静謐さを感じさせる鳴り方で、とても車載用思えない上質なサウンド
これほど麗しい音はなかなか出会えるものではない
文=長谷川 圭
ステレオ再生するのにもう少しで500万円である。クルマへのインストール費用を考えたら、オーバー500万円はいとも簡単に達成できるはずだ。相当に立派なクルマが買えてしまうパワーアンプなど、どうして必要なのか? というのが一般的な意見と思われるが、そこはこの音を聴けば『アリかもしれない』と……いや、アリだからこそ本グランプリに推した次第だ。
類稀な静謐さを感じさせる鳴り方で、とても車載用パワーアンプとは思えない上質なサウンドだ。そしてなによりもこれだけの価格であるから、音の面で重箱の隅をつつくような聴き方をしても突っ込みどころは皆無であらねば評価のしようがない。さらにはこのモデルだからこそと思わせる聴き応えも望まれる。そして、そのことごとくを備えているのだから驚くほかはない。
あからさまにドヤ顔をしているような大げさな表現はない。特長的な音楽性を感じることもないし、どこまでも緻密な分析型というわけでもない。しかし、そこにはすべてがあるし、スピーカーから放たれる音のひとつひとつがくっきりと描かれているように聴ける。静かに聴きながら思ったのは、まろやかさやしなやかさが心地よいということだった。これまでに素晴らしいパワーアンプはいくつも聴いてきたが、これほど麗しい音はなかなか出会えるものではない。まさしく本機だからこそ奏でられる音である。
このパフォーマンスに見合うスピーカーもまた稀であろうが、組み合わされた暁には至極のドライビングプレジャーが得られるのではないだろうか。
豊富な情報量をベースに、高度な描写力で音楽の魅力を存分に味わわせてくれる
品格の高さが印象に残る音である
文=脇森 宏
オーディオウェーブは、アフリカ・ジンバブエ出身のグラント・ヘイナン氏が英国で創設した気鋭のブランド。2007年の設立以来、一貫してパワーアンプを手掛け、そのすべての製品が受注生産というハイエンドモデル群で構成されている。
このたび聴いたCR-201X JDP G-withAW Op Amp-は同ブランドの最高峰モノーラルアンプ。先に登場しているCR-201 JDP Gをベースに、電源部とオーディオ回路の間にキャパシター基板を追加搭載、総容量75,200μFを擁する強力な電源供給能力を後ろ盾に、定格300W(4Ω)のパワーを獲得している。回路素子は音に定評のある名だたるパーツを厳選採用、63本もの放熱ロッドが立ち並ぶCopper Rodsをはじめシャーシ、ターミナル、金メッキ基板等々、あらゆる部材が職人の手によるハンドメイド。製作にはじつに7週間を要するという。
ステレオ使用で邦価およそ500万円の超高級機。そのサウンド水準が至高のレベルにあることはいうまでもない。豊富な情報量をベースに人声、楽器を問わず高度な描写力によって音楽の魅力を存分に味わわせてくれる。詳細にして正確、精緻。ダイナミックな表現もするけれど、常に控え目で端正。品格の高さが印象に残る音である。仄かな音の色香も伝わってくる。余計なものが微塵もない整い切った音が耳を潤した後に体内にじわりと浸透、聴き進む内に音楽を聴く喜びが実感できる。同ブランドの主宰者ヘイナン氏は、こういう音を聴きたかったのかと理解した次第である。
500万円は確かに高額だ。しかし安価で似たような製品ばかりのコモディティ化蔓延の現状にあって、本機の存在は貴重。どこまでも志を貫くその覚悟やよし。現代カーオーディオに彩りと夢を与えてくれるオーディオウェーブの今後をしっかり見守りたいと思う。
オーディオウェーブ AUDIO WAVE
Power Amplifier
CR-201X JDP G -with AW Op Amp-
¥2,464,000(1台/税込[受注生産品])
SPECIFICATION
●AB級モノーラルパワーアンプ
●定格出力:160Wx1(8Ω)、300Wx1(4Ω)、400Wx1(2Ω)
●SN比:120dB(Direct)、105dB(Op Amp)
●入力感度:300mV~8V
●入力インピーダンス:33kΩ
●周波数特性:9.5Hz~120kHz
●位相切替:0度/180度
●LEDモニター標準装備(1個)
●セカンダリキャパシタ容量:75200μF
●動作電圧:9V~16V
●アイドリング電流:±2.5A
●寸法:W558×H72×D270mm
●重量:12.3kg