2022年のオートサウンドウェブグランプリでブロンズアワードを獲得したカロッツェリアのAVナビゲーション、サイバーナビシリーズ「912II」。インターネット環境の中で威力を発揮するブラウザ機能を搭載するほか、上質なオーディオ再生をめざした性能追求する同社上級シリーズ製品だ。マーク2モデルでの評価ながら獲得した上位賞、その決め手とは!? 選考メンバー全員参加の座談会を紹介する。[編集部]

オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から脇森宏氏、黛健司氏、長谷川圭氏、藤原陽祐氏、石田功氏。

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、藤原陽祐、黛健司、脇森宏、長谷川圭]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

ASW:ブロンズアワードとなりました、カロッツェリアの22年型サイバーナビについてお話をうかがってまいります。モデルナンバーが912IIと、マーク2化してリリースされていて、地図データを更新している以外は21年モデルの912と同じです。

藤原陽祐(以下、藤原):まったく一緒なんですよね?

石田 功(以下、石田):同じですね。地図が新しくなってます。

ASW:モデルナンバーが変わっていますので、2022年モデルとしてエントリーして評価していただいています。

長谷川 圭(以下、長谷川):去年と同じで安定のクォリティというか、評価としても同じなんですけれど、それでもブロンズ獲得というのは、これはこれで凄いなと思いました。

藤原:今年エントリーしているモデルの中で、一番HiFiだなと感じました。音の純度とか、透明感とかね。このAVナビが出す音が心地いいかどうかは別にして、スペック的には、AVナビの中では一つ抜けている感じはしました。

脇森 宏(以下、脇森):完成度が高いですよね。いつ、どのような環境で聴いていても、同じような印象の音で聴けるというのは、貴重な存在でしょう。

脇森 宏氏。

石田:サイバーナビを聴いて初めに感じたのが『あぁ、真面目だなぁ』というところ。

藤原:作為的なところを感じさせないですよね。

石田:そうなんです。

藤原:一生懸命真面目に造っただろうというのがよくわかる。

長谷川:なにか冒険をするというか、チャレンジングな鳴らし方ということはないですよね。奇をてらうようなところがない。

:安定しているという印象は、確かにありますね。だから誰にでも勧めやすい。使い勝手もいいし、音も極端な印象を与えるようなことはない。ただ、今年のナビやディスプレイオーディオの中においてはごくわずかに部分的に『このあたりはちょっと及ばなかったかも』というのはあった。でも製品トータルでは一番安定している印象ですね。

黛 健司氏。

藤原:……面白味は……ない。

一同:(笑)

長谷川:言い方(笑)

藤原:好きな人は好きだけど、そうじゃない人も確かにいるというのがわかりやすいという気はします。

石田:なるほど、藤原さん最高評価ではないですもんね、僕もですけど……僕はマーク2だから控えめな評価にしました。実際音はいいし、リファレンス的に使える安定感もあるから、評価としては高いんですけど、去年と同じというところで満点評価じゃなかった。

長谷川:私も石田さんに近いかな。どの製品を勧めますかと問われたら、万人受けというところではサイバーナビを推すと思います。おそらくですが、どんなスピーカーと組み合わせても、もっともそつのない音で聴けるんじゃないかなという想像もできました。

藤原:去年も大きく評価した部分だけれど、“つながるナビ”です。これはいい。通信スティックつきのDCモデルはもちろん、車載用WiFiと組み合わせて利用するのもありだし、楽しみの幅は一気に広がる。

藤原陽祐氏。

:通信できるのはいいですよね、地図データの更新もできるし。

石田:3年ほどは無料更新できますね。

藤原:さすがに永久に更新無料にはならないよね。

脇森:さすがにそれは(笑)

長谷川:パイオニアはつながるナビを積極的に推し進めましたが、もともと通信で地図情報を更新できるようにし始めたのもパイオニアでしたね。

石田:そうです。ただ、最初のころはデータのダウンロードに恐ろしく時間がかかって……(笑)

