グランプリを獲得したマイクロプレシジョンのパワーアンプ5-SERIES STEREO Amplifier、その魅力とは。ここでは選考委員から石田功氏と藤原陽祐氏のレビューを紹介する。

質実剛健という表現がぴったりくる音
音源をひたすら忠実にありのままに再生する

文=石田 功

 マイクロプレシジョンはドイツのメーカーだけにモデルナンバーもドイツを感じさせる。本製品は5シリーズ。クルマ好きならご存知の通り、完全にBMWを意識したものだろう。BMW5シリーズといえば、7シリーズに次ぐ上位から2番目のグレード(7シリーズ・ベースのクーペ、8シリーズもあったりするが)だから、高級機の部類に入ることは想像しやすい。

 そのイメージ通り、マイクロプレシジョン5シリーズの音は、実に質実剛健という表現がぴったりくる。まさに音源に忠実といった印象。変な色付けは一切なく、音源をひたすら忠実にありのままに再生する。この辺りは、入力レベルの調整にボリュウムを使わず、ディップスイッチの切り替えによって選ぶなど、極力、音質劣化をなくすための設計をしているところにも起因しているのかもしれない。だから、元々あまり音のコンディションが良くない音源はその通りに再現するし、逆に良質な音源の場合は良さが際立って聴こえる。と言う意味では、ものすごく正直な音がするアンプで、聴く音源を選ぶ傾向があるような感じだ。

 今回は珍しく、ハイレゾ音源だけではなくmp3の圧縮音源も取り混ぜていろいろ試聴してみたのだが、驚いたのは、たまたま持っていたダリズ・カーのmp3音源を聴いた時。ミック・カーのベースがあまりにも深く、独特のベースラインが響いてきて思わず涙しそうになった。圧縮音源でも聴きごたえたっぷりに聴けることも確認できたことは、発見である。

楽器の響きの細やかな質感、声の息づかい、ニュアンスの生々しさは格別
生成りのサウンドが心地よく感じられる

文=藤原陽祐

 ドイツのハイエンドブランド、マイクロプレシジョンが手がけた高級ステレオアンプ。写真からもお分かりのように、外観は上位モデルのモノーラル機、7-Seriesの筐体をそのまま生かしつつ、ステレオ化したモデルで、内容的にも7-Seriesで培った技術、ノウハウを積極的に取り入れているという。

 実際、電源回路と増幅回路の基板を分離させたデュアルボードデザインは7-Seriesから受け継いだもの。信号経路を極力、短縮し、同時に対称とすることで磁束漏れやノイズの影響を軽減するというアイデアもそのまま踏襲している。

 また、入力感度調整には一般的な可変抵抗器ボリュウムではなく、金属抵抗分割器を備えたDIPスイッチセレクターを採用。信号経路に音質を劣化させる可能性のあるものは配置しない設計。そこには音質最優先の明確なポリシーを垣間見ることができる。

 派手さこそないが、奇をてらうことのない正攻法の音づくりだ。聴き始めは低域はもう少しゆったりと楽しみたいと感じたが、楽器の響きの細やかな質感、声の息づかい、ニュアンスの生々しさは格別。時間の経過とともに、低音に対する不満は薄れ、あるがままに聴かせるという、生成りのサウンドが心地よく感じられるようになった。

 過度な演出をしないため、総じてさっぱりとした調子に感じられるかもしれないが、これはいわばアーティストが意図する音。とにかく音のフォーカスは明確で、引き締まったベースが確実にピッチを刻んでいく。ここまで小気味よく、反応するアンプは貴重だ。

マイクロプレシジョン MICRO PRECISION
Power Amplifier
5-SERIES STEREO Amplifier
¥396,000(税込)

SPECIFICATION
●定格出力:85W×2(4Ω)
●入力感度:0.7V、1.4V、2.1V、4.2V(切換え式)
●周波数特性:10Hz~80kHz
●全高周波歪率:0.007%
●SN比:112dB
●入力インピーダンス:12kΩ
●動作電圧:9V~15.5V
●アイドリング電流:0.8A
●外形寸法:W100×H65×D340mm
●重量:2.46kg
●バナナプラグ2本付属