしたね。実際に輸入元が販売店でデモンストレーションするエンクロージュアを使って皆さんにも音の確認をしていただいていますので、店頭でお聴きになられた方は共通の印象を持たれているかもしれませんね。まだお聴きになっていない方は、トライムのフェイスブックなどでデモ先店舗情報をチェックされるといいかもしれません。