長谷川:かかりましたね(笑)。通信速度が今のように速くなかった。しかも走行中だと通信が途切れることも多いから余計に時間がかかる。

石田:通信で地図更新できるようになり始めたころの話ですが、静岡県の沼津市から都心へ移動したとき。目的地についたのに通信が終了してなくて、エンジンかけたまま更新作業が終わるのを待ったことありました(笑)。

石田 功氏。

:数年前まで、地図の更新は、DVD-ROMディスクを読み込ませたり、SDメモリーでデータを書き換えるのが一般的でした。それでも更新作業を完了するのにある程度の時間は必要でした。だから贅沢言っちゃいけないんです(笑)。

長谷川:いまでもありますけれど、地図データとして新しいところだけを書き換える差分更新というのもやり方として登場しましたよね。

石田:それでも、常に最新情報にしておこうと思うと、年に一度は全更新の作業が必要になりますね。つまり、膨大なデータなので、簡単には更新できないわけです。

:余分な話ですが、地図データの更新って古い製品になるとだんだんぞんざいになってくる気がしてるんです。

一同:笑

黛:どういうことかというと、都内を走っていたりすると気づかないんですが、地方に行くと細かい道などは更新されていないんです。地図表示も200mまでしか表示されないとか。そういう地図データのメーカーもあります。

石田:その点パナソニックは優秀ですよ、うちのあたり(秋田県北秋田市)まで詳細地図出ますから。

藤原:真面目ですね(笑)。

:サイバーナビって、音に関しても最先端を走ってきたと思うんですよね。イコライザーとタイムアライメントの自動調整を取り入れたりね。それが使い物にならなかったら話にならないんだけれど、ちゃんとした機能でした。そのほかにも先頭を切って走ってきたけれど、『さあ、次は何を見せてくれるのかな?』という期待は持ってますね。

 大きく変わりすぎて、“サイバーナビ”ではなくなるのかもしれないけれど、カロッツェリアが造ってくる物への期待は大きいですね。オーディオは次にどうなっていくのか、楽しみでしょうがないです。

長谷川:サイバーナビの機能には、高品質なオーディオソースユニットであろうという物がいくつもありますよね。昔からあるものとしては、黛さんがおっしゃったオートEQ&TAもそうですし、
単体のDSPのようなごく細かい調整はできないですけれど、機能としては持っているし、「スタンダードモード」と「ネットワークモード」の切り替えができるので、シンプルなシステムから、複雑なマルチアンプドライブシステムまで対応している。AVナビだから、ここまでの機能は必要ないといった割り切り方をしていないところなどは、オーディオメーカーをしての矜持を守り続けている気がしていて、カッコよさみたいなものを感じます。

長谷川 圭氏。

:オーディオ面での最先端をやってきてますよね。そして、やることはやり尽くしてきているんじゃないかなという気もしてるんです。周りが追い付いてきたということなのかもしれないですけれどね。

ASW:つながるナビとしてウェブを活用しようというところは他社に先んじていますね。これはひとつ、先進性を保っているようですね。サブスクリプション系に向けての提案みたいなものを盛り込んでくる可能性はありますね。

長谷川:個人的にはそこに期待をしてます。

藤原:カロッツェリア以外の製品で魅力的なものが出てきていて、今年のグランプリの結果からすると、ブロンズ獲得だけれど後塵を拝したわけですよね、でも、こう、パイオニアカロッツェリアというブランドは、オーディオメーカーの血統を色濃く感じますよね。作り手であるメーカーのスタッフと会ってもそれは感じるところです。ベテランのエンジニアが辞めていても、ちゃんと受け継がれているものがあります。

石田:そうですね。

藤原:どこのメーカーでもそうですが、若い人が育って世代が交代してきています。そういうなかで、パイオニアはオーディオメーカーらしさをはっきり感じますね。

長谷川:サイバーナビのフルモデルチェンジはまだまだ先ですけれど、先駆者的な何かを打ち出してくれたらうれしいですね。

ASW:未来への期待はさておき、カロッツェリアのサイバーナビは色付けのない王道HiFiモデルといったところでしょうか。同ブランドには根強いファンも多いですし、半導体不足にともなう生産数の減少で、昨年モデルが買えなかったドライバーは手に入れる好機かもしれないですね。

みなさん、ありがとうございました。