ブロンズアワードを獲得したドイツ、ブラックスのReveration RX2 PROパワーアンプ、その魅力とは。ここでは藤原陽祐氏と長谷川圭氏によるレビューを紹介する。

組み合わせるスピーカーの持ち味を
丁寧に引き出そうとするような懐の深さを感じた

文=藤原陽祐

 精巧な雰囲気をかもしだすアルマイト処理のヒートシンクからして、BRAXのハイエンドモデルではあることは容易に想像がつくが、中味、サウンド共に一新している。最大の注目点はこれまでのアナログ増幅ではなく、Class-D技術を導入していることだ。増幅素子はデンマークのPURIFI社と共同開発したもの。PURIFI社の総帥、Bruno Putzeys氏は、Philips、Hypexに在籍していたデジタルアンプ技術のスペシャリストで、マランツの超弩級のプリメインアンプ、MODEL 10(242万円/税込)でも採用されるなど、高級ホームオーディオの世界でも高い評価を得ている。

 BRAXのパワーアンプといえば、圧倒的とも言える駆動力を誇り、音の骨格を明確に掘り起こしていくようなエネルギッシュなサウンドが思い浮かぶが、このモデルは大分、様子が違う。確かなシャーシ設計を裏付けるような、音の勢い、躍動感、あるいは目の前に拡がる空間のスケール感といったところはまさにBRAXの血統を感じさせるもの。

 ただ様々な音源を聴いていくと、特定の色合いを感じさせない気張りのない響きが実に心地よく、微小信号の再現性に長けて、その場の空気感、雰囲気までも、鮮明に描き出していく。ほんのりと温かく、肌合いのいいヴォーカルは、手を伸ばせば届きそうなほどニュアンスが豊かで、アコースティックギターの温かな響きが、空間にしみこむように拡がっていく様子も実に新鮮だ。強引にBRAXの世界に引き込むのではなく、組み合わせるスピーカーの持ち味を丁寧に引き出そうとするような懐の深さは、まさに新しいBRAXの世界だ。

堂々とした鳴りっぷり&みなぎるパワー感はやはりブラックス
『この音はこう鳴らすのさ』とスピーカーを従えているよう

文=長谷川 圭

 ブラックス初の本格的デジタルパワーアンプとして誕生したのがレヴェレーションRX2 PRO。これまで同ブランドのパワーアンプといえば、驚異的なドライブ力でスピーカーを駆動し、スピーカーのパフォーマンスを最大限引き出して、ブラックスサウンドとして聴かせる印象だった。本機もスピーカーを十全に動かして最高のパフォーマンスを引き出すだろう部分は同じながら、灰汁の抜けた洗練さを感じる。

 他社製品と比べると、堂々とした鳴りっぷりは頭抜けているし、音にみなぎるパワー感はやはりブラックス、『この音はこう鳴らすのさ』とでも嘯くようにスピーカーを従える印象だ。マエストロが奏でる音楽とでも譬えられるんじゃないかと思うが、それが嫌味なく聴ける。

 オーディオテックフィッシャー社の創業者であるハインツ・フィッシャー氏はアナログパワーアンプ開発のスペシャリスト、2代目社長であるジュリアン・フィッシャー氏がDSP開発をはじめてから、ハインツ氏がデジタルモデルに関与することはなく、本機に関してもジュリアン氏がデザインしたという。ジュリアン氏が目指すサウンドが、確立されてきたのかもしれない。

 本機にはさらなる期待もある、2025年にお目見えするというデジタル入力だ。ブラックスDSPと最高192kHzでデジタル伝送できるというもので、音楽信号がソースプレーヤーからDSP信号増幅まですべてデジタル処理される。ブラックスの真価はまだまだこれから発揮されるようだ。

ブラックス BRAX
Power Amplifier
RX2 PRO
¥770,000(税込)

SPECIFICATION
●定格出力:300W×2(4Ω)、510W×2(2Ω)、930W×1(4Ω)
●周波数特性:10Hz〜60kHz
●全高調波歪率:0.0002%以下
●SN比:126dB以上
●入力感度:1〜8V
●入力インピーダンス:4kΩ
●ダンピングファクター:10000以上
●動作電源電圧:9.0V〜18.0V(5秒間/6Vまでの短時間電源電圧低下に対応)
●アイドリング電流(13.8V):1.5A
●外形寸法:W310×H56×D200mm
●重量:4.0Kg

RX2 PROの入力端子部分。RCA端子の左にはLEDのステイタスインジケーターと、入力切替のスイッチが並ぶ。入力切替スイッチは押すたびにSTEREO→MONO A→MONO Bと切り替わる。入力回路のオペアンプにはバーブラウン製が搭載されている。

ボトムパネルを見ると、入力端子パネルの表示がプリントされている。デジタル入力端子への換装が可能で、同軸端子ならば最大129kHz、光(TOS)ならば最大96kHzのデジタル伝送が可能となる。