明快な解像力と肌合いのよさを巧く両立させたチューニングで
随所で作り手のセンスの良さが感じさせる

文=藤原陽祐

 創立45周年を迎えたモレル社から登場した話題のモデルだ。あくまでもハイファイ再生にこだわりつつ、ハイパワーハンドリングも苦にしないという伝統を引き継ぎながら、スピーカーシステムとしての本質に磨きをかけている。

 PROシリーズは、Elate Altoキャビティバックツイータートゥイーターが特徴的だが、これは新開発のカーボンファイバーと、ロハセルコーンのミッドレンジ、ウーファーとの組み合わせを想定したもの。具体的にはSupremo Piccoloからの技術を受け継ぎ、開発されたユニットで、大音量でも歪むことなく、その潜在能力を最大限にアピールする。

 まずザプコの6ch機Z-150.6APとの組み合わせで、ジャズトリオ、女性ヴォーカルと聴いたが、本格派3ウェイシステムならでは吹き上がりの良さと、スムーズな空間の拡がりが特徴的だ。単純に明るく、開放的に聴かせるというタイプではなさそうだが、女性ヴォーカルは適度な湿りけを伴った落つきのある質感で、ニュアンスも豊か。明快な解像力と肌合いのよさを巧く両立させたチューニングで、随所で作り手のセンスの良さが感じさせる。

 モレルならではのクォリティ感だが、ダモーレエンジニアリングのパワーアンプ、A1500.2との組み合わせでは、また別の世界が拡がる。とにかく音そのものに勢いがあり、大音量、小音量に関わらず、音像が明確で、フォーカスがぶれない。

 高級機でも音量を思い切って上げていくと、高音が歪み、低音が窮屈に聴こえるケースが少なくないが、このモデルにはそうした癖っぽさは皆無。全帯域にわたって気持ちよく音が吹き上がり、リズム感が崩れない。この安定感、落つきは見事だ。

モレルファンならずとも耳の奥に染みこんでくる音には
おもわず聴き惚れてしまうだろう

文=長谷川 圭

 モレルが久々に送り出してきた新型スピーカーがイレイト・カーボン。最上級モデルのスプリーモに次ぐ上級グレードのモデルだが、このイレイト・カーボンはこれまでのイレイトシリーズとは気配が違う。ウーファーとミッドレンジにはスプリーモかとみまごうようなカーボン振動板が与えられたのだ。トゥイーターは同社伝統ともいえる28mmシルクドームである。グランプリを獲得したイレイト・カーボン・プロは、トゥイーターにバックキャビティを備えたユニットALTO(アルト)を組み合わせたもので、62Aが2ウェイ、63Aが3ウェイの構成で、どちらもマルチアンプドライブ用システムとなる。

 まず、62Aをクロスポイント2.5kHzで鳴らしてみると、しなやかで芯のつよい高音と、かっちりとした中低音が上手く調和して聴けた。張りのある高音は、スプリーモPiccolo(ピッコロ)に通じるものがある。モレルファンならずとも耳の奥に染みこんでくるような感覚の音はおもわず聴き惚れてしまうだろう。クロスポイントを下げると、アルトの威力は増してくる。実際に安全に使用できる帯域としては1.8kHzあたりまでかもしれないが、つい挑みたくなってくる音だ。

 63Aでは推奨されていた3.3kHzと450Hzにクロスを設定、一般的なミッドレンジよりも広帯域で鳴らした。このミッドレンジが実にバランス良く鳴ってくれるのだが、2ウェイで聴けたトゥイーターの魅力は影を潜めてしまう。試しに、ミッドレンジを全帯域で鳴らし、トゥイーターを2kHz以上、ウーファーを600Hz以下で鳴らして高低に添える設定とした。すると瑞々しく躍動感に富んだサウンドが出現。3ウェイらしい充実した情報量と、それをつぶさに伝える解像力をもって音楽を描き出してくれた。

モレル Morel
Speaker
ELATE CARBON PRO 63A/ELATE CARBON PRO 62A
¥500,000/¥350,000 (税別)

SPECIFICATION
ELATE CARBON PRO 63A
●型式:アクティブタイプセパレート型3ウェイ
●使用ユニット:ウーファー・165mmコーン型、ミッドレンジ・89mmコーン型、トゥイーター・28mmドーム型
●定格入力:180
●最大入力:1,000
●出力音圧レベル:87dB
●再生周波数帯域:30Hz〜25kHz
ELATE CARBON PRO 62A
●型式:アクティブタイプセパレート型2ウェイ
●使用ユニット:ウーファー・165mmコーン型、トゥイーター・28mmドーム型
●定格入力:180
●最大入力:1,000
●出力音圧レベル:87dB
●再生周波数帯域:30Hz〜25kHz

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