シルバーアワードを獲得したフランス、ブラムのSignature Multix Barrelスピーカー、その魅力とは。ここでは石田功氏と黛健司氏によるレビューを紹介する。

ブラムらしいヴォーカルの生々しさを活かしつつも全帯域が洗練された
マグネシウムTWのインパクトが強い音が気に入った

文=石田 功

 ブラムが誕生して10周年を記念して誕生したフラッグシップの3ウェイシステムが、このシグネチャー・マルチックス・バレル。ラインナップにはトゥイーターが3種あって、好みに応じて組み合わせを選ぶことができる。試聴時はエンクロージュアに収まっていたため、ウーファーやミッドレンジの外観は見られなかったが、コンパクトで革新的なフレームと10個のティアドロップ型ネオジウムを使ったマルチマグネットの磁気回路も特徴のようだ。

 その音はブラムならではのヴォーカルの生々しさを活かしつつも、低域から高域までより洗練された印象で、フラッグシップにふさわしい出来。おそらくミッドレンジが相当優秀なのだろう。低域も無駄に膨らむ感じがなくかっちりと音楽を下支えする印象だ。そしてトゥイーター 。音の好みに合わせて選べるのは音楽好きにとっては嬉しいことで、僕個人としてはマグネシウムの音がインパクトが強くもっとも気に入ったが、もっと優しい鳴り方が好みの人ならひょっとしたらソフトドームのほうが気にいるかもしれないし、落ち着いた音の中にもストリングス等の繊細で深い鳴り方が好みならAMTがお似合いかもしれない。いずれにしてもミッドレンジやウーファーがしっかりと土台を支えているからこそ、それぞれのトゥイーターの持ち味も生きてくる。好みの音を自分で選べる時代になったことは、音楽好きにとっては朗報といえよう。

10周年を迎えたブラムの最上級機らしく同社史上最高の完成度
AMTの蠱惑的なヴォーカルには魅了された

文=黛 健司

 本機は、ブラムの創業10周年記念モデルであると同時にフラッグシップ機でもあるからか、過去に聴いてきた同社製品の中でも最高の完成度に到達していると感じた。

 今回聴いたのは、165mmウーファーMB6Pと、80mmフルレンジMB3をミッドレンジとして使い、3種類のトゥイーター(28mmソフトドーム型のT28S、28mmハードドーム型マグネシウム振動板のT28MG、プリーツ形状振動板を採用したエア・モーション・トランスフォーマー型のAMT1)を組み合わせて3ウェイとしたシステムだ。T28S→T28MG→AMT1の順に聴いたが、価格に比例するように音質が向上していくのが面白かった。

 最初に聴いたT28Sソフトドームによる3ウェイは、良質な低音が印象に残った。とにかくクォリティが高いのだ。声の響きが自然で、艶やかさが際立つ印象。厚みが感じられる魅力的なサウンドが楽しめた。クラシックのヴァイオリン曲におけるニュアンスの再現が絶妙だ。トゥイーターをマグネシウム振動板のT28MGに替えると、声の響きがより自然に感じられ、艶やかさがいっそう引き立つ。T28Sに比べ、より潤いが感じられ、しなやかで、柔らかい音が印象的だった。音楽の表現力も、あきらかに向上している。

 AMT1にすると、高域ユニットを替えたのに、低域の変化が顕著で、よりしっかりした低音になった。蠱惑的なヴォーカルには魅了された。なんとも色っぽい音だ。ヴァイオリンのニュアンス再現は、3種類のトゥイーターの中では最も優秀だった。

ブラム BLAM
Speaker
Signature Multix Barrel
 MB6P ウーファー ¥242,000
 MB3 ミッドレンジ ¥165,000
 AMT1 エアモーショントゥイーター ¥198,000
 T28MG マグネシウムトゥイーター ¥145,200
 T28S ソフトドームトゥイーター ¥121,000
 (ペア/税込)

165mm径のMB6P。クロスカーボン振動板の中央にはフェイズプラグが装着されている。シリーズ製品にはフェイズプラグ部分がダストキャップ仕様のMB6Dもラインナップされる。

ウェーブ状のアルミ製フレームは、スピーカーが生み出す音の波を詩的かつ素朴に表現したデザインだという。音質はもちろん、従来モデルと比べてユニット装着部分に必要なスペースを少なくすることに成功している。また、モーター部の排熱が効率よくできるよう工夫されている。その下には、同心円上に配置された10個のティアドロップ型ネオジウムマグネットを確認することができる。

ミッドレンジで使用したMB3ユニットも10個のティアドロップネオジウムマグネットを採用したマルチマグネットを搭載。フレーム形状のウェーブデザインもウーファーと共通の仕様である。