グランプリを獲得した韓国、アビスのDUAL MONO 120.2パワーアンプ、その魅力とは。ここでは長谷川圭氏と脇森宏氏によるレビューを紹介する。

みなぎる力感は音楽のスケールを一回りも大きくするよう
音の消え際も滑らかに聴ける

文=長谷川 圭

 2024年に日本市場への導入がかなった韓国発の高級ブランド、アビス。その最上級シリーズとなるDUAL MONOラインには2モデルが設定される。チャンネルあたりの定格出力、2Ω負荷時の値がモデルナンバーになっている。本機DUAL MONO 120.2は4Ω負荷時の定格出力は75W×2である。DUAL MONOの名の通り、電源端子までも別個に備えるデュアルモノーラル構造としている。さらにA級動作増幅回路とし、こだわりの音質最優先設計を徹底しているようだ。増幅素子には大電流に対応したCANタイプトランジスターを採用し、A級としては高出力なアンプに仕上げられている。

 そのサウンドは生々しく、一声聴いて只者ではないことを認識させた。一音一音にみなぎる力感は音楽のスケールを一回りも大きくするよう。それでいて繊細な響きの聴かせ方も美しく、音の消え際も滑らかに聴ける。音の佇まいは美麗そのもの。ヴォーカルは潤いをともないながら張りのある歌声で聴かせるし、楽器はそれぞれの響きが空間に放出される。少し懐かしさを覚える正統A級アンプの音、現代においては他にない魅力となっている。

 今回の聴き方は、リファレンスとして使用しているカロッツェリアTS-Z900PRSスピーカーをドライブしたが、現代的に緻密に鳴らす900PRSよりは、仄かな雰囲気を大事に鳴らすようなスピーカーとの相性がいいかもしれない。本機の魅力最大発揮にはまだ余地が残されているように感じた。

A級アンプにこだわりをみせるアビス
色彩感と立体感に富むサウンド、深みのある音質を楽しむことができた

文=脇森 宏

 アビスのパワーアンプラインナップにはSQ.DUALMONO、それにその名もずばりA‐CLASS(現在は終売)とA級アンプがずらりと並び、A級動作への強いこだわりが見て取れる。

 DUAL MONOはその頂点モデル。この度聴いた120.2は4Ω負荷で定格75W✕2、2Ω時にはモデルナンバーどおりの120W✕2を出力する。同様に4Ωで100W✕2、2Ωで150W✕2を発生する180.2というモデルも存在する。

 内部コンストラクションは左右対構成で、音質に定評のある素子も数多く見られる。ブランドから正式なコメントはないが、CANタイプのパワートランジスタが採用されているようで、このあたりも音質への強いこだわりが感じられる部分である。

 色彩感と立体感に富むサウンド。いささか装飾過多と聴こえなくもないが、厳選された素子の振舞いのなせる技だろう、深みのある音質を楽しむことができた。A級ながらパワーも充分。力感、スピード感ともに不足を゙感じることはなかった。LR別体のモノーラル機とステレオアンプの中間に位置するデュアルモノーラルならではの、音の安定感とセパレーションのよさを両立したコンストラクションの有利さも感じとることもできた。

 本機にとって今回の試聴は他流試合。各種揃うアビスのスピーカーと組み合わせれば、さらに大きくステップアップしたサウンドが得られるかもしれない。しかしその音がブランド名のABYSS(奈落の底)の始まりかもしれないから要注意である。

アビス ABYSS
Power Amplifier
DUAL MONO 120.2
¥1,097,000(税込)

●定格出力:75W×2(4Ω)、120W×2(2Ω)
●アイドル電流:5.6A
●入力感度:0.5~10V
●高調波歪率:0.05%未満
●周波数特性:10Hz~50kHz
●SN比:93dB超
●外形寸法:W403×H75×D203mm
●重量:5.7kg